第28話 出航
艦内のエレベーターで艦橋へ上がる。
うわ、少し予想はしてたけど、ここも護衛艦の艦橋とは全然違う、まんまアニメの世界だな。それも、某宇宙戦艦じゃなくて、どうみてもロボット物の母艦みたいなんだけど・・。
「ここがエルダルン研究主任が最もこだわった艦橋で、アークエンジェル級強襲機動特装艦をオマージュしたそうです。」
ジュンさんが小声で耳打ちしてきた。
あぁ、もう固有名詞言っちゃってるよ・・それに、地球に現存する技術じゃなくて、現存するアニメの設定になっちゃってるよね、これ・・。
「さ、出撃に向けたブリーフィングをしようか。」
下里1佐がそう言いながら艦長席の隣の席に座ると、シオリ、レイナ、ミズキもそれぞれの席に座って、艦長席を見るように椅子を回した。
「まず最初に紹介したい人がいるんだ。と言っても、皆知ってると思うけどもね。」
下里1佐がそういうと、艦長席の反対側の隣に座っていたジュンさんが立ち上がった。
「今回の航海から武蔵に乗艦することになった山崎純さん、そう、訓練所食堂のジュンさんだ。ジュンさんは調理師、管理栄養士だけではなくて、看護師の資格もお持ちなので、食堂での調理だけではなく、みんなの健康管理もみてもらうために乗艦をお願いしたんだ。」
「うわぁ、ジュンさんが一緒なら美味しいご飯が食べられるー。やったー。」
「ジュンさんが居てくれれば安心だな。」
「よろしくお願いします、ジュンさん。」
なるほど、食堂のおばちゃん兼健康管理という設定なのね。これなら指揮権の問題も無くて、現場でオレのフォローをしてもらえるってことだね。
「みなさん、これから大変な戦いになると思いますけど、戦うために重要なのは、健康な体と栄養ある食事です。わたしくしがみなさんの健康と食事をお世話させて頂くことになりましたので、よろしくお願い致しますね。」
ジュンさんはそう言うと、席に座った。
「小笠原艦長代理、艦長席へ座ってもらえますか?」
下里1佐が艦長席を指さす。
え?あ、オレが艦長代理だっけ。
「あ、はい。」
艦橋中央の艦長席に座った。でも、オレが艦長っておかしいよな。まず、似合ってないし・・。
「全員揃ったところで作戦の概要を説明します。武蔵は最終チェックを完了していて、いつでも出航可能な状態です。クルーの準備が出来次第、津軽海峡へ向かって下さい。目的は北海道の奪還、そしてロビスコによる脅威の排除です。 出航後の作戦等一切は武蔵の判断で実施してもらって構いません。統合幕僚部には武蔵の統合管制AIから随時情報が共有されていますので、特に必要が無い限り、報告も不要です。」
聞こえは良いけど、要するに、オマエら、勝手に戦ってこい、ってことだよね、これ。
「質問等なければ、これでブリーフィングは終了とします。武蔵が最後の切り札です、諸君のご武運を祈ります。」
そう言い残して下里1佐は艦橋を出て行った。
艦橋正面上の大きなモニターに武蔵のラッタルが映し出される。ちょうど下里1佐がラッタルを降りて、岸壁に着いた所だ。
さて、遂に地球を守るという壮大なミッションが始まるんだ。
でも、オレは艦長としてどうしたら良いんだ?
「ユー、大丈夫です、艦に関する全ての情報は今エージェント通信装置経由でユーの記憶にも追加されました。ユーがやりたいと思ったことが、ちゃんと指示できるようになっていますよ。」
ジュンさんが小声で耳打ちした。
なるほどね、思ったことができるのね、では、出航といきますか。
「下里1佐の離艦を確認。武蔵、出航準備。ラッタル収納。出航シーケンス開始!」
「了解、武蔵、ラッタル収納、出航シーケンス開始。」
シオリが凛とした声で復唱する。
「核融合炉、1番、2番共に定格出力中、異常なし! ウォータージェットシステム正常!」
レイナはイメージ通り力強い感じだぞ。
「航行システム、戦闘システム、防衛システム、オールグリーン。統合管制AIとの接続を確認。武蔵、発進可能ですっ。」
ミズキの確認が終わった。
え、この艦って動力は核融合炉で、それも2機も積んでるの?で、推進装置はウォータージェット?この巨体なのに?どれだけ電力が必要なの?あ、核融合炉だからほぼ無制限の電力を使ったお化け艦ってことか。確かに既存の技術の強化かもしれないけど、艦橋の造りも含めて、あきらかにやりすぎだって、これ・・。まぁ、もうやるしかないんだよね。じゃ、行きますか。
「よしっ、武蔵、発進! メインゲート開放、微速前進!」
「メインゲート開放、機関出力10%、武蔵、微速前進。」
シオリが右手を大きく前に振り出す。
武蔵の前方にある大きな壁が中央から左右に開き始める。
同時に、武蔵がゆっくりと動き出した。
ついに世界を救う戦いに出るんだ。アニメや映画ならここで一番良い曲が流れるところなんだろうな、なんて思ってるオレは緊張感が足りないのかもしれないな。まぁ、ジュンさんが乗艦しているってことは、こちらにはエーデルシュタイン連邦軍が完全バックアップについてるってことだから、まさに大船に乗ったってことだしね。




