第26話 集合
情報解析センターからのメッセージが転送されてきた。
『人物特定完了。神津詩織、16歳、帝国技術大学附属高等学校1年、数学モデリング部、南高砂のマンション、一人っ子。』
あらっ、文系っぽい子だと思ってたけど、バリバリ理系、それどころか日本の頭脳集団、帝国技大の附属高って。。。
またスマホが鳴った。ジュンさんだ。
「はい、もしもし。」
「ユー、明日のスケジュールが決まりましたわ。明日は各クルーの家に10時に自衛隊の車が迎えに行きますので、それに乗って市ヶ谷の防衛省に向かってもらいます。市ヶ谷にはオルフェン少佐が待機してますので、その後は彼の指示に従ってくださいね。」
「10時に車が来るんですね、わかりました。市ヶ谷にジュンさんは居ないのですか?」
「わたくしのこの姿では自衛官になるのは無理がありますわよ、ふふふふ。でも、わたくしは一足先に武蔵の基地になる伊豆鳥島で待ってますので安心して下さい。」
ビール3本、ベビーサラミ、ピスタチオでの最後の晩餐を終えて、いつもより少し早めにベッドに潜り込んだ。
目が覚めてスマホの時計を見る。ちょうど7時になったところだ。金曜日の朝、そう、決戦は金曜日。
まだ出発までには時間があるんで、軽くシャワーを浴びて、武蔵に乗ったらしばらくは食べられなくなるであろう、マックの朝セットを買いに行った。朝から油ギットギトのハッシュドポテトを食べる背徳感が、美味さを倍増させてるよね。
10時少し前、アパートの前で車を待つことにする。
ちょうど時間ピッタリに黒いセダンがやってきて、アパートの前に止まる。助手席のドアが開いてスーツ姿の男性が降りてきた。
「小笠原様ですか?」
「あ、はい、オレです。」
「お待たせしました、防衛省まで参ります。こちらへどうぞ。」
後席のドアを開けてくれたので、車に乗り込む。スーツの男性はまた助手席に乗り込んだ。
車が走り出した。もっと自衛隊っぽいというか、軍の車みたいなのが来るかと思ってたけど、普通のハイヤーなんだね、ちょっと残念。
30分少しで市ヶ谷の防衛省へ着くと、スーツの男性に連れられて応接室のような所へ案内された。部屋の中には昨日のオッサン、いや、海自の制服姿のオルフェン少佐が立っていた。
「ユーさん、おはよう御座います。こちらへどうぞ。」
応接セットの椅子に座るように促された。
「おはようございます。オルフェン少佐は海自の人という設定なのですね?」
「そうですね、ただ、私は必要な時に市ヶ谷や政府の対応がメインですので、武蔵に乗ることはありません。後方支援だと思って頂ければ結構です。」
「なるほど、そういう役目も必要ですよね。」
「早速ですが、他のクルーが来る前に、少し状況を説明させて頂きますね。まず、戦艦武蔵改造プロジェクトについてですが、ユーさんを含めた今回のクルーは年齢的なこともあり、全員、研究員だった、という設定になりました。そして本職の自衛官クルーは対ロビスコ戦で出撃して帰らぬ人となってしまったため、非戦闘員だった研究員だけで出撃することになった、という設定です。」
「確かに、高校生が軍人だったっていうのは流石に無理がありますもんね。」
「はい、こちらでは学生がクルーの適正ありとは想定していませんでしたので、かなり焦りましたよ。」
「そうですよね。。探したオレもびっくりでしたもん・・。」
「今の話までが、クルー3名にも記憶されてますので、以降はユーさんも含めて一緒に説明していきますね。」
そう言うと、机の上の電話を取って、残りのクルーを連れてくるように指示を出した。
コンコンコン。
ドアがノックされて、若い制服自衛官に連れられて3人のクルーが入って来た。
「みんなご苦労様、私は統合幕僚監部、特務班の下里1佐です。ま、まずはお掛けください。あ、飲み物はコーヒーで良いかな?あ、コーヒーを5つお願いします。」
オルフェン少佐、いや、下里1佐がそう言うと、若手の自衛官が、部屋の隅に置いてあるコーヒーメーカーからコーヒーを5つトレーに乗せて持ってきてくれた。
「ご苦労様、後はもう大丈夫なので下がって貰って結構です。」
「は、了解致しました、失礼致します。」
バタン。
自衛官が部屋を出て、ドアが閉まった。
「さて、今日皆さんに集まって貰たのは、既に皆さんにもお伝えした通り、武蔵プロジェクトに関してです。念のために簡単に状況の振り返りをしますが、残念ながら、武蔵プロジェクトの関係者は、ここに居る皆さん4名だけです。もちろん、皆さんは正規自衛官ではありません。しかし、既にロビスコが北海道を占領し、本州への占拠を始めている現状では武蔵だけが最後の望みなのです。そこで・・」
下里1佐の話を遮るようにレイナが口を開いた。
「要するに、アタシらに戦えってことですよね?良いですよ、アタシらが日本を守れるなら、やりますよ。」
レイナが表情も変えず、さも当たり前かのようにそう言うと、ミズキもシオリも大きく頷いた。




