第40話 洗い流す?
「さぁ、キタキツネ作戦の仕上げと行きますか。シオリ、高エネルギーレーザー用キャパシタの充電状況は?」
「今83%です。」
「それなら問題ないね。1番核融合炉はそのまま最大出力運転を続けておこう。」
さて、作戦はどうするかな。敵さんは総力戦で来るだろうし、こちらは1艦も失いたくないから、全ての攻撃を武蔵に向けてもらった方が良いよな。うん、目立つ、挑発の意味も込めて、たいして意味はないけど、最大戦速で岸壁ギリギリを走ってやるか。
「敵の目を武蔵だけに向けさせるように、最大戦速で岸壁へ向かうパフォーマンスをしながら対地攻撃をしよう。シオリ、ド派手な操艦を頼むよ。」
「ド派手な操艦、了解です。」
シオリの目が光ったような気がした。
「あ―、シオリにそれ言っちゃったら、もー。」
「確かにヤバイな。セーフティーベルトを使った方が良いな。」
「え?どういうこと?」
「ユーさん、知らなかったですか? シオリはレーシングカートの日本チャンピオンで、スピードボートの草レース界隈ではシオリの名前を知らない人は居ないくらい、まじ陸でも海でもスピード狂なんですよー。」
ミズキがコンソールのセーフティーベルトで体をロックしながら言った。
え、そんな設定だったの? シオリって文系っぽい大人しい女の子だと思ってたらバリバリ理系で、その上スピード狂? まぁ、目的は敵の目を引くことだから、派手なら派手なほど良いんで問題なけけどね。でも、オレもセーフティーベルトしとこうっと。
「対地戦闘用意、最大戦速、目標苫小牧港岸壁。」
「最大戦速、目標苫小牧港!」
確かにシオリがいつもよりノリノリになってるよ・・。
グワァっという艦とは思えない加速Gがかかって武蔵が一気に走り出した。
『地上より飛翔体の発射を確認。対艦ミサイル、28発です。全戦車の発砲を確認、東上空からヘリ15機、対艦ミサイルの15発発射を確認、続けて魚雷15発の投下を確認。』
うっわ、一気に来たなこれ。
「面舵一杯、サイドスラスター全開! 戦車砲弾の射線上から外れます!」
シオリが一気に回頭させたので艦がひっくり返る位に傾いた、これはセーフティーベルトをつけてなかったら吹っ飛ばされてたね。
「1番主砲、2番主砲、高エネルギーレーザーモードで連続発射、1番、目標正面敵対艦ミサイル、2番目標、東上空敵対艦ミサイル。1番副砲、レールガンモードで目標敵戦車!」
レイナも熱い。
クォォン、ブゥーン、 ババババババババババババァーン。
「艦底電磁バリア展開、指向性ショックウェーブ、東側魚雷群へ向けて照射開始!」
ミズキも参戦。
『敵対艦ミサイル28発迎撃しました。』
『敵対艦ミサイル30発迎撃しました。』
『敵戦車の砲弾、左舷海上へ着弾、回避しました。』
『敵魚雷15発迎撃しました。』
「1番主砲、2番主砲、レールガンモードで発射、目標東上空敵ヘリ!」
クォォン、ブゥーン、 バァーン。ヴババババババババババ
『敵戦車9台の爆発炎上を確認、残りの11台は後退しています。』
『敵ヘリ15機の撃墜を確認。』
『地上より対艦ミサイル、さらに30発の発射を確認。』
「えぇい、終わりが見えないな! 1番主砲、2番主砲、高エネルギーレーザーモードで連続発射、目標対艦ミサイル!」
クォォン、ブゥーン、 バァーン。ヴババババババババババ
『敵対艦ミサイル30発迎撃しました。』
「現在約50ノットまで加速済。これで地上を洗い流します!みなさん、掴まって下さい!」
シオリの目が更に輝いて、艦を岸壁に向けなおした。
洗い流す?こんな時に文学的な表現だな。
いや、そんなことはどうでも良い、約50ノットってことは100キロ近い爆速で海上を進んでる巨体が岸壁に向かって直進してるってことだよね、まさか体当たりで岸壁ごとぶち壊そうってことなのか?
うわっ、もうぶつかるじゃないか!
「機関出力停止、取り舵一杯、サイドスラスター全開、電磁推進装置、逆進方向に最大出力!回頭180度!」
シオリがなにやら相当無茶苦茶な指示を出している。
案の定、艦が急激に曲がる、いや、回転し始めて横倒しになってる位に艦が傾いた。
倒れちゃうんじゃないのか、これ。
艦がグーっと立ち上がった。回頭が終わったようだ。
「回頭180度完了。電磁推進装置停止。サイドスラスタ―で艦を岸壁に平行に向けます。」
シオリがなんとなく普段通りに戻った感じで指示を出している。
「ムサシ、地上の状況をメインモニターへ。」
『了解、メインモニターへ地上の様子を映します。』
え? 岸壁、近辺にも何もないじゃないか。なんだこれは? うん?海上になにか浮いてるぞ。
「ムサシ、岸壁付近の海上も映してくれ。」
『了解。海上を映します。』
あ。。トラック、戦車、たぶん建物のドア、建材等が大量に海に浮いてる。
もう一度岸壁と近辺を見る。地面が水でキラキラ輝いてるぞ。
そうか、武蔵を岸壁すれすれで猛スピードのまま回頭させて、船尾で大波を作って地上を、あ、そうか、『洗い流し』たんだ。シオリのあれは文学的表現じゃなく、そのまんま、『洗い流す』だったんだ。




