第69話 黄金色の・・
10種類も具材が乗った海鮮丼、さらには生ワカメの味噌汁まで堪能して、全員感動と満腹感で放心状態のまま店を出た。
「北海道って、凄いね、最初っからコレだもんね。もう大満足しちゃったよ。さて、とりあえず朝食も終わったんで、荷物を置きに一旦ホテルへ行こうか。ホテル着いたら各自近所を散策したりして、また昼に集合ってことでどうかな?」
全員が大きく頷く。
車に乗って10分とかからずに大きなホテルに着くと直ぐにドアマンが近寄ってきた。
ドライバーが窓を開けて、何かIDのようなものをドアマンに見せると、ドアマンが車の後部ドアを開けてくれた。
「統合幕僚監部の皆様ですね、お待ちしておりました。」
あ、この車ってハイヤーじゃなくて、自衛隊の車だったんだ。なんだかどうもドライバーさんがガッチリした若い人だと思ったら。そうか、セキュリティの問題があるって言ってたから、自衛隊の車プラス保安要員ってことなんだね。
ホテルエントランスに入ると、チェックインの手続きもなく、そのままエレベーターで最上階に案内された。
クラブラウンジと書かれた部屋に入る。ここはホテル最上階の角なんだな、2面の明るくて大きな窓、洋酒のボトルが並んだ壁と大きなソファーがおいてあった。
ビシッとしたスーツ姿の男性が入ってきた。
「統合幕僚監部の皆様、遠路お疲れ様でございました。わたくし、当ホテルの支配人、榎本と申します。このフロア全体が皆様の滞在場所となりまして、こちらのラウンジにはお飲み物、軽食類をご用意して御座いますので、ゆっくりおくつろぎ頂ければ幸いです。ラウンジからは苫小牧港の夜景も綺麗に見えますので、ぜひご覧になって頂ければと思ます。 それでは早速ですが、皆様のお部屋へご案内致します。」
支配人がそう言うと、ベルボーイ達が荷物を持って、部屋に案内してくれた。
「小笠原様はこちらで御座います。」
ベルボーイが1505号室のドアを開けると、中は余裕のあるツインルームだった。
「何かございましたら、フロント8番へお電話下さい。」
ベルボーイが荷物を運んでくれるといっても、荷物は武蔵に乗り込む時に制服類と一緒に支給された海自のボストンバッグ1つしかなので、棚の上にバッグを置くと直ぐに部屋を出て行った。
ホテルに来るとやっちゃう、とりあえず意味はないけど全部の扉を開けてみて、水やお湯を出してみて、ベッドのフカフカさを確認して、を一通り済ませると、ラウンジへ行くことにした。最初にラウンジに案内された時に、アレを見逃さなかったんだよね、ふふふ。
ラウンジに入る。こういう所に来るとやっぱり窓から外見ちゃうんだよね。ここは最上階とは言っても、このホテル自体が15階建てで高層ビルってことでもないんだけど、他に高い建物がないから、景色がよく見えるね。眼下に街並み、こっちの窓からは遠くに山並み、こっちからは苫小牧港と太平洋が見えて、こういう景色ってずっと見てても飽きないんだな。
あ、違う違う、やりたかったことはコレジャナイ。
ラウンジ隅のドリンクカウンターに来た。これこれ。ちゃんと動いてるか試しておかないとね。冷蔵ショーケースからキンキンに冷えたジョッキを取り出す。
ドリンクカウンターにニョキッと生えてるカランが2本。1本のレバーにはスーパードライ、もう1本のレバーにはサッポロクラシックの文字。カランは冷たく冷えてる、もう、ほぼ間違いなく動いてる。では、いざ勝負! ジョッキを近づけて、サッポロクラシックのレバーを引く。
プシュッ。コォォォー。
出た!黄金色の神の飲料。よっしゃぁ、生ビールサーバ動いてるよ。これで今日からサッポロクラシック飲み放題だぜ。
とりあえず、一口飲んじゃお。
ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ。プッハー。美味い!
そして、直ぐにまたビールを注いじゃう。うん、夢のようなラウンジだね、ここは。
そういえば、軽食も用意してあるって言ってたよな、なんだろう軽食って。
もう一つの冷蔵ショーケースをちらっと見ると、ケーキのようなものが入ってる。あ、甘いものだね、みんなは喜びそうだけど、オレにはちょっとな。こっちはなんだろう、クラシカルな棚の扉を開けてみる。クッキー、ビスケット、焼き菓子か。うーん、まぁ、つまみにならなくはないけど・・。うぉ?これは? ベビーサラミ、バターピーナッツ、さきイカ、イッツパーフェクトジャマイカ!
やばい、1人で興奮しちゃってるよ、オレ。武蔵でずっと禁酒だったせいだな。
つまみを盛った小皿と生ビールジョッキを持って山並みが見える窓に向かったソファーに座る。
しばらく海ばっかり見る生活だったから、山が見たいんだよね。
ゴキュゴキュゴキュ。
ベビーサラミを一口齧って、またビールをゴキュゴキュ。
このベビーサラミの塩加減と脂、決して身体に良さそうではないんだけど、身体に良くないものが美味しいものって先人も言ってるしね。
バタピーもパクっといって、ゴキュゴキュ。うん、幸せだよ。




