第15話 追加装備
ミーティングルームを出たところでジュンさんに肩を叩かれた。
「ユー、これから連邦軍本部へ行って、エージェント用装備を追加してもらいましょう。正確に言えば、既に装備されているけど制限が掛かっているので、制限を解除してもらうだけですが。」
「はい、わかりました。でも、制限が掛かってるのはオレが補助者だから、でしたよね?それを解除してしまって良いのですか?」
「補助者ではありますけど、状況がレッドアラートで、ユーは武蔵のクルー集めの任務がありますから、任務の必要に応じた装備は開放できますわ。」
「例えばどんな装備が使えるようになるんですか?」
「実はもう本国の許可は取ってあるのですが、今回は2つの装備の開放をします。1つ目は『適正可視化』、これは武蔵プロジェクトクルーとしての適正があるかを目視出来るようになる機能です。そしてもう1つは、『記憶リライト機能』です。詳しいことは装備担当から説明してもらいましょう。」
ジュンさんと一緒に管理部の装備担当の部屋に入った。
「では左腕をこちらへお願いします。」
キツネのような装備担当に言われて左腕を機械の下に置くと、オレが最初の補助者の装備をつけてもらった時と同じ光が出てきて、これで2つの装備の制限が解除されて使えるようになったそうだ。
「今回開放した機能の説明をさせて頂きます。まず、『適正可視化』機能ですが、こちらは『武蔵プロジェクト』での武蔵クルーへの適正を可視化出来る機能です。仕組みとしてはエージェント機能のステータス可視化を簡略化して、武蔵プロジェクトに特化させたものです。ステータス可視化機能では、対象者の各種体力、IQ、保有スキル、可能性等の各種ステータスを可視化することが出来るのですが、それをAIが武蔵のクルーに必要な適性に合致するかを分析して、その結果を10段階のレベルで可視化できる機能になります。」
「その10段階のレベルはどのように見えるのですか?」
「対象者を見ている時に、適正可視化、と頭の中でイメージすれば対象者の上にレベルインジケーターが見えてきます。」
「今、ジュンさんを見て、適正可視化をイメージしているのですが、レベルインジケーターは見えないですね・・。」
「あ、注意点として、このステータス可視化機能は監視対象、プリマベーラで言うと、地球の生き物にしか機能しません。もう少し捕捉するとステータス機能はエーデルシュタイン連邦の関係者には機能しません。」
「あ、なるほど。仲間内でステータスが見えてたら、それは嫌ですしね。そうか、じゃ、オレ自身を鏡とかで見れば・・。」
「いえ、ユーさんもエージェント装備が装着されてる時点でエーデルシュタイン連邦関係者ですから、ステータスは見えませんね。地球に戻った時に試してみて下さい。単純にレベルインジケーターが表示されるだけですから、直ぐに分かると思いますよ。」
「あ、はい、わかりました。」
「続きまして、もう一つの『記憶リライト』機能ですが、これは少し説明が必要なんです。これはエージェント機能の記憶改変の中の一部機能になります。エージェント機能の記憶改変機能は、対象者の記憶をリライトし、その関係者の記憶もリライトし、それに関する記録等も辻褄があるように、過去改変までを行う、所謂歴史にも影響を与えてしまう機能で、十分な影響アセスメントをした後、使用には上官の許可が必要になるのですが、この『記憶リライト』は、対象者の記憶だけ書き換えられる機能になります。」
「はぁ、わかったような、わからないような、ですね・・。」
「具体的に例を上げて説明しますね。例えば、ユーさんが超絶可愛い女の子を見つけて、こんな子が嫁さんだったら良いな、と思ったとします。『記憶リライト』機能を使って、彼女の記憶に、ユーさんと彼女が夫婦だという記憶を上書きします。そうすると、彼女は、ユーさんを夫だと認識します。これでユーさんの目的は達成です。でも、もし、彼女が実は既に誰かと結婚していた場合、彼女が家に帰ると、彼女の実の夫が居て、彼女を妻だと認識します。もしかしたら子供も居るかもしれませんし、もちろん子供も彼女を母親と認識します。それに役所に行くと、彼女と、実の夫との婚姻届が出ているのです。それでも、彼女の記憶ではユーさんが夫になっている、という整合性が取れない状態になってしまいます。でも、エージェント機能の記憶改変を使えば、彼女の旦那さんの記憶も上書きされ、もちろん、彼女の家族、友人、旦那さんの家族、友人等すべての関係者の記憶も上書きされて、役所の婚姻届の中身も、彼女とユーさんが結婚している、という内容に上書きされ、そしてなにより、子供も生まれていなかった、という歴史に改変されるのです。それが『記憶リライト』が機能の一部、という意味なんです。」
「あの、ちょっと、その説明の例ですが、そのシチュエーションが何をおっしゃってるのか理解し辛いのですが。ユーは超絶可愛い女の子を見たら嫁にしたいと思う、というのが前提になっているのですか?」
何故かジュンさんが装備担当者にプリプリ怒ってる。




