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武術学園

 岩山の谷間を歩く。メルドーシュの城壁が見えてきた。巨大な城壁を持つ要塞都市と聞いている。

 モレナから続く街道はメルドーシュの裏門につながっている。つまり、今見えている巨大な城門は裏門であるということだ。


 街に入る。街の規模としてはモレナと同じ程度に見える。裏門のある場所が一番高く、街を見渡すことができた。裏門から扇状に街が広がり、正面の平原側は半円状の二重城壁と深い堀が街を守っていた。

 街の中心と思われる場所はモレナと同じく広場になっており、2つの大きな建物が広場を挟んで向かい合わせに建っていた。

 恐らくあれが武術学園と、『元』魔法学園だ。

 メルドーシュの街は、その昔、魔人との戦いにおいて人間側の前線基地だったらしい。冒険者はこの街でスキルと魔法を学び、魔人と戦っていたのだ。

 今は魔法学園はジルオラへ移転しており、元魔法学園は民兵隊の兵舎になっている。

 街の中は緑が多く見られた。岩山の街道はもともと川であったようで、今も暗渠となって街に水を届けている。

「すげーな。さすが前線の街だっただけはある」

 アランが言った。アランはよくしゃべり、背の小さな方だ。ドロンはアランより体格がよく、あまりしゃべらない。もともと幼なじみとあって2人とも仲が良いようだ。この2日、宿場町の宿に泊まりながらメルドーシュまでやってきたが、2人とも良い青年だった。

「そうだね。ここがあの伝説のメルドーシュか……!」

 カガミも感慨深そうに言った。昨日散々聞かされたが、この街は勇者ヨシダと魔導師サンサイにより、魔王ズーモアが討伐され、人類の反撃が始まった伝説の街であるということだ。

「あの平原の向こうの森、あそこに魔王の城があったという話だ」

 珍しくドロンも語りだした。皆まだまだ子供だな。

「さあ行こうハルト!武術学園の門を叩こうじゃないか!」

 カガミが歩き出す。この娘はなんというか、一番やる気があるのだ。必然的にパーティーのリーダー的存在になっていた。


 武術学園はモレナの冒険者協会に負けず劣らずの閑散ぶりだった。民兵隊もスキルを使うらしいが、民兵は武術学園には入学しない。

 建物は立派なのだが人の気配がない。思わず「やってますかー!?」と叫びたくなる。

 受付に置いてあった呼び鈴を強めに鳴らす。奥から人が出てきた。

「お、ようやく来たか。カガミ一行だな」

 妙に馴れ馴れしい中年の男だった。

 聞けばアンジュから手紙で知らせがあったのだという。彼女なりに新米冒険者である俺たちを気にかけてくれていたということか。


 受付の男から話を聞き、いったん外に出てきた。すぐ入学手続きできるものと思っていたが、入学金がなんと銀貨10枚も必要だということたった。しかも、会得したいスキルの難易度により、相応の金が追加でかかるということだ。

 もしや魔法学園も同じく入学金があるのかと聞くと、その通りだという。しかも魔法のほうが高いらしい。

 街へ着いた高揚感はどこへやら、4人は意気消沈して広場のベンチに沈み込んだ。



 街を一通り探索した。状況は変わらずだが、この街にも冒険者協会支部があった。本部はどこなのかというと、モレナが本部らしい。メルドーシュの民兵隊はこのあたり一帯では最も規模が大きく、他の街にも派兵するほどだという。そのせいか、パーティー向けの討伐依頼はモレナの協会本部より少なかった。

 俺たちは相談の結果、明日からジルオラを目指すことにした。そこそこ強い魔獣の討伐依頼がそこそこあるのはどこかと聞くと、それはこのあたりではジルオラだということだった。南へ行くほど人は少なくなり、魔獣は強くなる。ジルオラまで行くと、魔人に占拠されていた時期が長く、まだ人が戻りきっていない。それなりに強い魔獣が放置されていることもあり、頻繁に討伐依頼が出るのだという。魔法学園の入学金がいくらであるかも知っておきたかった。


 その晩はメルドーシュの宿屋に泊まる。食事付きで銅貨15枚だった。金は節約すべきとも思ったが、俺はともかく残りの3人はそれなりに疲労しているだろう。狩人は丈夫だと皆気丈だったが、野営して風邪でも引いたらその分遅れることになる。実際、南下するごとに寒くなっているのだ。モレナで貯めた路銀はそれぞれまだ銀貨1枚程度残っている。

「ちょっとがっかりだね。せっかくスキルが覚えられると思ったのに」

 冷めたスープを飲みながら、残念そうにカガミがいう。

「いや、でも金さえ払えば誰でも会得できるってのは、むしろ僥倖さ。俺はもっと資質とかそういうのがいると思ってたんだ」

 アランが慰めるように言った。

「それに、ハルトがいれば強い魔獣も一撃だろ。ジルオラまでたどり着けば、金稼ぎはすぐだよ、きっと。な!」

 アランが俺に笑いかける。

「そうさ。俺は強化人間だ。金策は任せてくれ!」

 俺もできるだけ元気に答えた。

「うん……そうだね!」

 カガミにも笑顔が戻った。

 

 しばらくは金策が続くだろう。魔獣討伐が実は死と隣り合わせであることは、きっと俺よりも狩人の3人のほうがよく知っている。状況を見て、諦めるのも大事なことだ。

 今日は9月1日。サザンクロス防衛戦まで、あとちょうど半年だ。

 

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