表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

復旧

 目が覚める。暗い部屋だ。PCの光と、維持装置の光でわずかに部屋の形が分かる程度。感覚のローディングが始まる。いつもこの間はぼんやりとしてしまう。

 先程までのことを思い出す。自分のボディが焼かれる感覚。急速に現実的が失われていく。現実に戻ると、やはりあちらはゲームの中だったのだなと認識できる。


 5分ほどでバイタルチェックが完了し、立ち上がる。部屋の電気をつける。半取前とおそらく何も変わっていない。久しぶりの現実だった。結局俺はゲームクリアならずだったのだろうか。

 ノスタルジアのアクセスサイトを確認しても、ログインの画面は現れない。新規登録も不可のようだ。死によるペナルティなのかどうかも不明だが、今さら新規で始めたところでサザンクロスに到着するのに何ヶ月かかるのやら。

 カガミのことは気がかりだったが、もはやどうすることもできない。

 ノスタルジアでの死後の復旧方法をネットで調べて、気がつくと1時間が経っていた。結構思い入れがあったんだな、俺は。


 気分転換に飯を食いに外へ出る。

 といっても巨大な建造物の中を移動するだけだ。大阪の旧堺市と兵庫の旧神戸市六甲アイランドの間に2つ同じ建造物がある。建造物は1辺が3キロ程度ある四角形の建物で、高さは500メートル、50階層からなっている。

 俺は知らないが、100年ほど前に完成した時は、世界最大のメガストラクチャーとして話題になったようだ。汚染された東京に人が住めなくなったため、大阪近郊の人口が急増した。洋上に地域のしがらみのない新しい街を作ろうという試みだったようだ。本当は5つ同じ建物をつくる予定だったらしいが、あまりにも巨大であったため、2棟目で需要が完全になくなり、建造費の回収の目処がたたなくなった。なにせ面積だけでも六甲アイランドそのものよりもはるかに大きいのだ。そのため残り3棟は工事途中で放棄されている。完成2棟のそばの1つは公園としてそれなりに整備されたが、堺市側2棟は100年たって完全に洋上の廃虚となった。

 俺が住むのは六甲アイランド側の第1棟だ。どちらかというと六甲アイランド側が人気で賑わいがある。

 俺の拠点はその地下1階層だ。海底トンネルと倉庫の合間に勝手に作られた居住エリアがある。居住エリアには定食屋や雑貨屋もあり、普通に暮らしていける。

 行きつけの店に入り、食券を買って唐揚丼を注文する。電子調理機で温められ、すぐに出てくる。マヨネーズをたっぷりとかけて、唐揚丼をかきこむ。うむ、うまい。 


 飯を食って人心地ついた気がする。2階層にある須藤のビルの前まで行ってみた。3月4日にここでジョウを待てばよい。念のため須藤に俺からも伝えておこうとインターフォンを押してみたが、誰もいないようだった。3月4日にはいてくれよと祈りつつビルをあとにする。

 

 その時後ろから声をかけられた。

「ハルトか」

 振り返るとジョウがいた。ノスタルジアと全く同じ見た目だった。

「ジョウか。今、忙しいんじゃないのか?」

 今は3月1日の午後だ。ノスタルジアではサザンクロス防衛戦の真っ只中のはずだ。

「なんだお前、何も知らないのか」

「どういうことだ?」


 ジョウからノスタルジアのことを聞いた。1時間ほど前、サーバーの電源が落ちて全プレイヤーが強制ログアウトを食らったとのことだった。ちょうど俺が敵の光弾を浴びたころだ。ジョウ曰く強化人間は光弾一撃程度では即死しない。さらに死んだとして金を払えばコンティニュー可能であり、選択画面が表示される仕様とのこと。お前も強制ログアウトを食らったのだと言われた。

 なるほどそうかと頷いてはみたものの、いまいち状況が飲み込めない。

「じゃあ復旧したらまた防衛戦のやり直しになるのか?俺も復活するのか?」

 ジョウはしばらく考えて答えた。

「うむ、はっきりわからんが、サーバーを起動すると、復旧ポイントまで状況は戻る。復旧ポイントは1時間おきに作成されるから、最大1時間巻き戻る。お前もたぶん被弾前の状況で戻れる」

「結構はっきりわかってるじゃないか」

「まあ俺は今管理者やってるしな」

「そうなんだ」

 ジョウは管理者らしい。それも権限を持つプレイヤーというよりも、物理的なハードの管理もやっており、どちらかというと運営者だ。

 正規の業者が撤退したあと、ネットワークのストレージからデータを吸い上げて、個人所有の物理サーバーへ移し、サービスを続けていた有志一同がおり、ゲーム内で信頼できるプレイヤーに代々役割を引き継いでいたらしい。

「何代目かは知らんが、今メインで保守してるのは俺だ。そして、サブ的に手伝ってもらってる奴も何人かいて、そのうちの一人が須藤だ」

 ノスタルジアは法律的にはグレーどころか真っ黒であり、サーバーの場所はサービス継続のために秘匿しなければいけない。そのため、正確な場所を知っているのはジョウとアンジュのみらしい。

「アンジュって最初の町の冒険者協会にいた人?」

「そうそう。モレナの冒険者協会会長」

「で、サーバーの電源が落ちたと思ってさっき見に行ったんだ。そしたら、サーバーがなかった」

「えっ」

 無いとかあるのか。

「無かったんだ。誰かに盗まれたんじゃないかと思ってる」

 そして、ちらっと俺の顔をみて、言う。

「急に申し訳ないんだが、探すの手伝ってほしいんだわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ