第41話 上陸
武蔵が苫小牧港の岸壁に平行になったところでシオリが報告してきた。
「武蔵、岸壁と平行、全砲門が地上へ向けられる状態です。ここで停船します。」
「よし、みんな、お疲れ様! これで港周辺の地上部隊の排除は出来たね。引き続き対空警戒と、地上からの攻撃に対して、ここから強力な砲台として睨みを効かせていこう。」
無線の送信スイッチを入れる。
「こちら武蔵、港周辺の地上部隊は排除。引き続き対空警戒、対地警戒を継続します。」
『こちらたつなみ。武蔵がスピードボートのような速度を出して、岸壁で大きなターンを決めて、船尾で小さな津波を作り出してすべてを流しさったように見えたのだが・・これが夢でなければ・・』
「こちら武蔵、津波と言いますか、手っ取り早く洗い流した、という感じではありますが、とりあえず、現状視認できる範囲には敵地上部隊は確認できません。」
『こちらたつなみ、洗い流す・・ 港から敵地上部隊を洗い流すなんて想像したこともなかったが、目の前にある事実が全てだという事だよな。参考までに、これは単なる興味本位の質問だが、そのスピードと曲芸のような反転はどうなっているんだ?』
「本艦の最大戦速は60ノットで、ウォータージェット式のサイドスラスターと補助推進装置として電磁推進装置が装備されてます。これらで、加速反転停止を複合させたら、こんな感じになりました。」
『その装備とスペックも驚異的だが、それを操艦する貴艦のクルーも信じがたい腕前だな。相当な熟練なそう舵手なんだろうな。』
「ご承知の通り、現在の武蔵には正規の海自自衛官は居なくて、戦艦武蔵改造プロジェクトの研究員だった我々だけで運用している状況です。そして実は、私以外のクルーは現役高校生達なんです。」
『はぁ?高校生の操艦でこの活躍なのか!? 艦の性能といい、オペレーションといい、もう私の理解が全く追いついていかないよ。うん、もう深く考えるのはやめよう、結果として、キタキツネは最終段階の上陸に進める、ということだけは理解した。引き続き支援をよろしく頼む。』
無線が切れた。
まぁ、これが普通の反応だよね。信じられるわけ無いし、いくら既存の技術の強化版だといっても、完全にチート級だし、メンバーも何故か全員女子高生だし、オレだって納得できてないもんな。
岸壁の上が映されているメインモニターに左右両側から護衛艦に守られた輸送艦あさひがゆっくりと岸壁に着岸する様子が映し出された。
左舷の大きなランプウェイが開いてスロープが陸と繋がる。遂に上陸だな。
パジェロのような感じの陸自の車が降りてくる。続けて、よく陸自の映像で見る、荷台に隊員が乗り込んだトラック、そして戦車が出てきた。これは10式戦車だったよな。戦車は4両づつの2組になって、港へつながる太い道2本を封鎖した。
トラックからは荷物が降ろされ、大きなテントのような建物がどんどんと出来き始めている。
『こちらたつなみ、キタキツネは無事成功した、貴艦の支援に感謝する。輸送艦あさひは、全ての積み荷を降ろし終え次第、青森港へ戻り、次の上陸部隊を乗せて、再度戻って来ることになる。当初の予定では、苫小牧にも上陸後の支援のために護衛艦を2艦残す予定だったが、武蔵が防空支援をしてくれるなら、全艦で青森へ向かおうと思うのだが。』
「こちら武蔵、武蔵単艦でも上陸部隊の護衛は問題ありませんが、可能であれば、その先の作戦も教えて貰えると、こちらでもスケジュールが立てやすいので助かります。」
『確かにそうだな、キタキツネ作戦しか伝えてないから全体像が見えないな。失礼した。今回の作戦は、まず苫小牧港の奪還、敵の再占領に対する守備固めと共に、千歳の奪還を目指す。千歳の奪還が出来れば、以降は航空機を使った運用が出来るので、北海道奪還のスピードがあがる。それまでの間は、この、あさひで輸送を続けるしかないのだ。』
なるほど、千歳の奪還が目的だから苫小牧を上陸地点にしたのか。
「了解しました。本艦の任務は北海道の奪還ですので、千歳が奪還出来て、物資が滞りなく運べて、作戦の目途がつくまでは、ここで上陸部隊の支援をします。」
『そうか、助かる。いくら制海権を確保しているとは言っても、何があるかは分からないので、虎の子の輸送艦あさひを失うわけにはいかないので、今の艦隊のまま、しっかりと護衛がしたかったんだ。』
「ここはお任せください。」
『よろしく頼む。以降は上陸部隊、統合作戦司令部の菅沼1佐と連携を取って欲しい。こちらたつなみ、作戦司令部、菅沼1佐、どうぞ。』
『こちら作戦司令部、菅沼1佐、たつなみどうぞ。』
『こちらたつなみ、今無線に、武蔵艦長代理の小笠原3佐が居る。今後の作戦に関しては説明済で、我々はあさひと共に青森基地間の輸送を行う。上陸部隊の支援は武蔵が担当することとなった。以降は作戦司令部と武蔵で直接連携願う。』




