第101話 横須賀へ舵を取れ
「ムサシ、レイナに艦橋に集合するように艦内放送しておいてくれるかな?」
ミーティングルームのコンソールでムサシに指示を出してから艦橋へ向かった。
「どうしたのユーさん。問題発生ー?」
「なにがあったの?」
「いや、問題じゃないんだけど、予定が変わったんだ。」
「え?東京上陸が無くなるとかー? それはショックー。」
「いや、それも変わらない、というか、上陸時間が伸びることになるよ。武蔵の目的地が伊豆鳥島、武蔵専用ドッグから横須賀基地に変わったんだ。」
「え?武蔵が横須賀基地に入るの? 大丈夫なの?」
「確かに武蔵は戦艦武蔵改造プロジェクトとして隠密に進められてきたけど、北海道では既に『キタキツネ』と『ツキノワグマ』に参加して姿を見せてるからね。特に隠す必要も無いってことじゃないかな。伊豆鳥島の専用ドッグだと、東京まで遠いから、更に移動時間がかかって不便だしね。」
「横須賀に入港したら、直ぐに電車で帰れるのかなー?」
「横須賀から市ヶ谷まではヘリで行くらしいよ。で、市ヶ谷から自宅までは車が手配されるってさ。」
「良いねー、至れり尽くせりだねー。それじゃ、今夜は家で寝られるんだねー。やったー。」
「アタシ、友達のライブ見に行こうっと。」
「まぁ、予定通りに問題なく横須賀に到着すれば、の話しだけどね。という訳で、進路変更しようか。武蔵、速度このまま、目標、横須賀基地。」
「了解、武蔵、速度このまま、目標、横須賀基地!」
ミズキが復唱した。
「このペースなら後3時間位で東京湾かな。オレは艦内チェックしてそのまま食堂行って晩飯にするんで、2人も交代で食事取ってね。」
「了解ー。」
「了解。」
艦内を一周して食堂へ入ると、シオリとジュンさんが居た。
「あれ、シオリが食堂に居るなんて珍しいね。」
「はい、もう今から工房作業は無いので、ここでジュンさんと話ししてお茶飲んでました。」
「ミズキもレイナも来てないですよね?」
食堂に2人の姿はないけど、念の為にジュンさんに聞いてみる。
「はい、まだ来てないですよ。」
ジュンさんがコクっと頷く。
「じゃぁ、プリマベーラの話をしても大丈夫ですね。横須賀に着いたあと、シオリはどうするんですか?」
「本物のシオリちゃんは普通に生活を続けますから、このシオリちゃんはわたくしと一緒にプリマベーラへ行きますわ。市ヶ谷からはクルーそれぞれが送迎の車で自宅へ向かうので、他の2人にはシオリちゃんがどこへ行ったかはわかりませんし。」
「なるほど。で、オレはどうしたら良いですか? オレもプリマベーラですかね?」
「いいえ、ユーは特にプリマベーラへ行く必要はないですわよ。 もちろん、何かあれば連絡しますけど。」
「そうですか。それじゃ今夜は煮込みとホルモンとホッピーで楽しもうかな。」
「ユーもゆっくり羽根を伸ばしていらっしゃいな。」
誰かの足音がしたので、話しはここで終わった。
「あ、シオリもユーさんも居たんだ。ジュンさん、なにかガッツリ系のオススメないですか? アタシ、東京戻ったら、友達のライブ見に行くんで、そのまま打ち上げにも参加しちゃうから、たぶん完徹になると思うんで、今からしっかり体力つけとかないとだからさ。」
「ライブと打ち上げ? 良いわね、それじゃ、サイコロステーキとカキフライ、ほうれん草バターに豚汁なんてどうからしら?」
「それ凄いな、スタミナの塊だ。それお願いします!」
それは確かに凄いな、オレが喰ったら完全にオーバーカロリーで大変なことになるだろうな。流石は体力系のレイナだな。
配膳ロボが食堂に入ってきた。
「これはミズキちゃんの注文ね。えぇと、サーモンのムニエル、温野菜、クラムチャウダー、ガーリックトーストね。今夜は洋食な気分みたいですね。」
ジュンさんが厨房に入って、配膳ロボが料理を持って出ていって、レイナのテーブルにも夕食が並べられた。
「シオリちゃんとユーさんは夕食どうしますか?」
「そうですね、私はお昼にミズキ先輩が食べてたビーフシチューが気になってるので、ビーフシチューが食べたいです。」
「オレは、軽めに、豆腐とワカメのサラダと豚汁お願いします。」
「え? ユーさん、なんで軽めなの?」
「東京戻ったら、夜、飲みに行こうと思ってるんでさ。」
「あぁ、なんだ。そういうことか。 ユーさんはビール最優先だもんね。」
「そそ。ノービール、ノーライフだよ。レイナも二十歳過ぎたら飲みそうな感じだから、そのうち分かるよ。」
「え? アタシ飲みそうな顔なの?」
「いや別に顔ってことじゃないけど、ほら、ライブの打ち上げとかガッツリ酒がありそうじゃない。」
「そっか。アタシらやバンド仲間は高校生だからお菓子とジュースだけど、確かに先輩達は酒飲んで大騒ぎしてて、なんだか楽しそうに見えるんだよな。」
「楽しそうに見える、じゃなくて、実際酒飲んでると楽しいんだって。それはオレが保証するよ、ハハハ。」
「それはユーさん見てればわかるよ。ハハハ。」




