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ランクアップ

 立て続けに依頼を受ける。3人が昨日断念したグレーウルフの群れの討伐依頼だ。2体と聞いていたが4体だったので手を出さずに引き上げてきたらしい。4体確認されたため、報酬が上がっていたことと、街から5キロ程度で、さほど遠くないことから、皆でこの依頼に決めた。


 3人は一度来ているため、スムーズに現場についた。サーモグラフィーで周辺に目を凝らすと藪の中に4体の熱源反応があった。

「いたぞ、あそこだ」

 俺が指さす。距離およそ100メートルくらいか。

 50メートルまで近づいて4人で一斉に射掛けることにした。3人は弓に矢をつがえ、ジリジリと距離を詰めていく。

 俺は左腕を前方へ伸ばす。パルスキャノンに変形する。3人が息を呑むのが分かった。

 まだ気づかれていないのか、もう気づいているのか、正直よくわからない。距離にして50メートルまで近づいた。

「うて!」

 カガミの合図で3人が一斉に矢を射る。一瞬の後、俺もパルスキヤノンを放った。

 グレーウルフのいた場所が爆裂する。目を凝らす。土煙の中で、パルスキャノンに当たったと思われる2体が崩れ落ちるのを見た。

 肩と腹に矢が刺さったグレーウルフが飛び出してきた。しかし、数歩よたよたと歩くとその場に崩れる。痺れ薬が効いている。

 よし、とカガミか呟いた。


 4つのグレーウルフの魔石を協会の受付に渡す。銀貨1枚の報酬を等分し、これでめでたく全員Eランクだ。

 会長から挨拶があるので、しばらくお待ち下さいと言われた。3人に聞くと、登録時には会長とは話をしていないそうだ。あの時アンジュが出てきたのは俺の武装を警戒してのものだったのか。


 会長室に案内される。やはりアンジュがいた。

「皆さんEランク昇格おめでとうございます。そして、皆さんは正式な冒険者協会の会員となりました。今後も冒険者協会のために力をお貸し下さい」

 アンジュからの挨拶はしばらく続き、3人もまんざらではない表情で聞いていた。

「冒険者としての力を伸ばすため、ジルオラとメルドーシュの2つの街は是非訪れてみてください。ジルオラでは魔法が、メルドーシュでは武器を使ったスキルが会得できるはずです」

 魔法やスキルと聞き、3人もおお、と感嘆の声をあげる。俺も不覚にも多少ワクワクした。

 

 ひと通りの話が終わったあと、俺はアンジュに質問した。

「この街にはあまり冒険者がいないようだが、冒険者はどのくらいいるんだ?」

「協会の会員数でいうと、100万人以上はいるな」

 アンジュが答える。しかし俺が欲しいのはそういう答えではない。

「今活動している人数が知りたい」

「はっきりとはわからないが、大体300人くらいではないかな」

「なるほど。では、冒険者が多く集まる場所など知っていれば教えてほしい」

 アンジュは少し間をおいて答えた。

「ここよりはるか南、魔大陸との境目にある街、サザンクロスに冒険者は集まっている。そこで今尚、魔人との戦いを続けている」

 俺の中で目的地が決まった。そこへ行けばおそらくジョウを知っているプレイヤーもいる。

 アンジュが念を押すように言った。

「ハルト、いきなりサザンクロスへ行こうとしては駄目だよ。ジルオラとメルドーシュには必ず行きなさい。1ヶ月もあれば実用的な魔法やスキルを手に入れられる。サザンクロス周辺には魔大陸から強力な魔物が入ってくることもあるし、魔人と遭遇することだってあるからね」


 アンジュからの説明を4人で聞いたあと、会長室をでる。しかし、俺には聞くべきことがあったので、3人には先に受付ホールに降りるよう促して、1人で会長室に戻った。

 アンジュは1人で窓の外を見ていた。

「答えられる範囲でいい。ジョウ・コバヤシをあんたは知っているのか?」

 後ろ姿に向かって問いかける。答えは返ってきた。

「知っている。有名人だよ彼は」

「サザンクロスにいるのか?」

「今はわからない。でも、年に1度サザンクロス防衛戦というイベントがある。その時はほぼすべてのプレイヤーがサザンクロスに集まるから、きっと会えると思う」

「そうか。それはいつなんだ?」

「3月1日」

 今が8月。およそ半年後だ。

「わかった。ありがとう。最後に教えてほしい。俺の武装でもサザンクロスでは通用しないのか」

 先の忠告も3人の手前、建前としてのものもあるだろう。

「十分通用する。特に左腕の武器は最も強力な魔法と比べても勝っていると思う」

 そうか。それならば俺一人でサザンクロスを目指すのもありだな。

 考えていることが顔に出たのか、アンジュがまた忠告した。

「さっきの皆で行ったほうがいいよ。あなた一人ではたぶん死ぬ。魔人はサイボーグのプレイヤーでも戦えるように、基本的にサイボーグと同じ作りをしている。けれど、生身の魔人だっている。サイボーグでは絶対に勝てないからね」

「それなら、あの3人でも無理じゃないのか?AIも人間とは戦えないはずだが」

 アンジュ曰く、AIが人間と認識しないように魔人にはいろいろ工夫があるらしい。肌の色が深い藍色であったり、角が生えていたり、尻尾が生えていたりだ。それら魔人の特徴を、人間ではないものとしてAIにインプットしているらしい。昔のゲームは何でもありだなと思う。

 一方で、サイボーグのプレイヤーは現実基準の規制があるため、ある程度でも人間の特徴をもつ生身の魔人にはあらゆる攻撃ができないという。もとは体力面で劣る人間のプレイヤーを優遇するための仕掛けであったようだ。

 聞くべきことをすべて聞き、会長室を後にした。


 受付ホールで皆と合流する。

「ハルトさんって、会長と知り合いなんですか?」

カガミが聞いてきた。

「いや、知り合いと言うほどじゃないよ。冒険者登録のとき、強化人間が珍しかったからか、少し話をしただけ」

 そうなんですか、と納得したようだった。


 ランクアップ祝いと、パーティー結成祝いでその日は街の宿屋に泊まった。宿の酒場で皆で夕食を食べる。

 話は次の目的地のことになった。距離的にはメルドーシュが南へ100キロほどのところにあり、さらに南へ100キロほどの場所にジルオラがあるらしい。

 近いので先ずはメルドーシュに行くことになった。しかし皆は魔法という響きにあてられ、はやくジルオラに行きたいようだ。

「魔法ってなんだかワクワクしちゃいますよね。お話の中ではよく出てきますけど、いよいよ使えるようになるんですね」

 確かに魔法がどんなものかは興味があった。これこそフルダイブゲームの醍醐味だ。そこへたどり着くまでの道のりがまあまあ長いというのは、このゲームをデザインしたやつのこだわりだろうか。

 この街である程度路銀を稼いで、数日中には出発しようということになった。

 俺もようやくジョウに会う道筋が見え、ほっとしていた。半年後までにサザンクロスにつけばいい。そう考えると肩の力が抜けるのを感じた。

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