第99話 太平洋とサバの味噌煮
艦橋に入ると、シオリとミズキが居た。
「ユーさん、どうしたのー? 何か問題発生ー?」
「いや、問題じゃないよ。これからの予定が決まったんで、皆に知らせたかったんだ。たぶん、皆にとって、ちょっと良い話だしね。」
「えー? 良い話ー? なになにー?」
「新しい作戦は『キタキツネ釧路』。キタキツネ艦隊が2日後に青森港を出航して、釧路港を奪還する作戦だ。武蔵はもちろん上陸支援なので、いまから約2日半後に
釧路港へ行く。問題はここからで、それまでの2日半をどうするか、なんだけど。」
「あー、もしかして函館で上陸休暇ー? 活きイカ来たー?」
「いや、函館には上陸しないんだ。」
「えー。じゃ、良い話しじゃないしー。」
「武蔵は、伊豆鳥島の専用ドッグへ戻る。そして1日だけだけど、クルーは東京へ上陸だ。」
「うわー、東京へ帰るのー。それは良い話だよー。」
「それは良いな、アタシ、ギターの弦とピック買いたかったんだ。」
「それで、いつ出発するのー?」
「今、イッヌの荷揚げをしてるんだけど、それが終わり次第出航する予定なんだ。ちょうど昼の時間なんだけど、出航させてから昼飯食べることでも良いかな? 少しでも早く出航させたいと思ってさ。」
「そういうことなら全然良いよー。早く出航すれば、その分東京に居られる時間が伸びるってことだもんねー。」
「あぁ、アタシもそれで良いよ。」
「それじゃ早速だけど、出航準備を始めちゃおうか。
「了解! 核融合炉、1番、2番共に定格出力中、異常なし、ウォータージェットシステム正常。」
「航行システム、戦闘システム、防衛システム、オールグリーン。統合管制AIとの接続を確認。武蔵、発進準備完了ですっ。」
レイナとミズキが出航プロトコルを進めた。
よし、あとはイッヌの荷揚げが終わったところで出航だな。
シオリが艦橋へ入ってきた。
「艦隊への追加用イッヌV2も準備が終わりました。今は荷揚げの順番を待ってます。あと5分位で全ての荷揚げが終わる予定です。」
「了解だ。それでは5分後に出航ってことだね。」
「ユーさん、今回はスピードが求められるので、試してみたいことがあるので私が操艦しても良いですか?」
「もちろん。試したいことって何?」
「はい、これはミズキ先輩の掃海をヒントにしたんですけど、武蔵の最大戦速、約60ノット加えて更に電磁推進装置を前方方向へ最大出力にして、そこへ艦底電磁バリアを艦首部分に展開することで艦首への海水の摩擦を減らしたら、計算上では約20%速度が上がるんです。」
「20%上がるってことは、72ノット位で爆走出来るってこと? それは凄すぎるね。いいじゃない、そういうのどんどんやろうよ。移動時間が減らせれば、それだけ東京での滞在時間が増えるしね。」
『最後の充電器の荷揚げが終わりました。』
ムサシのインフォメーションが流れる。
「終わったね、それでは、スロープ収納、カタパルト扉閉鎖。」
「了解、スロープ収納、カタパルト扉閉鎖。」
シオリが復唱する。
スロープが収納されて、カタパルト扉が閉まるところがモニターに映し出される。
「よし、行こうか。武蔵発進、微速前進。」
「了解、機関出力10%、武蔵、微速前進。」
シオリの指示で艦がゆっくりを動き始める。
「武蔵、速度15ノット、津軽海峡を最短で太平洋へ抜けるコースで前進。」
「15ノット了解。」
続けてシオリが指示を出すと、ゆっくりと武蔵が港内から津軽海峡へ入っていった。
「さて、出航させたんで、お昼にしようかな。オレと操艦中のシオリは艦橋で食べるけど、みんなはどうする?」
「アタシも艦橋に居るよ。」
「わたしも太平洋へ出るまで見てたいよー。じゃ、呼ぶねー。」
ミズキは配膳ロボ担当みたいになってきてるな。
「超特急東京行き、最初の食事はこれだー。Aランチ、ビーフシチューとズッキーニサラダセット、Bランチ、さば味噌煮、イカシューマイセット、Cランチ、酢豚、半ラーメン、餃子セットだよー。」
「オレ、さば味噌煮お願い。」
「いつも優柔不断がユーさんが速攻選ぶんだ、じゃ、アタシもそれにしようっと。」
「いつも優柔不断ってのは余計だけど、オレ、サバの味噌煮好きなんだよ。ご飯にピッタリでうまいぞ。」
「それじゃ、私もBランチにします。」
「あら、みんなBランチ?でも、わたしはビーフシチュー食べるよー。はい、Aランチ1つとBランチ3つ、と。」
ミズキが配膳ロボのタッチパネルで注文する。
直ぐに配膳ロボがランチを持って戻ってきた。
ランチボックスの蓋をパカッと開けると、サバと味噌が奏でる濃厚な香りと艶々に輝くサバがねっとりした味噌を纏った姿。もうこの段階でこれは美味いこと確定だよ。
早速頂きましょうか、パクっとな。
うん、口腔に広がるさば味噌の香り。噛むと脂と旨味がじゅっと滲み出てくるサバ。もうご飯が止まらない。これは芸術品だよね。そしてこのイカシューマイはイカの街函館との別れをイメージしてるんだろうね。イカシューマイを噛み締めながら、さようなら函館。




