第94話 キタキツネ函館、終了
「コンディションイエローへ移行、機関停止。」
「艦内コンディションイエローへ移行、武蔵機関停止。」
シオリが艦を止める。
「ふぅ、無事に上陸が完了したねー。あとは、この上陸部隊が苫小牧、札幌、小樽ラインからの部隊と挟み撃ちで道南を奪還するんだよね?」
「そうだな。後は地上部隊に頑張ってもらうしかないな。」
窓の外はすっかり朝になって、明るい光が差し込んできている。
艦橋のドアが開いてジュンさんが入ってきた。
「みなさん、夜通しの作戦、お疲れ様でした。温かい甘いものでもどうですか?今日はお汁粉を持ってきましたよ。」
「わー、ジュンさんの差し入れー。お汁粉、温かくて甘くて美味しいよねー。」
「ちょっと疲れてたから、こういう時にお汁粉はぴったりだな、流石ジュンさん。」
レイナの場合は疲れた、と言うか、イラついてた、だけどな・・。
オレは普段、お汁粉を好んで食べることは無いんだけど、レイナの言う通り、こういう疲れた時に食べると激美味なんだな。温かい汁が身体の芯まで届くような、ホッとする感覚になるんだね。
お汁粉を食べ終わった所で、レイナとミズキの休憩順番決めじゃんけん大会が始まった。
「いくよー! 最初はグー。じゃんけんぽいー!」
「ポイ!」
「よっしゃぁ!」
「うひゃー、負けたぁー。」
「じゃ、ミズキ、よろしくな。」
レイナがガッツポーズで艦橋を出て行った。
「私は工房へ戻ります。イッヌV2で破損した機体が出てきているので、交代の準備をしますので。」
「そうだよね、イッヌも定期的に交代させないと破損や故障する機体もあるよね。準備、よろしく頼むよ。」
シオリも出ていって、艦橋に残ったのはオレとミズキだけになった。
「函館って、やっぱり大きな街なんだねー。」
ミズキが窓から双眼鏡で外を見ている。
「そうだね、小樽に比べたら凄く大きいよね。でも苫小牧と比べたらどうなんだろうな? ちょっと調べてみよっか。」
艦長席のコンソールで調べてみる。苫小牧、函館、港や街の比較、と。
「あ、港の規模は苫小牧の方が大きいけど、街の規模は函館の方が大きいんだってさ。函館は北海道の玄関口だったから街が発展してるんだって。あ、そうか、青函トンネルが出来る前は青函連絡船が青森と函館を結んでたんだもんね。」
「青函連絡船? 社会の授業で習った気がするー。そっかー、その船が着いたのがここなんだー、へぇー。なんかそう言われると旅情溢れる街並みに見えてくるよ-。」
「旅情溢れる街並み? ミズキは詩人だねぇ。」
「えへへ。でも本当は旅情より活イカが食べたいんだけどねー。」
「なんだよ、せっかく良い話しだったのに、花より団子になっちゃったじゃないか、ま、でもオレも活イカ食べたいの方に賛成するけどね。アハハハ。」
「でしょー。食べ物は正義だからねー。」
食べ物雑談が続いているところへレイナが入ってきた。
「交代だよ。」
「いぇい、交代だよー。」
ミズキが艦橋を出ようとしたところで無線が入った。
『こちらたつなみ、函館港、函館市街、ならびに周辺20キロの範囲に敵の脅威無し。 護衛艦各間も函館港に接岸し、『キタキツネ函館』作戦を終了する。』
「こちら武蔵、了解。」
『ところで小笠原艦長、相談なのだが、苫小牧の上陸部隊に配備してもらったイッヌを『キタキツネ函館』の部隊にも配備してもらうことは出来ないだろうか?』
「了解です。準備してまた連絡します。」
『ありがとう、よろしく頼む。』
無線が切れた。
「周辺に敵の脅威なし。武蔵、艦内コンディションイエローを解除。」
「了解、艦内コンディションイエロー解除。」
レイナが復唱する。
「なんだ、せっかく交代で来たばかりなのに、コンディションイエロー解除か。ミズキ、一緒に食堂行って、その後ジム行かないか?」
「ジム? うん、行くよー。」
ミズキとレイナが艦橋を出て行った。
オレは工房へ行って追加イッヌの件を話してくるかな。
工房へ入ると、シオリが何かを食べながらコンソールの前で作業をしていた。
「シオリ、お願いがあるんだけど。『キタキツネ函館』の上陸部隊からもイッヌの配備要請があったんだけど、大丈夫かな。」
「もちろん、大丈夫ですよ。あ、ただ、種類をどうするかは私が適当に決めて良ければ、ですけど。」
「種類? あぁ、犬種ね。多分こだわりはないんじゃないかな。本州から来たばかりの部隊だからイッヌの実機を見たこともないだろうしね。」
「わかりました。それでは、充電中の交代機もセットで50機、充電器も50個用意しますね。」
「よろしく頼むよ。ところで、今食べてるのは何?」
「あ、これ。昨日と同じブリトーです。美味しかったんで、今、マイブーム中なんです。」
「あ、オレもあの後ミニサイズのを作ってもらったんだけど、美味いよね。」
「では、ユーさんも今日のランチはブリトーですか?」
「それも良いかな。じゃ、オレは食堂行ってくるね。 イッヌの件、よろしくね。」
食堂に入るとレイナとミズキがハンバーグを食べていた。




