第61話 鍋
食堂で全員で駄弁っているうちに夕食の時間になってしまった。
「折角全員揃ってるんだし、皆でお鍋、しゃぶしゃぶでもしませんか?」
ジュンさんの提案に全員一致で頷いて、夕食は皆でしゃぶしゃぶ鍋をつっついた。
女子高生3人と婚約者に囲まれて、鍋の食卓なんて、オレって実はマジでリア充なんじゃねって思ったら、1人でニヤニヤ笑ってしまったよ。
昔はよく一人鍋とかしてたけど、やっぱり大勢で食べる鍋って美味いんだな。
夕食後も喋り続けてる3人組を残して、一旦艦橋へ上がった。
もうすっかり夜も更けてきてて、外は何も見えないけど夜間の高速航行中だから、念の為、監視しとかないとね。ま、実際にはムサシがしっかり索敵も監視もしてるから、人間が目で見える範囲を見たくらいでは意味がないんだけど、ま、気持ちの問題ってことでね、一応、これでも艦長代理だしね。
艦長席で暗い夜の海を見ながら、長いストロークの心地良い艦の揺れに身体を任せているうちに、眠気が襲ってきて、つい、ウトウトしてしまった。ま、こうやって寝落ちするのも気持ちいいから、ちょっとだけ寝ちゃおっかな。
身体が揺さぶられてる。大きな声も聞こえる。
「ユーさん、ユーさん!」
うん?なんだ? 目を開けるとミズキとレイナがオレの顔を覗き込んでいた。
「うわっ、ミズキ、レイナ、どうしたんだ?」
「はぁ?どうしたんだ、じゃないでしょ。ユーさんこそどうしたの?なにがあったの?」
「ユーさん、大丈夫ー?」
うん?外は眩しいな。で、ここは艦橋だね、オレ、艦長席に座ってるね。あ、昨日の夜、ちょっと寝ちゃおうかって思ったら、そのまま朝まで寝ちゃったんだ。
「あれ、オレ寝ちゃってたみたいだ。もう朝みたいだね・・。」
「朝みたい、じゃなくて、朝だよ、もう。」
「びっくりしたよー。艦橋来たら、艦長席で動かなくなってるユーさんが居るんだもーん。」
「あははは、ごめんごめん。ほら、艦の揺れってゆりかごみたいで気持ちいいからさ、つい、ね、寝ちゃったんだよね。」
「ユーさんって、ゆりかごで揺られてた記憶があるのか?それって、赤ちゃんの頃の記憶?」
レイナって妙なツッコミを入れてくるな。
「いや、ほら、ものの例えだってば。 それより2人共、どうして艦橋へ来たの?なにかあった?」
「異常はないよ。アタシらもクルーだからさ、定期的に艦内を見て回ってるんだよ。」
「わたしね、もう甲板で軽くジョギングもしたんだよー。」
「そうか、オレと同じか。昨日の夜はさ、夜間航行だから、なんとなく艦橋から監視してたんだよね。そしたらさ。」
「でも監視しないで寝ちゃったんだな。」
「いや、まぁ、そうなんだけど。なんかトゲがあるな。」
「当たり前だよ、艦橋へ来たら艦長席で動かなくなってるユーさんを見た時の気持ちを考えてみた?寝るならちゃんと部屋で寝てよね。」
「そうだよー。ビックリなんてもんじゃなかったんだよー。」
「ホント、ゴメンってば。」
「あー、びっくりしたらお腹すいちゃったー。食堂行って朝ご飯食べよーっと。」
「あぁ、アタシも行くよ。」
「オレは一旦部屋に戻るよ。」
3人で艦橋を出た。
部屋に戻って、顔洗って着替えを済ませた。
食堂へ行こうかと思ったけど、その前に工房へ寄って状況を聞いておこうか。
工房へ入ると、シオリが何かを食べながら端末に向かっていた。
「シオリ、おはよう。カモメの状況はどうかな?」
「ユーさん、おはようございます。カモメですか、昨日の報告以降も敵航空機18機、敵短距離弾道ミサイル26発、配置し始めてからの合計では敵航空機54機、敵短距離弾道ミサイル86発を迎撃してますね。」
「うわ、すっごいな。ほんとにカモメ様々だ。これならもう日本海側は心配無いって感じだね。」
「そうですね、日本海は対馬海峡と津軽海峡を押さえれば封鎖できますから、自衛隊の戦力でも封鎖可能ですしね。」
「そうだね、カモメを少しでも多く配置するっていう今の戦略は正しかったね。あれ、そう言えば、さっきからシオリが食べてるのは何?」
「あ、これですか?クラブハウスサンドウィッチを作ってもらったんです。手軽に食べられる物だと、工房でこうやって作業しながら食べられるんで便利なんです。」
「サンドウィッチか、それも良いね。オレも朝ご飯食べたら艦内の巡回しようかな。じゃ、また後で。カモメの製造、配置、引き続きよろしくね。」
「はい、了解です。」
工房を出て食堂へ入った。
ジュンさんだけが食堂に居た。
「ジュンさんおはようございます。あれ?ミズキとレイナは来てなかったですか?」
「ユー、おはよう。来てましたよ。ミズキちゃんはミルクをかけたシリアルとフルーツサラダ、レイナちゃんはフレンチトーストとゆで卵を食べて、2人で一緒にジムへ行くって出ていきましたよ。」
「あ、もう食べ終わったんですか。早いな、あの娘たち。 朝食まだだったのオレだけってことですね。 今工房寄ってきたんですけど、シオリもクラブハウスサンド食べてたし。」




