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新しいヒロインが登場した!!!
友達。
それはあやふやで言語化が難しい存在だ。
簡単に言えば同等の相手として交わっている人を指すらしい。
だが同等の相手というのもまた難しい話である。
例えをあげよう。
同じ学年同じクラス、同性で席も前後。
学校ではたまに話し、片方は友達だと思っていた。
実際には友達ではなくいじめ相手として見られており、プールの授業終了後に着衣室で着替えていると
『あいつ気に食わないんだよね。みんなでいじめね?』などと提案されていた。
普通に怖かった。
俺は別に嫌がらせや暴力はもちろん行っていない。
にもかかわらず俺をいじめる計画を立てていたのだ。
のちに関りがあったため聞いたのだが、理由はただ気に食わなかっただけとのこと。
深い理由はない。
つまりだ、同等の相手などどちらかの認識一つで破綻する価値観であり、無価値なのだ。
だから俺はぼっちであり続けてきた。
だからこそ見極める力もついた。
こいつらが俺にとって大事な
「あ、秋兎ー。このポテトもらうねー」
「秋兎、コーラの注文頼む」
「あ、ならこ俺もソーダ頼むわ」
「私はカルピス」
「わたしはメロンソーダ!!」
「僕はジンジャエールー」
あ、違った。
こいつら全然敵だわ。
友達?なにそれ美味しいの?
今すぐ滅んでくれ。
俺は孤高の存在、ロンリーウルフな男。
「あ、すみません、注文良いですか?」
だが今はあえてお前らの望みをかなえてやろう。
俺は懐が広いからな。
「ほらよ、注文しといたからな」
「くるしゅうないぞー」
「お前ぶっ飛ばすぞ、、、!」
俺の堪忍袋ももう限界だ。
このボケぶっ飛ばしてやる!!
「すまない、少し良いだろうか?」
あん?誰だ俺の喧嘩を邪魔する奴は!?
俺は勢いよく声の主に振り返りそして、空気になった。
そこにいたのは我が学校のTOP3美少女の一人、天根美羽だった。
彼女は一人で俺達の前に堂々と声をかけてきたのだ。
いやこわ!?その胆力はどこからきてんだ!?
「えっとー、天根先輩、ですよね?」
冴が恐る恐る伺うと彼女は首を縦に振る。
「私のことを知っているとは驚きだな。君はまだ1年生だろうに」
「い、いえ、学校でTOP3に入る美少女の一人って知ってて」
「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ」
実際にかなりの美人さんだ。
キリッとした目つきに腰まで伸ばした黒髪、モデルのような身長にスラッとした足。
大和撫子と言われても納得できる。
天根美羽の笑顔に同性である冴でさえ赤面するくらいだ。
女性でもイケメン力がある、かっこいい系美少女だった。
「それより、少し話してもいいかな?」
そんな彼女がご指名するのは言わずもがなというか、噂からも当然というか
「、、、、先輩、あの話はまた今度にしましょうと言いましたよね?」
「君は面倒くさいと思ったプライベートは後にすると知ったからね。早く解答をもらおうか」
狼秋はこんな人にもモテているのか。
我が弟ながら恐ろしい、、、。
帰ったら足ひっかけてやろ。
「天根先輩、ここで話すことでは」
「いいや!いい加減私も待つのに疲れた!そろそろ返事をしてくれてもいいだろう!?」
まさかこれは、告白の流れ、だと、、!?
公衆の面前で告白って正直嫌だけど、女性からするパターンは初めてだ!
どうしよう、野次馬根性でわくわくが止まらない!!
「あの、先輩一回落ち着いて話を」
「早くちよかわのごろうさんの描き方を教えてくれ!!!!」
「「「「「、、、、、、?」」」」」
狼秋の静止を振り切り、学校でTOP3と言われる天根美羽から出た言葉は告白、ではなく子供向けアニメちよかわ
のことだった。
ああ、わかってる。
俺も思考が追い付いてないんだ。
聞き間違い、ではない。
確実にちよかわの、あれ、ごろうさん?の描き方を教えてくれと言っていた。
もう一度言わせてくれ。
思考が、追いつかない。
「あの、せんぱ」
「君を生徒会長に推薦したのは私だ。学力、運動能力、リーダーシップ、どれも素晴らしいものを持っているからな。
はじめはそれだけだった。だが、君が生徒会のメンバーと交流を深めているときちよかわの話をしているのがわかったためひっそりと覗いていたらそこには、完璧なごろうさんがいた。だからこそあの日から君にお願いしているのだ!!」
力強い解説に誰もついていけてない。
唯一狼秋だけが深いため息を吐いている。
「なのに君ときたら適当に描いただけだの、たまたまだのと言い訳をして逃げ続けている!!いい加減
いいじゃないか!私にごろうさんの描き方を教えてくれたっていいじゃないか!!!!」
う、うわー。
クール系ってイメージ完全に崩れてるー。
まぁ素なんだろうけど。
とりあえず、理解した。
この人見た目にそぐわずめっちゃ可愛い物好きだ。
だから狼秋は止めたんだろうな。
「さぁ!さぁ!さああああ!!!!」
「はああああああああ、、」
ここまで長い狼秋のため息を聞いたのは久しぶりだ。
自分で言うのもなんだが俺はかなりの頻度で狼秋に呆れさせてしまうことがあるのでわかるのだ。
天根美羽、彼女は俺とは別ベクトルの残念な人間なのだと!!!
「わかりました、明日から教えます」
「ほ、本当か!?」
「ええ、勿論です」
満面の笑みで頷く狼秋。
だが俺は知っている。
狼秋という人間はキャパを超えるとこうやって満面の笑みを浮かべる癖があるのだ。
そしてそういう時、必ず自分だけ不利益を被ることを極端に嫌う。
まぁつまるところ、野次馬がいたら野次馬のままにさせず、道連れにするのだ。
俺は一瞬で目を逸らし、帝に視線をやる。
「ぷ、ぷふ、、、、!」
あ、やったなこいつ。
狼秋の視線も俺から逸れて帝に向き、笑った。
帝も遅れて気づいたがもう遅い。
「ぼ、僕トイレに」
「ちなみに帝は俺の数倍ごろうさんを上手く描けますよ」
ぐりんっ、とまるでホラーのように首が一瞬で曲がり、視線が帝に向けられる。
「ひっ」
フィーネさんと冴さんが思わず悲鳴をあげる。
いや怖いよ普通に。
眼が逝っちゃってるもん。
「帝くん、君のことは知っていたよ」
「そ、ソデスカー」
「ああ、なんせ元彼女だからね」
「「「え、えええええ!?」」」
フィーネ、冴、琥珀の三人が驚愕の悲鳴をあげる。
そう、実は西園寺帝は以前、天根美羽とお付き合いしていたのだ。
ただしこのことを知っているのは俺、狼秋、あとは生徒会の数人だけだ。
なぜかというと付き合って1週間で帝が複数の女の子と付き合っていたという事実を知った
天根美羽にぼこぼこにされて別れたためだ。
子供の恋愛とはいえ天根美羽は風紀委員長。
そんな人が暴力行為を行ったと知られないために全員が口を噤んだのだ。
まぁ帝の自業自得ではあるが。
「そ、そんなことも、あったねー」
「だが寛大な私に感謝するといい!!」
「あ、話聞いてないねー、、、」
もはや自分の世界に入ったオタクを止めるすべはない。
ソースは俺。
「私にちよかわのごろうさんを完璧にかけるよう伝授してくれればこれまでのことを水に流そう!」
ちなみに話しながら帝の襟首をつかみまるでカツアゲしているように見えるが恐らく幻覚だろう。
風紀委員長がそんなことするはずがない見間違いだきっとそうだ!!!
「異論はないな、帝くん?」
「な、ナイデスー、、、、」
お願い、もとい脅迫された帝はやけくそ気味に了承の返事をする。
全員の戸惑いをよそにただ一人、天根美羽は思いっきりガッツポーズをするのだった。
明日も投稿するぞーい(/・ω・)/