第68話 苫小牧上陸
軽いジョギングを終えて、部屋へ戻ってシャワーで汗を流して食堂へ入った。
「ユー、おはよう。」
「おはようございますジュンさん。皆はまだ来てないですね?」
「たぶん、上陸休暇だから準備で時間がかかるでしょ、若いお嬢さん達だしね。ふふふ。」
「レイナとミズキはさっきまで一緒に甲板でジョギングしてたんだけど、2人とも食べたいものがあるって楽しそうにしてたんですよ。」
「わたくしもカニ、あと北海道のソフトクリームは美味しいって聞いてるんで、食べますわよ。」
「あ、ジュンさんもカニなんだ。じゃ、皆でカニ食べに行きましょうか。」
「デザートはソフトクリームですよ、ふふふ。」
レイナ、ミズキ、シオリが入ってきた。
「みんなおはよう。今朝の朝食はどうしましょうか? 9時には上陸だから、今は軽く食べておいて、上陸したらすぐ朝市行って何か食べても良いかなって思ってるんですけど、どうですか?」
「わたしもそうするー。朝市で海鮮丼食べるんだー。」
「アタシも海鮮丼食べたいよ。」
「私もそれが良いです。」
「そう、じゃ、今はフルーツ盛り合わせとコーヒーだけ持ってきましょうかね。」
フルーツを食べながら皆で侃々諤々、喧々囂々、まさに熱い激論を重ねた結果、初日は皆で一緒に、朝は朝市、昼はスープカレー、夜はカニを食べに行くことになった。
そう、オレのジンギスカンは初日の予定から外れてしまったんだ・・。
「さ、そろそろ時間になるから、艦橋へ行って準備しようか。」
「私は最後にチェックがあるので工房へ行って来ますので、そのままカタパルト横に集合で良いですか?」
「あぁ、シオリ、よろしく頼むよ。」
レイナとミズキと3人で艦橋へ上がった。
「武蔵を無人モードへ移行。」
「了解、ムサシ、航行システム、戦闘システム自衛モード起動。」
「乗員下艦後スロープ収納、カタパルト扉閉鎖スクリプト起動。カタパルト扉閉鎖後、防衛システムを艦内無人モードへ移行。」
「よし、準備オッケーだね。じゃ、上陸の準備してカタパルト扉横に集合しよっか。」
部屋に戻って、着替えを詰めたカバンを持ってカタパルト横に来ると、ほぼ同時に全員が集合した。
レイナはレザージャケットで背中にギターを背負ったロック魂全開スタイル。ミズキのシャツには小さなリボンが付いて、全体的にパステルカラーでまとまってる、これはガーリー系って言うんだろうか? シオリは、ジーンズのパンツにワンポイントだけ入ったシンプルなTシャツにパーカー。みんな性格通りのスタイルなんだね。あ、そうか、オレ、3人に会った時は全員制服だったから、私服姿見るのって実は始めてだったんだ。もちろん、ジュンさんはいつもどおりのちょっと小洒落た初老の女性って感じのスタイルだ。
「みんな揃ってるね、では、上陸しますか。さ、出発。 って、あれ?スロープなんか変わった?」
マリカーの幅ギリギリで、歩いて進むのは怖いだろうと思ってたスロープの右側に手摺が追加されてる。
「はい、スロープを徒歩でも使えるように改修してみました。」
「そうだよね、手摺が付いたよね。これなら安心だね。」
「それは手摺型のスイッチなんです。スロープの手前に立つと、足元にリニアモーター式のパネルが出てきますので、その上に立って、手摺を掴むと乗下艦できるようにしたんです。」
スロープ、10メートルなんだから、手摺だけあれば歩けるよね・・
10メートルの移動にリニアモーターとか、絶対に技術力の無駄遣いだってば・・。
「・・う、うん。それは便利そうだね。じゃオレから行くね。」
スロープの前に立つと足元にすうっとパネルが出てきた。
この上に立って、手摺を掴むのね。はいっと。
スーっとパネルが動く。あ、なんか面白い感覚で気持ち良いかも。
全員が岸壁に上がるとスロープが格納されて、カタパルト扉が閉まった。これで武蔵は無人モードになったってことだな。
「留守番お願いねー、ムサシー。」
ミズキが武蔵に手を振ると武蔵の艦橋がピカッと1回光った。ミズキとムサシ、仲良しさんだよね。
待っていてくれた黒塗りのセダン2台に分乗し、朝市へ着いた。
車のドアを開けた途端に海鮮の匂いがする。建物に入ると賑やかな声、所狭しと並べられた魚介類。食事は味だけじゃなくて、こうやって五感で楽しむと更に美味しくなるんだよね。こればっかりはどんなに食品3Dプリンターが優秀でも再現できないからね、ここで思いっきり楽しんどかないと。
最初に目についた大きな海鮮丼の写真がディスプレイされている店に入って、全員が海鮮丼を注文した。
「はい、おまちどうさま。」
運ばれてきた海鮮丼は、丼の上にこんもりと丘のように海鮮が盛り付けられてて、丼からは刺し身がはみ出しちゃってるよ。こりゃ凄いぞ。
「これ凄いねー。カニむき身、甘エビ、ウニ、いくら、マグロ、サーモン、ホタテ、ホッキ貝、あ、下にタラコとタコも隠れてたー。」
「美味いな、最高。北海道最高だよ。」
「甘エビってこんなに甘いんですね。だから甘エビって言うんですね。こんな甘い甘エビはじめです。」
みんな興奮が止まらないみたいだ。




