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城郭都市2

 目が覚める。今日も良い朝だ。

 目覚めるたびに思うが、昔の仮想現実は現実と何ら遜色がない。こうして数日間続けてダイブするとむしろ前いた世界のほうが偽物なのではという妙な気持ちになってくる。

 階下に降りて朝飯をいただく。しばらくすると昨日のパーティーも降りてきた。おはようございますハルトさんと挨拶される。パーティーの勧誘は断ったが、何かあれば協力しましょうと、友好的に話を切り上げている。

 

 納品書に主人のサインをもらったことを確認すると、またモレナの街に向けて出発した。



 昼過ぎにモレナの街の城門をくぐる。協会へ行く前に広場のベンチで昼飯を食べる。宿の奥さんが気を利かせてパンにハムを挟んだ料理を渡してくれていたのだ。金はすでに銅貨10枚でギリギリだったので、非常に助かった。


 協会の受付で納品書を渡すと、報酬の銅貨10枚を渡された。次のランクまであと90枚だ。ジョウを探すにはプレイヤーが多くいる他の街へ行くのが効率的と思われるが、食い扶持を稼ぐためには最低でもランクEになっておく必要がある。

 パーティー募集の掲示板には俺の情報が張り出してあったが、特に返信のようなものはなかった。それもそうだろう。今、協会には俺一人しかいない。この始まりの街に留まっている冒険者はあまりいないだろう。アンジュに話を聞いてみたかったが、冒険者側から会長にアポイントメントを取るには、これもまたEランク以上ないといけないようだ。

 受付で仕事がないか確認したところ、屋台の組み立ての手伝いで銅貨15枚という、比較的高報酬な仕事が出ていた。急いでいるようで、受注する場合はすぐに来てほしいようだ。


 俺はすぐ受注手続きをして、指定の場所へ行く。

 指定場所は料理屋のようだ。店の外にこれから屋台になると思わしき木材の山があった。

 中に入ると中年のおじさんが、すまない、今日はやってないんだと声をかけてきた。受注表を見せると、ありがとう助かるよと笑顔を見せた。

 おじさんが言うには、屋台の許可を取ったが、思ったより屋台の組み立てに手間がかかる事が分かり、求人を出したとのこと。何日も店を休めないので、すぐ来てくれてよかったとのことだった。


 まず屋台を出す広場へ木材を運ぶ。俺に専門技術はないが、運ぶだけであれば得意だ。次々木材を運んで1時間ほどで運びきった。店主は目を丸くしていた。

 次は組み立てだが、なんと手書きの設計図があった。ゲームの事情で、良質な紙が大量に出回っているためだろうが、便利なものだ。

 もともとは職人が木の加工から組み立てまですべてやっているようだ。これは完成品を一度解体されて、その際元の作りを設計図に記したということだった。

 おじさんと一緒に組み立てていく。なかなかに大変だったが、2人でやったおかげでなんとか日が暮れる頃には完成できた。


「ありがとう。本当に助かったよ。飯を食っていってくれ」

 ありがたい申し出だった。おじさんはリアカーで店から運んできた鉄の鍋を屋台の竈にかけた。俺は即席のテーブルと椅子に腰掛けた。


 しばらく待って運ばれてきたのはおでんだった。うむ、屋台といえばおでんだな。

 街並みには似つかわしくないが、体も暖まる(ような気がする)し、うまいので大満足だった。


 協会へ戻ると、すでに閉まっていた。しまった。日が暮れると酒場以外は軒並み店を閉めてしまうことを忘れていた。まだ6時そこそこだと思うが、この世界には時計がないので、暗くなると基本的に店じまいだ。

 街はすぐ真っ暗になった。月は少し出ているので歩けないほどではないが、街中で外がこれほど暗いのはあまり経験したことがなかった。


 夜の街を歩く。石造りの家が並んでおり、雰囲気のある街並みだった。広場のそばの通りには兵士の宿舎や役人用の宿舎と思われる建物があった。今ごろ中で夕飯を食べているのだろうか。中からはそれなりに人の気配を感じ、ランプやロウソクと思われる暗い明かりが、窓の奥でチラチラと光っていた。

 教会の隣には学校があるようで、教師と思われる大人がランプを持っており、その後ろを生徒がぞろぞろと教会へ移動していた。教会の中で皆で飯を食べるのだろうか。

 こんばんは、と声をかけてみた。皆こんばんは、と返してくれた。良い子供たちだ。

 

 宿に行き、素泊まりで銅貨10枚を払う。部屋に案内されると、まあまあ立派な作りをしていた。

 備え付けのテーブルがあり、オイルランプというのだろうか、油の入った小皿に紐のようなものが浸してあり、紐の先端に火がついていた。


 ベッドに腰掛け、ランプの火を見つめる。

 さて、これからどうしたものか。料理屋のおじさんにも聞いたが、やはりこの街には専業の冒険者もほとんどいなければ、強化人間も知っている限りいないという。

 冒険者たちが去って数十年、放っておくと増え続ける魔獣に対応するため、街は兵士を鍛えた。この街には城主ははじめから居ないらしい。選挙で選んだ10人の議会で街を運営しているという。

 ゲームの仕組みを保つため、プレイヤーによって冒険者協会は維持されているが、実質バイトの斡旋場だ。この街には冒険者は最早不要な存在なのだろう。

 有志で維持されているこのゲームだが、プレイヤーは何人くらいいるのだろうか。アンジュに聞いても、そのようなメタ情報を教えてくれるかどうか不明だが、彼女しか聞ける人がいない。

 俺はもう衛星ネットワークにアクセスできないし、ゲームにログインする前に地上のダークウェブで調べても、大昔のwikiの魚拓しか出てこなかった。

 そもそもが今のノスタルジアはダークウェブ上の違法サービスであるし、普通の神経をしているやつなら、有線接続でこんな得体のしれないゲームをやってみようと思わない。最悪の場合ウイルスで記憶回路を破壊される恐れもある。

 そう考えると、プレイヤーでパーティーを組みたいという考えがかなり無理のあることだということに気づいた。やはり昨日のパーティーと組んでおくべきだったか。

 むしろ昨日のパーティーは新規プレイヤーである俺への救済措置である可能性もある。


 今更悩んでも仕方がないので眠ることにした。俺はランプの火を消し、ベッドに潜り込む。明日また冒険者協会で強化人間がどのくらいの間隔で現れるのか聞いてみよう。

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