表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

ひとり

 再び第3棟の下りスロープに戻る。幸いにもスロープ内には通行を阻むものはなく、きれいな道だった。おそらく今も屋上公園の整備に利用されているのだろう。

 このトラック以外の車両の音がする。すぐそこまで追手が来ているようだ。よかった。何とか埠頭から離れることは成功した。

 地下1階層に降りる。ここでスロープは終わりだ。第1棟と同じ構造なら、この階層を横断する海底トンネルがある。

 トンネルはその棟自体を通過する車両が多いという前提があるからだろうが、室内においても外壁に囲われている。4箇所程度ある進入口からしかトンネルには入れない。

 どこかに隠れて追手をやり過ごすか、いや、トンネル進入口を押さえられるとまずい。

 トンネルは室内部分は完全に直線路だ。内部で狙われると避けようがない。室外へ出ると次の棟まで緩やかにカーブしている。距離を取れば狙われにくいうえ、外は海なのでむやみに火器を使用できない。第4棟に最も近い進入口を目指した。室内道路標識に従い進入口にたどり着く。交差点になっており、外壁がそこだけなくなっている。入ってしまえば一本道だ。

 進入口に入ったまさにその時、荷台に大きな衝撃があった。装甲車が追いつてきたか。サイドミラーを見るとトンネル内の後方に装甲車の影が見えた。俺が第4棟を目指しているのを読んで、トンネル内で最短距離を追ってきたのか。

 トラックはまだ動く。ダメージはそれほどない。

 室外へはあと200メートル。装甲車との距離も200メートル程。蛇行しながら室外を目指す。

 

 わずか200メートルが、やたらと長く感じた。ようやく室外エリアへ到達する。サーバーを回収したいのか、追手は撃ってこなかった。第3棟を抜けたことを表す標識を通り過ぎた。

 緩やかなカーブに入り、サイドミラーから走行車が消えた。スピードは若干だがトラックのほうが速い。

 

 そのままトラックを飛ばし、第4棟の入り口まで到達する。

 最初の交差点、第4棟への進入口が見えた。ここだ。俺は急ブレーキをかける。第5棟から大阪側に上陸するには進入ゲートを通る必要がある。まず間違いなく閉鎖されていて突破は無理だろう。廃墟の第4棟に紛れ込むのがよさそうだ。

 進入口へ向けてハンドルを切ったとき、前方から見覚えのあるギラつきが見えた。その時、トラックは強い衝撃を受け、そして緩やかに横倒しになった。

 下側になった助手席に落下した。強烈な目眩で感覚がおかしい。何とかしなくてはと焦る気持ちはあったが、思うように身体が動かない。落ち着け。

 目を閉じ、目を開く。進行方向と、後ろ側から、遠く装甲車の走行音が聞こえる。挟み撃ちに遭ったようだ。ふと視界の隅に弓と矢筒を見つけた。運転席の下に須藤が隠していたのか。こんなもので戦おうとしていたんだな。無いよりマシかと俺は弓と矢筒を掴む。よし、まだ動ける。

 運転席側によじ登りトラックから飛び降りる。

 目前に装甲車が迫っていた。

 第4棟内部に向かって走る。振り向きざまにトラックの底面に向けてパルスキャノンを放った。最後の1発だった。進入口を塞ぐように横倒しになったトラックの、燃料電池の発火を期待してのものだ。燃えていては装甲車が通過しにくいはずだ。

 しかし、思うように発火しない。続けてパルス銃を数発連射したところでトラックに火がつく。よし、なんとか思うようにいった。

 ひたすら走る。後方からサイレンが鳴り、海底トンネルの隔壁が閉鎖され始めた。そこまで期待はしていなかったが、防災機能は生きていたようだ。運よく装甲車を海底トンネル内に閉じ込めることができた。

 第4棟の地下はひらすら広い。第1棟は卸売市場やら倉庫やらで色々な建物が作られていたが、ここは定期的に大きな柱があるばかりで何もない。上層へ上がるスロープはどこにあるのか。

 前方に赤いレーザーポインターがちらつく。狙われているのか。

 横っ飛びに柱の陰に隠れると、すぐ脇を熱源が通過し、前方で爆発音に変わった。パルスガンのようなもので狙われている。

 ナイトビジョンにサーモグラフィーを追加し追っ手を確認する。3人ほどのサイボーグがこちらに銃を向けている。

 柱の陰から右手のパルス銃で狙いを付け、発射する。

 命中したようだが、足が止まっていない。対電子兵器用のボディのようだ。パルス銃程度の威力では刃が立たない。

 須藤のトラックから拝借した弓に矢をつがえる。

 現実世界では弓など初めて触るが、使える自信はあった。技術的な学習はバーチャル空間でも十分効果がある。車の教習も現実では一切していないくらいだ。ひょっとすると集中(コンセントレイト)も技術的なものなのかもしれない。

 俺は集中(コンセントレイト)し、追手の脚めがけて弓を射る。ガシッと音がして追手の一人が倒れる。

 足を止めた残り2人の追手めがけて、続けざまに弓を射る。外すような距離でもなかった。3人の追手が転がったのを確認し、その場を離れた。

 

 光が差し込む方向へ走り、上層へのスロープを見つけた。第1層に上がる。

 地下と同じく、とてつもなく広く、何もない空間だった。わずかに明るい分、広さが際立っている。

 もう追手の音も聞こえない。静かだった。遠くにかすかな波の音が聞こえる。

 

 無人の廃墟を走る。


 10分ほど走り、第5棟の廃墟が見える埠頭までたどり着いた。

 第5棟のさらに向こう側には、緑の大地が見えた。

 一呼吸した後、俺は海へ飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ