第44話 シオリ!?
「デクター大佐、早速ですが武蔵の件なのです。ロビスコが弱点を見抜いたようで、ゲリラ戦を仕掛けてきましたの。これはそもそも戦艦で対応できるものではないのですが、我々が直接兵力を投入できない以上、武蔵でなんとかするしかないのですが、何か対応案はありませんか?」
「うーん、なるほど。ゲリラ戦ですか。確かに痛いところを突かれました・・。超強力な武装にすることで少人数で運用する、というコンセプトでは、ゲリラ戦や白兵戦には向きませんでしたね。これは我々の想定不足でした。」
「これでは、いくら武蔵が運用中にアップデート出来るようになってるとは言え、そもそものコンセプト違いでは対応が難しいですわよね。困りました、何かいい方法はないでしょうか。」
「実は、無いことはないのですが・・ と言いますか、既に準備はされてる、と言いますか・・。」
「なんですかデクター大佐、その奥歯に大きな何かが挟まったようなお話は。何か問題があるようでしたら、それも合わせてお話頂ければ、わたくしに出来ることでしたら対応しますから、遠慮なく仰って下さいな。今は武蔵、いや地球を守ることが最優先ですから。」
「・・はい・・。 えぇと、それでは緊急事態ということで、私の口からお話させて頂きますが、これはそもそも本国の指示でして・・。」
「え?本国の指示? ちょっと、なにかわたくしの知らない何かがあるってことですわね? 本国のどこからですの?その指示は。」
「あの、その辺は直接本国とやり取りして頂くということで、私は実務だけを進めることではどうでしょうか?」
「ま、まぁそうですわね。少なくともデクター大佐は職務を全うされてる訳ですし。」
「ご理解頂き、ありがとうございます。それでは、この話を進めるにあたって、シオリさんを呼んで頂きたいのですが。」
「シオリちゃんですか?ユー、シオリちゃんを呼んでもらっていいですか?」
「え、えぇ、はい。オレ、艦橋行って連れてくるので、ちょっと待っててくださいね。」
ミーティングルームを出てエレベーターに乗って艦橋へ上がった。
「シオリ、すまないけど、一緒にミーティングルームへ来てもらえるかな? レイナ、ミズキ、しばらく頼むよ。 何かあったら呼び出してね。」
シオリと一緒にミーティングルームへ入る。
「デクター大佐、シオリちゃんを連れてきましたわ。」
ジュンさんがシオリの顔を見ながら言った。
「・・ゴホン・・ 緊急事態につき、オペレーションBを発動する。」
デクター大佐が声のトーンを下げて神妙に、一言づつゆっくりと言った。
「オペレーションB?」
ジュンさんが首をかしげる。
「了解しました、デクター大佐。」
突然男性の声が聞こえた。
はぁ?誰だよ? 声のする方を振り向いた。
うわぁぁっ! ヤギ、ヤギが居るよ!
「エルダルン研究主任?どういうことですか、これは?」
エルダルン研究主任? そうだ、この人、エルダルン研究主任だ。シオリはエルダルン研究主任だったんだ。
「お疲れ様です、ジュフラン大佐。」
エルダルン研究主任がジュンさんに敬礼する。
「ジュフラン大佐、私から説明しましょう。今回の武蔵作戦でブランディーユ公国からエーデルシュタイン連邦政府ジュフラン大佐の安全確保に関する要請書が出されたことはご承知の通りだと思います。その対応で武蔵に装備が追加されましたが、更に、開発技術部が乗船し、万一の場合には直接サポートするという対策が、オペレーションBとして盛り込まれていたのです。ジュフラン大佐を騙すようなことになってしまっていましたが、本国指示でのジュフラン大佐の安全確保ですので、ご了承下さい。」
デクター大佐が頭を下げた。
「あらあら・・。わたくしの乗艦で本国がそこまで動いていたとは。それはデクター大佐には何の非もありませんので、お気になさらないで下さい。しかし、シオリちゃんに関しては、我々対外情報部が情報確認しても何の疑問もなかったのですよ、対外情報部の情報網を騙し通せる工作をするとは、少し驚きましたわ。」
「いえいえ、ジュフラン大佐、偽装工作はしていないんです。シオリさんはリアルで適正のある子だったのです。我々がやったのは、市ヶ谷へ出発する朝に、シオリさんに扮したエルダルン研究主任と入れ替わったのです。その後、彼女の記憶、歴史の改変処理を解除したので、彼女は今まで通りの生活を続けている、というわけです。」
「なるほど、そういうことでしたか、それでは我々も気づかないはずですわ。」
「シオリのこと、実はオレちょっと気になってたんです。だって、初めて見た時はザ・文系って感じの大人しい女の子だと思ってたのに、実はバリバリの理系で、その上スピード狂だったとか、イメージと違うな、って思ってたんですよ。」
「外見はコピーできますが、性格はボクの素に近いほうが、色々とやりやすいと思って、ちょっと変えてしまいました、やっぱり違和感ありましたか? フフフ。」
エルダルン研究主任がニヤっと笑ってる。




