第九話 散 歩
松子ばあちゃんも
「ちったあ外へ出してやりんさいや」と言うし、私も狭い家の中だけでは可哀想だから、屋外を散歩させてやれないかと想ったが、いきなり外へ出して、逃げて迷子になったらいけないので。どうしたものかと、猫を飼っている友達に聞いて見ると
「ハーネスを着けて散歩している」と言うので
「犬でもないのに大丈夫かいな?」と思ったが
島内にあるホームセンターで探して見ると、猫用のハーネスを売っていたので、買って帰った。
休日に散歩させて見る事にした。
ハーネスを着けるのを嫌がったが、何とか着けて抱っこして外に出た。
地べたに降ろすと、初めて太陽のあたる明るい世界へ出したからか、おびえて地面にヘバリ付いて、全然歩こうとしない。ハーネスを嫌がってリードを噛んで外そうとした。
考えてみれば、友達の猫は8歳くらいで、月曜~金曜日は会社の会食場や屋外を、自由に出入りしており、土日に家に連れて帰って、家の周りをハーネスを着けて散歩させる為、外に慣れているから良いのだろう。
諦めて、暫くは家の中だけで飼っていた。
少し大きくなった頃、私達が玄関から出入りする時、入り口で度々出たそうな素振りを見せる様になった。
私の家は車が通る道路と30メートルしか離れていない為、不安があるし、時々家の周りで野良猫や、飼い猫の外猫を2~3匹見かけるので、ケンカしないか、逃げて迷子にならないかと心配だったが、出して私が後から付いて行って見る事にした。
夕方少し薄暗くなって、玄関のドアを開けてやると、外に出てその辺りを嗅ぐようにしていたが、我が家に隣接する母親の家と、その隣の家の間の、細い路地裏を通り、母親の家の周りをぐるりと一周して、玄関の前まで帰ってきたので、開けてやると家の中へ入った。
次の日も、もう一回試してみたら、同じコースを通ってちゃんと帰って来たので
「これなら大丈夫かな」と思い、翌日から毎日出してやることにした。
しばらく夕方だけ出していたが、朝も出してくれとせがむので、朝夕2回出すようになった。一回に30分くらいしたら帰って来て、玄関の前で待っていた。
松子ばあちゃんも、毎朝散歩に出ており、ロンが玄関の前で待っているのを見つけて
「待っちょるんか、ほれほれ入りんさい」とドアを開けて入れてくれた。そして私に
「わしに入れてもらおう思うて、待ちょるんじゃけん」と嬉しそうに言った。
入れてやるのを、楽しみにしているようだった。




