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ぎりっぎり間に合ったー!!!
あれからというもの天根美羽のごろうさんは進化していった。
少しづつだが確実に歩みを進め、ダークマターの面影はいまはもうない。
狼秋と帝もあの日から真剣に取り組むようになり、マネージャーと化している。
そして俺はというと
「お兄さん、おかしいと思いませんか?」
「そうですよ!冴ちゃんが可哀そうです!!」
「お、俺に言われてもな、、、」
つい少し前に狼秋の彼女となった千堂冴とフィーネが昼休みに秋兎のもとを訪れていた。
勘弁してほしいものである。
おかげでクラスメイトの視線がこっちに全て向いているのだ。
「あのゴミ、美少女に話しかけられやがって、、、」
「調子こいてんじゃねぇよ、、」
「帰り道、ヤッちゃう?ヤッちゃう??」
いや不穏な言葉めっちゃ聞こえてくるなおい!?
完全な八つ当たりだし、俺被害者だろ!?!?
「ちょ、琥珀ー!琥珀はやくー!!妹さん待ってるぞー!!!」
千堂冴は琥珀の妹、つまり妹がお兄さんを呼びに来た感じにすればいいのだ!!!
「家族での付き合い、、、ギルティ」
「お兄さん公認、、、死すべし!」
「ヤッちゃう?ヤッちゃう??」
いやさらに状況が悪くなった!?
てか一人サイコパスみたいなやついんだろ!
こえーんだよ、、、、。
「なんだ秋兎って、2人も何しに来てんだ?」
琥珀がやってくる。
ただいつもと違って少し、乗り気がない?
なんか渋い顔をしていたが、妹にはそんなの関係ないようでズバッと言い捨てる。
「兄貴には関係ない。用があるのは秋兎さんだけよ」
ドドドドドッ
クラスメイトの男子達が各々机に定規やカッター、ハサミ、ナイフを突き刺してこっちを見ている。
うん、これは俺でもわかる。
殺す気満々だね。
「琥珀さん、冴ちゃん可哀そうなんです!」
フィーネが琥珀に鼻息あらくしながら不満を訴える。
美少女がこれやると可愛いのずるいよな。
「お、おう、、、、なにが?」
琥珀が疑問をぶつける。
まぁ、いきなり来て妹が可哀そうとか言われてもわからんよな。
だが気づくべきだった。
俺に訪ねてきたこと、2人で来てること、不満げなこと。
琥珀はこの後に後悔した。
未然に防げなかったことを。
「彼女である冴ちゃんをほうっておいて何もしてないことにですよ!!」
「「「「「、、、、、、、、、?」」」」」
沈黙。
そして
「「「「「えええええええ!??!??!?!?」」」」」
大合唱の声が響き渡る。
やってしまった。
フィーネと冴は俺のクラスメイトの反応に驚愕し、俺と琥珀は同時に頭を抱える。
この2人はあまり自覚がないかもしれないが学校で最もモテているであろう狼秋が誰かと付き合うということは
それだけで大ニュースなのだ。
「あー、場所変えようぜ、、、」
「今さらな気もするけどな、、、」
俺と琥珀は速やかに場所を変えるため2人を連れて教室を出るのだった。
だが、一度流れた情報の拡散は早い。
明日には全校生徒が知っていることだろう
もう考えるのやーめよ!!
俺は思考を放棄した。
場所は変わり屋上前の階段。
屋上の鍵はしまっているためここが一番安全なのだ。
「で、狼秋と付き合えたのに進展なしってことか?」
「そうなんです!!せっかく付き合えたのに、デートとか、したいですし、、、」
少し顔を赤くしながら恥ずかしそうに言う千堂冴。
付き合いたてのカップルなのだ。
イチャイチャしたいのは当然である。
だから俺は一言言うことにした
「リア充死ね」
「はあ!?!!?」
「あ、わりわり。つい本音が」
幸せそうにしてるリア充はなんかムカつくんだよな(⌒∇⌒)
「真面目に聞いてますか????」
「はい、真面目に聞きます」
即座に襟を両手でつかまれヤンキーに絡まれたみたいな構図になる。
いやほんと怖いんだけど、、、。
「まあ、聞いたとは思うけど。今天根先輩の手伝いしてて時間がないんだろ」
「秋兎さんが手伝えばいいじゃないですか」
フィーネが不満そうに口を膨らませながら文句を言うが、考えても見てくれ。
「俺みたいな最底辺に教えてほしいと思うか?」
「あー、、、、」
うん、否定してほしかったけどまぁそういうことだよな。
誰だって教えてもらうならできる人間の方がいい。
「琥珀さんは、、、、絵とか描かないですもんね」
「ある意味適任はあいつらしかいないってことだよな」
あの2人も普段から描いているということではないがやろうと思えばやれるタイプの才能マンなのだ。
「でもー、、、」
説明しても不満そうな千堂冴。
だが今はどうしようもないのだ。
あの熱量は本物だったし、だからこそあの2人も真剣に手伝っているのだ。
「もう少し待っててやってくれ。なんなら家に来てもいいし」
てかここ最近ずっと家で練習してるから会おうと思えば会えるんだよな。
「なら今日行きますから!」
「あ、私も行きたい!」
冴とフィーネが家に来ることになったが、まぁ大丈夫だろう。
母さんもそういったことには寛容だし、問題はない。
あるとすれば、こいつだけ。
「で、さっきから苦虫をつぶしたみたいなツラしてる理由は何だよ?」
今日は朝からどこかおかしかった。
俺はこれを知っている。
昔からこういった扱いを受けていたからだ。
いまだにないとも言い難いこの感覚。
「お前、何を知った?」
拒絶。
関わりたくない、離れたい、そういった感情には敏感なのだ。
ただそれが琥珀から感じるのは理解できなかった。
俺は今日までそれなりに付き合ってきたつもりだ。
それがいきなり拒絶されるほどのことをした覚えはない。
だったら答えは1つだ。
俺の過去を知った。
ただそれだけだ。
「、、、、、、わりぃ」
ビンゴ、みたいだな。
俺の過去を知った奴は大体こういう反応になる。
しょうがないといえばしょうがない。
何も知らない千堂冴とフィーネは首をかしげる。
「、、、そか。ま、2人は来るなら来いよ。じゃな」
俺はそれだけ言うとそのままそこを去っていく。
これ以上いうことはない。
離れるならそれでいいし、確認したいなら答える。
ただそれだけだ。
、、、、、、あー、教室戻るのめんどくさいな!!!!
「あのー、馬鹿兄貴となんかあったんですか?」
帰り道、千堂冴が堪らず切り出した。
いやー、来るとは思ったけど答えたくないんだよなー。
あんま楽しい話でもないし。
「べつにー」
今じゃなくてもいい。
いつかは話すことになるとは思う。
ただ、今じゃない。
「そうですか、、、、」
これ以上聞けないと感じたのだろう。
そのまま引き下がった。
「でも、琥珀さんなんか、意地悪な感じがしました」
しかしフィーネさんは引き下がらない。
根っからの優しい子ということもあるのだろう。
対立していたりするこの状況がもどかしくてどうにかしたいというのが伝わってくる。
だが無理なのだ。
俺の過去。
俺が陰キャになった理由はそれほど複雑で、腐りきっている。
「ま、たまにはそんなこともあるだろ。だから気にすんな」
俺の言葉に納得はしてないが、飲み込んでくれたようで2人とも頷く。
それに今はそんなことを言っている場合ではない。
「あと、引き返すなら今だからな」
「なーに言ってるんですか!狼秋くんに会うんです!」
「私はなんとなくですけど、なんとなくです!!」
両こぶしを握り締めて力強さをアピールするがまぁ、後悔しないことを祈る。
俺は家のドアを開け、2人を招く。
「「お邪魔しまーす」」
そしてそのまま俺の部屋に向かい、部屋のドアを開けるとそこはーーーー
明日はもしかしたら無理かもです!
ただ1週間以内には必ず投稿します!