本の紹介32『らせん』鈴木光司/著
呪いのビデオがもたらす死の真相に迫る、戦慄の「回答編」
時系列としては前作「リング」の結末直後からスタートする、地続きの続編です。前作が呪いのビデオテープによりもたらされる恐怖とそれに翻弄される人々の顛末を描いた出題編だとすると、本作はなぜビデオテープを観た人々が不審な死を遂げるのかというメカニズムを解き明かす回答編という位置付けと言って良いでしょう。
主人公は安藤という監察医で、安藤が前作で不審死を遂げた、とある人物の死体の解剖を行ったことで呪いのビデオテープを巡る騒動に巻き込まれていくストーリーです。
安藤は「リング」の登場人物の一人である高山竜司とは友人関係にあり、幼い息子を海で亡くした過去を背負っています。最愛の息子を失いどこか生きる気力が薄い安藤とは対照的に、呪いのビデオテープの裏にはおぞましいほど生に執着する意思が存在します。安藤がその意思に翻弄されながら、人類にとって大きな意味を持つ決断を迫られるのが本作のハイライトとなっています。
物語の終盤で安藤はある人物と海辺で邂逅し語り合うことになるのですが、それは本作がホラーというジャンルの枠組みを超えた物語へと広がっていく印象的なシーンとなっています。本作「らせん」も映画化されており、前作「リング」と同時上映されていたようです。合わせて4時間くらいになるのではないでしょうか。鑑賞料金がいくらだったのか気になりますが、1本分の金額だったら気前の良い話です。映画は概ね原作の内容に沿ったものとなっており、終盤の海辺のシーンはかなり良いものに仕上がっていると感じます。映画版に限った話ですが、前作「リング」の登場人物が辿った結末をかなりサラッと描写していて、思わず変な笑いが出てしまった記憶があります。ギャラの問題で詳細に描写できなかったのかもしれません。
前作と本作の大きな違いは、主人公が監察医つまり医師であることを活かし、前作では民俗学やオカルト的側面が強調されていた呪いのビデオテープに対して、科学的な側面から迫っている点にあります。
なぜビデオの映像を観た人間が死んでしまうのか、その死因は何か、ビデオを観ることで体にどんな異常が起きていたのか、という疑問を次々と科学的に解き明かしていく描写は前作以上にミステリーの空気を感じさせます。前作の描写もしっかりと活かされており、まとめて一つの作品として捉えるのが正解だと感じます。
本作で語られる呪いの正体について、土台にあるのは確かにオカルト的な要素であり、言って仕舞えば空想みたいなものなのですが、それを装飾するディテールは非常に緻密でリアリティのあるものとなっています。このやり方なら現実に呪いが成立するのでは、と思わず納得させられそうな作り込み具合なのです。
フィクション、嘘の話だからと言って、開き直ったようにめちゃくちゃな設定や出鱈目なストーリーが展開されると受け手としても物語への没入は難しくなるものです。嘘であればこそ、それを本物と思わせるような工夫が大切なのだと思います。
呪いの正体については是非ともご自身の目で確かめて欲しいのですが、もしも「らせん」まで読んだのなら、完結編である「ループ」まで手を伸ばすことをオススメします。「リング」と「らせん」で完成した、まさに一つの輪を総括する壮大な物語が待ち構えているのです。終わり




