第50話 今作ってる?
ミズキと一緒に左舷カタパルト扉へ向かうと、シオリが立っていた。隣には小さなジープのようなデザインの2座席の4輪バギーがあった。
「ユーさん、スロープは徒歩で使うことは想定していないので、乗艦、下艦の時にはこれ、マリカーを使って下さい。これならスロープを自動で走るので安全です。」
「うわー、シオリが今作ってくれたのー?ありがとー。」
「そうだよね、オレもちょっと不安ではあったんだ、助かるよ。ちなみに、マリカーって?」
「マリン・カーの略です。決してブラザーズとか、カートとかは関係ありません。私、版権関係には厳しいので。」
「あ、そう・・。」
マリカーに乗り込んだ。
「マリカーは自動運転レベル5を実装してますので、基本的に運転操作不要です。もちろん、運転操作をしてもらっても問題ありませんが、事故などになりそうな時には自動的に自動運転に切り替わりますので問題ありません。」
こんな小さな4輪バギーにも自動運転レベル5とは、テクノロジーのバーゲンセールだね・・
「じゃ、行ってきます。マリカー、作戦司令部へ。」
「バイバーイ。」
マリカーがゆっくりとスロープを降りていく。スロープが車幅より広いとはいえ、ガードレールもなく、下は海なので歩いたら怖かっただろうな。自分で運転してくれって言われても嫌だな、これは。
マリカーが岸壁に降りた。
「ここから先は、ステアリングを握って運転してる風にしとくよ。こんなオーバーテクノロジーな物を見せると、騒ぎが大きくなりそうだしね。」
「ですよねー。武蔵だけでもチート級なのに、シオリったらイッヌとか、マリカーとか簡単に作っちゃうし、やっぱり日本の頭脳集団、帝国技大の附属高の子ってわたし達とは違うんだなー。」
作戦司令部へ着いた。
「武蔵、艦長代理、小笠原3佐と大島3尉です。」
「ご苦労様です。こちらへどうぞ。」
外から見ても大きなテントだとは思ってたけど、実際中に入ってみたら、想像よりも広いんだな。
テントの奥には衝立で仕切られた会議テーブルが置いてあって、座っていた2人の男性が立ち上がった。
「キミが武蔵の小笠原3佐か、私がたつなみの大隅1佐だ。キタキツネが成功したのはキミ達の活躍のおかげだよ、感謝する。」
軍人らしい、力強い手で握手された。
「武蔵、艦長代理の小笠原3佐です。こちらは大島3尉です。」
「キタキツネ作戦、上陸部隊、作戦司令部の山喜3佐です。武蔵の支援、ありがとうございます。武蔵も素晴らしいですが、J4、、あの、犬型のロボットも素晴らしいです。」
「J4K-1、言い辛いし覚えづらいですよね。内部ではイッヌと呼んでます。」
「そのまんまだね。こっちでもそう呼ばせてもらおうかな。」
挨拶が終わり、全員が着席した。
「早速ですが、日本へ向けて各国から多くの部隊が向かってきているという情報が入りました。そこで、まずは日本海上の脅威を排除し、日本海を封鎖して、その後は太平洋側に集中して防衛する方針を決めました。」
「大陸国家が先に占領されて、次に日本や英国のような海洋国家が狙われると統幕からも連絡を受けている。日本海の確保は必須だと思うのでもちろん賛成だ。ただ、北海道再占領にも武蔵の力が重要なのだが、そこはどうするかな、山喜3佐。」
大隅1佐が山喜3佐の方を向いた。
「正直に言ってしまうと千歳空港を奪還して、航空兵力が使えるようになるまでは、武蔵の支援が必要だと思います。」
「そうだよな。だが、日本海の死守は喫緊の課題だし。」
「あの、そこで、我々はイッヌを追加して、更に現在対空用の兵装を作成中ですので、それを支援として置いて行きます。また、イッヌの稼働時間が3日なので、3日後にはイッヌを交代させるために苫小牧へ戻ります。」
「3日?それで日本海の脅威を排除できるのか?」
「武蔵の最大戦速は60ノットなので対馬まで行ったとしても半日かかりません。対艦、対空、対潜戦をしながら進んだとしても、3日あれば、日本海を1週できると思います。」
「そうか、武蔵の最大戦速は60ノットだったな。なんとも信じがたいスペックすぎて、こちらの常識が通じないよ。なるほど、武蔵が今すぐ日本海へ行くことは了解した。あとは、対空用の新兵装についてなのだが、それは具体的にはどんなものなんだろうか?」
「すみません、それが本当に今製造中でして、私自身も見たことがないのです・・。」
「今作ってる?」
「武蔵は艦内に工業用3Dプリンターが装備されていて、小型の兵装はそこで製造できるのです。」
「・・もう言葉を失うな。旧日本帝国海軍の武蔵が、まだ実用化されてない最先端技術の塊の艦になって復活して、艦内では兵装の製造もして、それを動かしてるが女子高生でって、もう夢でも見てるんだろうか、って思うよ、なぁ、山喜3佐。」
「はい、全くです。特に自分達は武蔵だけじゃなく、あのイッヌの活躍も生で見てるので、何が起きてるのか、本当に信じられないですよ。」




