魔法習得
3度目となるジルオラとメルドーシュ間の街道の旅だ。長いことは長いのだが、普通に歩けば宿場町まで日が出ている時間に十分つく。同じペースで翌日も歩けば夕方頃にはジルオラだ。若い3人とサイボーグの俺にとっては大した旅ではない。
今回も無事ジルオラに着いた。早速魔法学園の入学手続きに急ぐ。
入学金を支払い、手続きを終えた。魔法学園にも寮と食堂がある。食事を済ませて、その日は早めに休んだ。
翌日より授業が始まる。2日間は座学であり、たっぷり魔法の種類、歴史などを学んだ。
魔法はもともと魔人が使っており、魔人から入手したスクロールを複製し、人間が用いている。今も魔人しか使えない魔法というものもあり、その昔魔大陸へ攻め込んだ冒険者のなかには魔人の魔法を習得している猛者もいるということだった。
そして3日目から魔法を選んで習得訓練となった。
魔法学園で習得できる魔法は大きく分けて火と水の2系統だ。火は火弾とその上位魔法の光弾と紅炎
亜種として爆破系のエクスプロージョンとその上位魔法のフレアがあった。
水は水球とその上位魔法の水弾と水壁と癒水
亜種として氷系の氷壁と氷弾があった。
攻撃なら火系統のスピキュールがが強力で使いやすい。水系統は守りの要素が強いが、水壁や氷壁を使えば安心というわけではなく一時しのぎにしかならないということだった。魔法の戦いは先手必勝。先に一撃を入れたほうがほぼ勝つのだという。
では何を習得するかだが、アランとカガミはスピキュールを習得すべく、まずはファイアーボールから習得するようだ。
ドロンはキュアを習得すべく、まずはウォーターを習得する。キュアはよく効く塗薬程度の効果しかないので、その場で傷が治るとかそういうことはない。魔法教師的にもあまりお勧めではないという感じだったが、ドロンはそれでもいいということだった。
そして俺は、氷壁を習得することとした。
俺が最も恐れているのは生身の魔人であり、遭遇した際に一時的でも防御できるものが欲しかったからだ。
皆それぞれスクロールを使用してもらう。もちろんこれだけでは使えるようにならず、スキルと同じく最長1ヶ月の鍛錬がひつようだ。魔法の鍛錬は詠唱がメインであった。ファイアーボールであれば、『灼熱の彼方に眠る赤き魂よ、古の契約に従い、今ここに顕現せよ!大地を焦がし、空を焼き尽くす烈火となりて、我が敵を灰と帰せ!火弾!!』という長くかっこいいものがある。
魔法それぞれにある詠唱姿勢をとり(ファイアーボールであれば両手の平を外側に向け、親指と人差指で三角形を作る)詠唱する。
初めてでも、『灼熱よ』くらいまでは手応えがあるらしい。最後まで手応えを感じて唱えきると、ファイアーボールが出る。
完全に習得すると詠唱は要らない。詠唱姿勢とファイアーボール!の掛け声一発でファイアーボールが出るという。ファイアーボール!と叫ぶのは絶対必要らしい。
パルスキャノンは無詠唱で連発できる。なんと優秀な武器か。俺には攻撃魔法は必要ないな。
カガミとアランはひたすら詠唱を唱え始めた。俺とドロンも説明を聞き同じく詠唱を始める。これはスキルの時と比べると結構大変だ。まだスキルの時は武器の練習にもなったのだが、これはただただ呪文を唱える以外の何物でもない。
午前の鍛錬が終わると皆へとへとだった。
建物が美しく、その日は学園を隅々まで見て回った。
「魔法学園すげーな。どうやってこんな高い天井作ったんだ」
アランの声がホールに響く。俺もゲームだということを忘れて高い天井に見入っていた。
朝食、昼食、夕食はその広いホールで食べる。まるで豪華なホテルのようだった。部屋も武術学園と同じ男4人部屋なのだが、女子寮との境目が暖炉のある談話室になっていた。学園の生徒は、今は俺たち4人しかいないので、毎日談話室を貸し切りで使うことができた。夜はそこでカガミもまじり遅くまで話した。話題はみんなの村の話や、小さい頃の話だった。
アランとドロンは20そこそこだと思っていたが、実は17と18だという。アランが17でドロンが18だ。思っていたより若かった。
カガミは23だという。
俺も正直に今年で40になったと言った。
「めちゃくちゃ若く見えるじゃん!同い年くらいかと思ってたら、親父と同じ年かよ!」
アランがゲラゲラ笑って言った。強化人間は不老なのだというと、カガミはひどくうらやましがった。
1週間たち、2週間たち、3週間目の中頃、アランがファイヤーボールを習得した。翌日ドロンがウォーターを習得。若いと覚えるのも早いのか。
それから1週間後、カガミと俺がほぼ同時にファイヤーボールとアイスウォールを覚えた。
アランとカガミは同じファイヤーボールを覚えたのだが、明らかにカガミのファイヤーボールのほうが高威力だった。魔法には得手不得手がある。習得スピードはあまり関係なく、覚えた魔法の威力やスピードが使い手によって違うらしい。また、練度によっても強い弱いが出てくる。たくさん使うほど強くなるというわけか。
はじめは皆アランくらいだというので、カガミが特別才能があるようだった。
皆次の魔法の習得に移った。次の魔法も銀貨30枚であった。この銀貨30枚だが、かなりの大金だ。この世界では1年遊んで暮らせる額になる。Eランクの冒険者の稼ぎでは1年かかっても貯まらないだろう。
金については暇な午後の時間で冒険者協会の依頼をこなしていたので皆ギリギリ大丈夫だった。ウォーウルフの依頼が新規に1件あったのが大きい。それかないとしばらく金策に走っていたところだった。
俺は特に覚えたい魔法もないのでアイスランスを覚えておくことにした。
火系統ほど一撃必殺ではないが、燃費も良く飛距離もあり使いやすいということだった。可もなく不可もなくといったところか。強いと評判のスピキュールが良いのだが、ファイヤーボールから習得する必要があり、金が足らなかった。
それからまた3週間ほど、午前中は魔法学園で鍛錬し、午後は冒険者協会で依頼をこなす生活を続けた。
今度はカガミが先にスピキュールを習得した。
「光弾!!」
赤い光線が射出され、直撃した的は言わずもがな、かすった的まで一瞬で火だるまになり、豪快に炎上した。
スピード、威力ともにファイヤーボールとは段違いだった。皆が息を呑んだ。
「すごい……」
一番驚いたのは カガミ自身だった。教師も相当練度が高い魔法使いと同程度の威力があると驚いていた、
「すげえぞ……!俺も早く覚えないと」
それからまもなくアランも習得した。
強いことは強いが、やはりカガミほどの威力はない。しかしアランは満足げであった。
「使えば使うほど強くなるってことは、そのうち俺もカガミみたいになるんだよな。しかしこれはすげえよ。グレーウルフなんて一瞬で丸焼きだ」
俺たちは依頼でランクアップできる最高位の冒険者に既になっている。ようやく実力が追いついてきた感があった。
俺ののアイスランスとドロンのキュアもそれからまもなく習得し、2ヶ月に及んだ魔法学園での魔法鍛錬も一応の区切りがついた。




