第62話 人類皆麺類
「そうですね。ユーは何にしますか? トースト? それとも、立ち食いそば風にたぬき玉子そば、とか?」
「うわなんですかそれ、良いじゃないですか、立ち食いそば風、オレ、立ち食いそば大好きなんですよ。」
「ユーは麺好きだから、刺さるかなって思ったら、やっぱりでしたね、ちょっと待っててくださいね。」
ジュンさんがキッチンに入っていった。
社畜プログラマー時代、通勤途中に駅で時間が無くて5分で食べてた立ち食いそば、懐かしいな、普通の蕎麦屋のそばとは違う食べ物なんだよ、立ち食いそばは。でも、流石にそこまでは再現されなくて、普通の、いや、美味しいそばが出てくるんだろうな。それはそれで美味いんだから良しとするか。
「はい、お待たせ。たぬき玉子そばですよ。」
おー、見た目は見事なくらいに立ち食いそば風だぞ。早速頂いてみましょうか、フーフー。ズルズルっと。
これは!間違いなく立ち食いそばだよ!高級そばとは違う、このB級グルメ間溢れる独特の食感。これで良いんだよ、いや、これが良いんだよ。食品3Dプリンターってこんな違いまで再現するのか、もうこれからは神と呼ばせてもらうよ。
うまい、うまいよ。明日は春菊天に玉子入れてもらおうかな。あ、ワカメも入れちゃおうっと。
幸せな朝食の時間を終えて、予定通り、艦内を巡回した。
巡回すると言っても、ムサシが管理していて、問題があれば艦本体でさえアップデートできちゃうんだから、不具合箇所なんかがある訳がないんだけど、まぁ、気持ちというか、それが仕事だから、というか、ね。
問題がない、ということを確認してまわるだけの、あまり意味の無い巡回を終えて、艦橋へ入ると、ミズキが居た。
「あれ、ミズキだけ?」
「うん、レイナは、ほら、あそこにいるからー。」
ミズキが艦橋の窓から甲板を指さした。
あ、あの甲板の端をジョギングしてるのがレイナか、なるほど。大海原を進む艦の甲板でジョギングなんて、気持ち良さそうだな。あとでオレも走ってみようかな。
艦長席で端末で調べ物をしているとレイナが戻ってきた。
「ふー、気持ちよかったな。さ、しっかり体を動かした後は、しっかり食べないとな。」
え?もう食べる時間なの? 時計を見ると12時を過ぎていた。あぁ、もうランチタイムなんだ。
「レイナー、ランチはどうするのー?一緒に食堂行くー?」
「アタシはここで食べるよ。昨日、ランチ頼んだら弁当箱に詰まっててさ、海見ながら食べると、なんか船旅気分になって楽しかったんだよ。」
「あ、そうなの?じゃー、わたしもそうしよーっと。ムサシー、配膳ロボット呼んでくれる?」
確かにここで食べる弁当は美味かったな、じゃ、オレもここで食べよう。
「ミズキ、オレもここで食べるから、一緒に頼んでもらえるかな?」
「はーい、じゃぁ、今日のランチメニューの発表でーす。本日のAランチはミックスフライ、パンかライス付き、ポパイサラダ、パンプキンスープ、Bランチはアサリとキノコの和風パスタ、温野菜のシーザーサラダ、コンソメスープだよー。どっちにするー?」
ミズキが配膳ロボットのタッチパネルを読み上げる。
これは今日も悩むな。どうしようかな。
「ミズキとレイナはどうする?」
「これは悩むよねー。AかBかでも悩むし、Aにしたらご飯かパンでも悩んじゃうしー。」
「アタシはAランチでライスだな。アタシは朝、パン食べたからね。」
「そっか、わたしも朝はシリアルだったからご飯にしよーっと。」
そういうことだと、オレは朝食に麺食ったから、Aを選択しろってことか?
いやいやいやいや・・ 麺は何回食べても良いんだよ、人類皆麺類って言うしね。
よしっ、麺喰いの本当の力をみせてやろうじゃないか。
「オレ、Bランチお願い。」
「はーい、じゃ、Aランチのライスが2つとBランチが1つっと。」
配膳ロボットは艦橋を出て、数分後には美味しそうな香りとともに戻ってきた。
弁当箱の蓋をパカッと開ける。
キラキラ輝くアサリと、肉厚キノコがたっぷり乗ったパスタと温野菜のシーザーサラダ、更にガーリックトーストが2枚入ってた。マグカップには透き通るような黄金色のコンソメスープ。これは美味くないわけがないよな。早速パスタを頂きましょうか。パクっとな。
うん、見事なアルデンテのパスタと、そこに絡みつくソースはアサリの出汁とキノコの出汁が見事なバランスで、更にガーリックバターでコクがあって素晴らしすぎ、まさにワンダホーだよ。温野菜の人参は甘くてジューシーで、ブロッコリーはコリコリ歯ごたえ。この白い野菜はなんだろう?大根かな?いや、カブだ。あ、これは食感も面白くてすっごく美味しいジャマイカ。
ランチの後は、予定通り、甲板に出て軽くジョギングなんかやってみた。これまでジョギングなんて中学の時のマラソン大会位しか経験が無かったけど、水平線を見ながら海風に吹かれて身体動かすって結構気持ち良いね、これなら、また走ってみようと思えるな。




