第110話 釧路へ向けて
ジュンさんは一人で食堂へ向かって、残る全員は艦橋へ上がった。
「では、武蔵の無人モードを解除して、出航準備よろしく。」
「了解、ムサシ、航行システム、戦闘システム自衛モード解除。防衛システムを航行モードへ移行。」
「核融合炉、1番、2番共に定格出力中、異常なし。」
「航行システム、戦闘システム、防衛システム、オールグリーン。統合管制AIとの接続を確認。」
レイナ、ミズキ、シオリがプロトコルを実行した。
「それでは行きますか、カタパルト扉閉鎖。武蔵発進、微速前進。」
「了解、機関出力10%、武蔵、微速前進。」
シオリの指示で艦がゆっくりを動き始める。
「武蔵、速度12ノット、浦賀水道を抜けるまでは水上警戒体制を厳として航行。」
「了解、武蔵、12ノット。水上警戒体制を厳とする。」
シオリが復唱する。
「みなさんを部屋に案内しないといけないのですが、先に艦を最大戦速まであげてからでも良いですか?」
「もちろん、作戦の時間に合わせることが最優先ですから。」
宮本3尉がニコっと笑った。
『まもなく浦賀水道を抜けます。現在速度12ノット。』
「さて、混雑海域は無事抜けたね。 シオリ、頼むよ。『キタキツネ釧路』へ向けて最大戦速、さらにオプション最大。」
「了解、1番核融合炉、最大出力運転。艦底電磁バリアを艦首部分に展開、武蔵最大戦速、電磁推進装置を前方方向へ最大出力。船首サイドスラスターを下後方へ向けて全開。目標、釧路港。」
シオリの指示で武蔵が一気に加速を始めた。
こんな大きな艦なのに、身体が後ろに引っ張られるほどの加速だ。
「うわ、凄い加速ですね。」
「なんなんですか、この艦は。」
「スピードボート並の加速ですよ、これ。」
『自由の女神』の3人組がざわついてるけど、無理も無いよな、ようこそ、チート艦へ、だもんな。
速度が上がって来て、甲板は台風直撃みたいな波しぶきが始まっている。
「かなり速度が上がってきてるみたいだけど、ムサシ、現在地は?」
『現在、房総半島、野島崎灯台沖30キロを75ノットで航行中です。』
「了解、最高速度まで達してたんだね。では、後は順番に休憩まわそうか。あ、シオリ、『自由の女神』チームの皆さんの部屋を案内してもらえるかな?」
「了解です。ではこちらへ。」
シオリと宮本3尉、杉本3尉、吉田3尉が艦橋を出ていった。
「それじゃーわたしたちは、これで勝負だぁ、じゃんけん、ポン!」
「ポン!」
恒例のレイナとミズキの休憩順番決めじゃんけん大会が始まった。
「よっしゃ、オレの勝ち! じゃ、お先に。」
「あちゃー。なんかわたし連敗してないかなー。もー。」
レイナが右手で軽くピースサインをしながら艦橋を出て行った。
「なぁミズキ、レイナって前から自分のこと『オレ』って言ってたっけ?」
「そうだよねー、昔は『アタシ』って言ってたよねー。そう言えば、いつから変わったんだろうねー?」
「そうだよね? 『アタシ』だったよね? 更にボーイッシュ度がアップしたってことかな?」
釧路まで約7時間、『キタキツネ釧路』艦隊が青森を出航したのが今朝8時だから、釧路到着は18時頃、こっちは11時に出航して後7時間だから、ちょうど同じ位のタイミングで釧路に着くってことだな、よし、順調順調。
「ユーさん、そろそろお昼だけど、ユーさんはどうするのー?」
「うん、そうだね、オレもここで食べることにするよ。」
「じゃ、呼ぶよー。」
やっぱり配膳ロボ担当はミズキなんだな。
「今日のランチはねー、Aランチが天津丼、揚げシュウマイ、春雨サラダ、ワンタンスープ、Bランチがアジフライ、揚げ出し豆腐、小松菜おひたし、なめこ汁、Cランチがミートボールスパゲティ、ミニグラタン、ブロッコリーサラダ、コンソメスープだよー。あたしはCランチーっと。」
「中華、和食、イタリアンか。どうしようかな。天津丼も食べたいけど、アジフライも好きなんだよな。よし、キミに決めた!Bランチだ。」
「ユーさん、なにそのポケモンの決め台詞風の注文はー。」
「あはは、今朝はクロワッサン1個だけだったからお腹空いてきちゃっててさ。」
「空腹ハイテンションかー、ちょっとわかるー。じゃ、注文するねー。」
直ぐに配膳ロボが昼食を持って戻って来た。
アジフライをパクっと、行く前に、これも大好物のなめこ汁をひと口頂いときましょうか。ズズッっと。うん、このなめこのヌメリが良いんだよね。
そしてメインディッシュのアジフライへ、行く前に、もうひとつ、揚げ出し豆腐もひと口行っとこうか、これも好きなんだよね。ま、ジュンさんがメニュー作ってるから毎回必ずオレの好きな物が入ってるんだけどね。
お待ちかね、アジフライ。サックサクで美味すぎるよ。
1匹はソース、もう1匹は醤油で食べる、これがオレの勝利の方程式なのだ。
昼食を食べ終わってしばらくすると、配膳ロボが弁当箱を回収して、代わりにコーヒーを置いて行ってくれた。
食後のコーヒーを飲みながら太平洋をクルーズ。うん、優雅だな。なんてことはなく、相変わらず窓の外、甲板は台風直撃の豪風雨状態なんだけどね。




