第93話 再会、たつなみ
「ムサシ、函館港を赤外線の最大望遠でメインモニターへ映して。」
『了解、赤外線撮影、最大望遠です。』
メインモニターに岸壁が映し出される。予想通り、戦車がビッチリ並んでる。
「想定通り戦車がお出迎えだな。武蔵、機関出力停止。」
「了解、機関出力停止。敵戦車の射程距離外で停船。」
シオリが艦を止め、小樽港と同様、港に向き合うように武蔵が停船した。
『敵戦車の主砲発射を確認。』
「え?今回は撃ってくるのか? でも、どう考えたって当たらないだろうに。」
「敵も武蔵の対戦車用強粘弾は知ってるので、ただ黙って無力化されるよりは、当てずっぽうでも良いから攻撃しようってことじゃないでしょうか?」
シオリがこちらを向いた。
「まぁ、そうだよな。黙ってやられるよりは、撃った方がましだよな。でも、どうやったって、この距離じゃ当たらないだろ。まぁいいや、こちらも粛々と進めようじゃないか。レイナ、よろしく!」
「了解、1番主砲、放物線軌道モード、対戦車用強粘弾を装填、目標左端の敵戦車!」
クォォォン。バッシュッ。
赤い塊が大きく綺麗な放物線を描いて、一番左の敵戦車の上に落ちる。
『着弾しました。』
「あれ? 強粘弾が赤く見えたけど・・。」
「はい、少し改良しました。実はミズキ先輩に教えてもらったんです、ターメリックは辛くないって。だからターメリックの代わりにチリパウダーを入れたんです。これなら絶対に辛味が出てます。」
・・いや、だからさ、辛味もなにも味は関係ないっしょ。ほら、小樽では洗うのが大変とは言われたけど、味に関してコメントは無かったじゃないの・・
「・・そ、そうか。綺麗な色になってよかったよね(棒読み)。レイナ、続けて頼むよ。」
「了解、左端から順番にいくよ。1番主砲、放物線軌道モード、対戦車用強粘弾を装填、目標左端左隣の敵戦車!」
小樽同様にレイナが1台づつ戦車を仕留めていく。小樽の時と違うのは、強粘弾の色、いや、味だ。そして小樽の時と同じなのは、精密射撃が性格にあわないレイナがイライラしてることだ。
函館港の戦車が全て沈黙したので武蔵を港へ近づけることにする。
「武蔵をもうすこし岸壁へ近づけようか。武蔵、微速前進、目標、函館港。」
「了解、機関出力10%、武蔵、函館港へ向けて微速前進。」
シオリが操艦する。
武蔵がゆっくりと港内へ入った。
「この辺で良いだろう。武蔵、機関出力停止。」
「了解、機関出力停止。」
全部無力化されてる戦車群に向き合う不思議な状態で武蔵が停船した。
上陸するのは武蔵じゃなくて上陸艦隊だから、こうして待ってるしかないんだけど、なんだか不思議な光景だよな。
しばらくして無線が入った。
『こちらたつなみ、武蔵、応答願います。』
お、たつなみ、大隅艦長の声だ。
「こちら武蔵、たつなみ、どうぞ。」
『こちらたつなみ。武蔵、小笠原艦長、また会えて光栄だ。今回も上陸作戦を支援してもらえるとのことで感謝する。現在我々は間もなく函館港へ近づく。貴艦の現在地は? どこで合流できるか?』
「こちら武蔵。現在本艦は函館港に停船中。対艦ミサイル45発を迎撃、函館港入口の機雷を排除して、港に配備されていた戦車群を対戦車用強粘弾で行動不能にしてあります。」
『え、もう? それじゃ、我々の艦隊はそのまま函館港へ入港出来るということか?』
「海上の脅威は排除済です。陸上の大型兵装も行動不能にしてあります。但し、兵士の手持ち火器までは排除できていませんので、そこは警戒が必要です。」
『了解。確かにそれは上陸部隊の役目だからな。 では我々も港に入って輸送艦あさひを着岸させる。』
約15分後、武蔵の横を艦隊が通過していった。
バァン
輸送艦あさひが着岸しようとしているところで左舷船体が大きな爆発が起きた。
「ムサシ、あの爆発は?」
『爆発の大きさ、熱量からロケットランチャーの類だと思われます。』
「兵士の手持ち火器か。くそ、あれは武蔵ではどうにも出来ないな。」
『炎は大きく出ましたが、輸送艦の艦体には大きなダメージは無いと思われます。』
パパパパパ・・。
今度は各艦の甲板でたくさんの小さな閃光が見えた。白兵戦が始まったんだ。
白兵戦が続いているが、あさひは着岸し、左舷の大きなランプウェイが開いていく。
スロープが陸とつながると、装甲車と戦車が降りてきた。
白兵戦なら、無理矢理にでも車両を上陸させた方が有利ってことだね。
港周辺では散発的に発砲音や爆発が起きていたが、空が明るくなり始める頃には、ほとんど静かになっていた。
艦隊各艦も着岸したようだ。
『こちらたつなみ、上陸作戦は成功した。周囲に敵の脅威無し。以降上陸部隊は周辺域の敵脅威の排除にあたる。』
「こちら武蔵、上陸成功了解。武蔵も岸壁へ停船します。」
「あそこに見える大きな倉庫がある岸壁に止めようか。武蔵、微速前進、目標、前方の倉庫のある岸壁。」
「了解、機関出力10%、目標、前方の大きな倉庫のある岸壁。」
サイドスラスターが稼働してゆっくりと艦が回頭して岸壁から10メートルで平行になったところで停船した。




