第66話 イッヌV2
艦橋へ入ると直ぐにミズキが駆け寄ってきた。
「ユーさん、おっ帰りー。北海道上陸の話しって、どうだったのー?」
「苫小牧市内なら上陸できそうだよ。今、統幕に調整してもらってるんだ。」
「苫小牧ね、良いじゃない、港町だから結構大きい街なんじゃないかな。」
「お、レイナ、よく知ってるね。千歳市内も候補になったんだけど、苫小牧の方が規模が大きいってことでこっちになったんだよ。まぁ、もちろん武蔵に近いってのも理由の一つではあるけどね。大型モールとかもあるらしいよ。」
「楽しみだなー。わたし、カラオケボックス行こーっと。」
「いいね、JOYSOUNDだったらアタシも行きたいな。」
「レイナのギターでわたしが歌うのー?」
「いや違うよ、JOYSOUNDだとギター繋いで音が出せるし、ギターのコードも出るから、アタシが弾きたい曲をカラオケで弾くんだよ。」
「へー、そんなこともできるんだー。レイナのプチライブだねー、面白そー。」
自動ドアが開いてシオリが入ってきた。
「充電済、交代用イッヌの準備が出来ました。」
「じゃ、発進させようか。あ、そう言えば、山喜3佐のリクエストの模様変更ってなんとかなったの?」
「はい、中身は同じですが、外装だけ変えてみました。」
「そっか、皆喜んでくれると良いね。では、イッヌ発進。」
「了解、左舷カタパルト扉開放、イッヌV2発進。」
メインモニターにカタパルト扉から伸びるスロープが映し出される。
あ、確かに色が違う、白いイッヌ、あれ?ふわふわだし、耳と尻尾の形も違うぞ?
次のイッヌは、また色も形も違う。え?まさかトイプードル?
「シオリ、これって、マルチーズ、トイプードル、あ、つぎは豆柴?もしかして、模様だけじゃなくて、あ、外装を変えたってそういう意味?」
「はい、外装だけを変えました。」
いやまぁ、確かに外装だけかもしれないけど、それは流石にやりすぎじゃないかな・・一応、ってか、モノホンの軍用兵装だよね、介護施設の散歩支援ロボとかじゃないんだよね、これ。あらら?小さいけどゴールデンレトリバーも居るぞ。
「これってゴールデンレトリバー、あ、シベリアンハスキー、セントバーナードも? なんか小さいけど。」
「はい、中身は一緒なので、外装の大きさは変えられませんでした。あくまでもデザインだけの変更ですので。」
「いやいや、こんな小さなセントバーナードとか可愛すぎるでしょ。こんなの出てきたらハイジもおじいさんもビックリしてひっくり返っちゃうよ。」
「犬種がわからなかったのですが、密偵家族のボンド風、シルバーソウルの定春風なのもあります。」
えぇと、定春は犬じゃなくて宇宙生物だし、大きいからこその定春だよね・・。もうシオリ、いや、中の人であるエルダルン研究主任のやりたい放題だよね。
「・・そうなんだ。皆に可愛がられると良いね。」
気持ちを込めて言ったつもりだったが、棒読みになってしまっていた。
『こちら作戦司令本部、山喜。武蔵、作戦司令本部警備用のイッヌがチワワと柴犬に変わったのだが、これが交代のイッヌで間違いないか? あと、各部隊からもブルドッグ、プードル、ビークルが来たと問い合わせが来ているが?』
「こちら武蔵、その通り、交代のイッヌです。50機全て違う外装に変更しました。」
『50機全部!? ・・驚いたな。了解した、よし、各部隊にも伝えよう。』
イッヌの交代作業が続いているが、日が落ちて外はすっかり暗くなってきた。
「イッヌV2は全機発進しましたので、後はイッヌの回収が終わるのを待つだけですから、皆さんは夕食に行って下さい。」
もうそんな時間なんだな。でも、まだ回収中なら、ここで食べるかな。
「オレは回収作業を見届けながらここで食べるよ。統幕から連絡があるかもしれないしね。」
「じゃー、わたしもここで食べるよー。」
「うん、アタシもそうする。」
結局全員で回収作業を見守りながら艦橋で夕食をとることになった。
配膳ロボットが入ってきてミズキの隣で止まる。
「あー、ジュンさんが弁当メニューを用意してくれてるー。 えーとね、生姜焼き弁当、ハンバーグ弁当、チキン南蛮弁当、ぶり照り焼き弁当、どれもポテトサラダと揚げ焼売、おしんこ、豆腐の味噌汁、フルーツ付だって。どれにするー?」
「オレはチキン南蛮弁当。タルタルソースたっぷりつけたチキン南蛮、美味いんだよね。」
「アタシは生姜焼き弁当で。」
「私はぶり照り焼き弁当お願いします。」
「はーい、了解ー。わたしはハンバーグ弁当にしよーっと。」
ミズキが配膳ロボットにオーダーを入力する。
しばらくして配膳ロボットが戻ってきた。
チキン南蛮、久しぶりだな。熱々のチキンからジュワーっと染み出す甘酢ダレと、卵とマヨの親戚コラボで旨さ倍増のタルタルソース。鶏唐揚げももちろん美味いんだけど、やっぱりチキン南蛮も美味いんだよね。どっちが一番とか言う話じゃなくて、もともと特別なナンバー1なんだって歌でも言ってたし。




