第21話 レイナ
2人で店奥の小さなテーブルに座った。テーブルには小さなタイルがモザイク模様に張り付けてあって、細かいところまでお洒落演出がされてる店だった。
さて、また友達設定なのに相手の情報を何もわからない所から情報を引き出す無理ゲーの始まりだよ。この子の場合、ブレザーを見ても、どこの高校かもわからないんで、更に難易度高いんだよね・・。ま、連絡先交換までは前回と同じシチュエーションを使って、その後はなるべく相手に話をさせて情報を引き出す作戦で行くかな。
「ちょっと聞いてよ、実はオレの家、大変なことになってんだけどさ、空き巣が入ったんだよ。」
「えぇ?空き巣?マジ?」
「それもさ、オレが風呂入ってる時。大胆不敵と言うかさ、ヤバイよね。それでスマホも盗まれちゃってさ、皆の連絡先とかも無くなっちゃって、困ってたんだよ。しょうがないから新しいスマホ買って、念のため電話番号も変えたんで、LIMEの連絡先、もう一回交換しとこうよ。」
「うっわ、それ、マジでヤバイやつだよ。」
そう言いながらショートボブちゃんはスマホでLIMEのQRコードを見せる。
「サンキュ。」
名前は『レイナ』ちゃんね。続いて電話番号を頂きましょうかね。
「これ、オレの新しい番号、ワンギリしといてくれる?」
「これね。はい。」
はい、電話番号もオッケーっと。後はどう話を引き出すかだな。
ちょうどそこにジュースが届いた。
「おまたせしました。オレンジとアップルのミックス、パインとオレンジのミックスです。ごゆっくりどうぞ。」
「じゃ、ユー、ゴチになりまーす。」
そう言うとレイナは持ち上げたグラスを軽く乾杯するように前に突き出して、直ぐに飲み始めた。
オレも飲んでみる。結構酸味が効いてて、確かにフレッシュって感じがするね、これ。
「へぇ、結構美味いね、これ。オレンジの酸味とパインの甘味が良い感じだよ。レイナのはどう?」
「うん、これ美味しい。味もだけど、リンゴの香りが良い感じ。でもさ、美味しいけど、結構高いでしょ、だからユーに会えて良かったよ。アハハハ。」
「なんだよ、オレは財布かよ。ま、でも美味いジュースが飲めたし、久しぶりにレイナにも会えたし、良かったよ。で、今日は何してたの?」
「学校が午前中で終わったから、古着屋を見て回ってたんだ。今さ、南口のマックでバイトしてるんだけど、今日は夕方5時からのシフトなんで、それまで時間つぶしかな。」
「学校が午前中で終わったって、なんかあったの?」
「いや、ないない、何も無いよ。ほら、アタシら3年生だから、この時期、もう授業はスカスカなんだよね。受験するやつは予備校でも何処でも行って勉強して来いって感じかな。」
「で、レイナは?」
「アタシ?アタシは受験しないから、自由時間だね。アタシってか、ウチらは大抵は受験しないよ。ほら、アタシの学校、大学付属だから基本は内部進学するからね。でも、どうしても他の大学受けたいって人も一部居るんで、3年生後半の授業カリキュラムがこんな感じになってるんだよ。」
「あぁ、エスカレーターね。ちなみに学部とかは選べるの?」
「選べるけど、そこは成績順なんだ。アタシは成績も考慮した結果、国際文化学部にしたよ。」
「国際文化学ね、面白そうじゃないの。それってキャンパスは何処にあるの?」
「それがねー、東京なんだけど、都内じゃなくて、多摩なんだ。多摩モノレールに乗ってくの。京陽大学って、付属高校は荻窪なんで都内にあるのに、大学は都下なのよ。昔は高校と同じ荻窪にあったんだけど、学部増やした時に広い場所のある都下に引っ越したんだってさ。」
「そっか。でも、多摩モノレール沿線なら通学はそんなに大変じゃ無いんでしょ?」
「今よりは大変だよ。だってウチは南練馬だから、今は乗り換え1回だけど、今度は2回乗り換えになるし、遠くなるし・・。」
家は南練馬ね、よし、大体情報は揃ったかな。今までの情報を対外情報部、情報解析センターへ送ろう。キーワードは、京陽大学附属高校、3年生、レイナ、南練馬、電話番号ね。さて後は確認完了まで時間を繋げばよしっと。
「そっかそっか、大江戸線、中央線、で多摩モノレールの2回乗り換えってことか。」
「そうそう。キャンパス自体は新しくて郊外にあるから、広くて綺麗で全然問題ないんだけど、やっぱり通学が大変になるのがちょっとイヤかな。」
「まぁね。でもさ、大学なんだから、講義スケジュール次第だけど、毎日行かなくても良いかもしれないし、1限の講義がなければ朝のラッシュに通学しなくて良くなるでしょ?」
「それね、そこだけが救いよね。」
情報解析センターからの調査結果が届いてスマホ画面に映し出された。
『人物特定完了。三宅玲奈、18歳、京陽大学付属高校3年、軽音楽サークルでバンドメンバー(ギター)、南練馬で両親は自宅の敷地でコンビニオーナー。高校1年の弟が1人の2人姉弟。』
よし、任務完了。これで候補者が2人になったぞ。




