9話
結局感剣は発動しなかった。
平穏が一番だが、そもそも命狙われてる少女をこんなとこに置くべきか?
いや、多分勇者って絶対的な強者がいて騎士としての質も高いこの都市はこの国一番安全なのだろう。
俺もこの屋敷周辺には常に強者の騎士たちが巡回していて、とてもじゃないが犯罪者なんて出ないだろう。
?そうえばあいつなんでヤクザもどきに襲われたんだ?
と思ったが、どうやらこの国のものじゃなかった様子。
ヤクザもどきも、貴族でしかも王族の末席である彼女の服を切り裂いて下着を晒すって不敬を起こしたからきっと死刑より重い罰が待っているだろう。
俺はこの日シリウスに呼び出された。
ここんとこ、ユーリシアは学園を休んでいたので、ああ、まあ厳罰だ。
勝手に俺を追い返そうとして決闘騒ぎに起こして学園長もパピー氏も激おこぷんぷん。
「さて、ベルゼくん今後についてだが……」
俺とユーリシアはシリウスの応接室に呼ばれて、ちょっとくらい雰囲気の部屋の中で威厳あるプレイを行っていた。
「まあ話は聞きましたよ。
俺も学園通わなきゃダメなんすよね?」
「そうだね、結局ユーリの一番近くで護衛できるとありがたいと思ってるから」
「まあそれはいいっすけど、俺魔法使えませんよ?」
うん、小さい時からやってみようとしたけど結局きっかけ掴めなかった。
それっきりで全く魔力に接しないままもう15歳。
魔法ってガキの頃からやらなきゃ感覚掴めないらしいぜ。
「うん、そのことだがユーリ」
「はい、お父様」
「まずはユーリにお手本見せて僕が確認するってとこかな。
まあユーリは魔力操作に関しては僕より優れてるからね!」
「お父様の場合は聖剣主体だからですよ」
「まあ〜そうなんだけどさぁ、ぶっちゃけ魔法苦手なんだよねぇ」
「ふふ」
(勇者がそれでいいのか?)
俺の心の声も虚しく、今中庭に出ている。
「まああんたもわかると思うけど、魔法には下級→中級→上級ってあるわ。
私は上級まで無詠唱でできるけど、その上には特級ってあって、さらにその上にもあるけどそれは五大龍王しか使えないわね」
まあわかると思うが、ユーリシアは才能はなけれど無能ではない。
それは彼女が救世主ゆえの散々期待された上での努力だからだ。
手も握手したことあったが、意外と傷だらけで努力の手と言える。
「まあ見てて、“フロストブロック”」
すると彼女は無詠唱だが氷の塊を出し、杖代わりにミスリル剣を操作してあっという間に、レイシアとシリウスを作ってしまった。
「へえー、それって中級魔法なのか?」
「いいえ、正確には準上級って言えるわね。
中級のアイスブロックをさらに上級のフロストノヴァで冷やして、それをさらに魔力操作で形を変えたの。
これ単品でも数日は持つわね」
「へえ、魔法って魔力使うけどそれって維持するのに持つのかよ」
「これに関しては大気水分を冷やしただけだから魔力でできているわけじゃないの。
正直魔法なんて私から見れば自然の中にあるものを利用するってだけだから」
「ふーん、エルフみたいな考えなんだな。
俺が聞いた話だと、あいつらって精霊術ってのを使うんだろ?」
「そうみたいね。
まあ私は精霊なんてあったことないからわからないけど、でも魔法ってのも自然にいる精霊の助けを借りるそんな気がするわ」
そいえば彼女が俺と戦った時に使った技。
あれは明らかに周りから魔力を集めていた。
実はそれが精霊術だったりして。
まあ噂話だけど、エルフってのは聖域に住んでるらしくて稀に窮屈な生活が嫌で飛び出すらしい。
だけど、稀に悪意ある奴に騙されて奴隷にされるとか。
そういえば、俺のいた聖域前の村もエルフの奴隷がいたとか。
ん?エルフの奴隷?ユーリシアの精霊術?
まさかな。
彼女は耳が尖ってないし、何より童顔だ。
エルフは絶世も美形らしいがそれは悪い意味で老け顔。
とてもじゃないが、彼女がエルフだとは到底思えなかった。
さて俺の番だ。
「ベルゼくん、魔法のコツは体内にある血管とは別の管を循環させるイメージだ
それを絞り出す要領でやってみるといい」
と言われたものの、「ふんどりあ!」と手を前にして必死にグーパーするが何も出ない。
なんつーやっぱりわからんわけわかめ。
隣で見ていたユーリシアは神妙な顔をしている。
「あんたってオーガみたいなのに魔法できないとこもまるっきりオーガね」
「っきぃ!」
と必死に魔法を放とうと素振りはするが全然ダメだった。
「さて次は気を取り直して剣術についてだね。
この国では主流な剣術は剣聖流だ。
剣聖流についてだが、元は剣で成す剣成流と呼ばれていた」
そしてシリウスは剣術に関する昔話を淡々とする。
「それで実は元はこの国には二つの剣術があったんだ。
一つはさっき言ったが剣成流、それともう一つ。
最強に近いと呼ばれた剣術の
剣真流だ」
剣真流?なんか心当たりがある。
「あれ?剣真流って気を使う剣術っすよね?」
「ん?博識だね!
そう元は気と呼ばれる魔力とは違う概念が剣真流は必須だ。
それは東国の技術だったんだけど、僕の祖先である原初の勇者の仲間だった剣士が、魔法でも同じことができるんじゃないかと生まれたのが剣成流ってとこだよ」
「へえ」
俺がなぜ剣真流を知ってるかというと、実はアラモスはその門下生だったのだ。
だから彼も気を使う剣を使えていた。
と言っても刀であるサーベル系の武器を使うのが本当の流派で、
アラモスはその適正はなくて大剣を使い始めた。
剣真流は平民であっても受け入れるので、古参の冒険者の中では使えるものもいる。
「まあ実は剣士の頂上は誰かと議論かあってね?
そこで最高の称号である剣聖を決めるために、僕の兄貴分である現在の剣聖の剣成流最高の剣王と剣真流最強の剣士である剣鬼の試合が行われるはずだった」
「ん?だったてなんかあったんすか?」
ユーリシアも気になっている様子。
そもそも現在剣真流の道場を見ることはない。
一体何があったのか?
「まあ試合当日剣鬼は来なかったんだ。
それで不戦で剣聖が決まって、本人は人生最大の屈辱って言ってたよ。
それで剣真流は忌避されるようになり、落ちぶれて今じゃ国内にはないだろうね。
だから今使えるのも一部冒険者ってとこかな」
「ふーん、まあ歴史は分かりましたよ。
ってことは俺は魔法使えないから剣聖流向いてないのでは?」
「そうだね、あとは我流になりすぎててめちゃくちゃだ。
正直僕は感覚派だから、君の技術を矯正できるのはやはり行方知れずの剣鬼ぐらいだろうね」
「なるほどねぇ。
まあ当面は今のままでいいですよ。
となると、このままじゃ入学難しいのでは?」
「ははは、それも関しては任せてくれよ。
とりあえずユーリの復学に合わせて試験受けてもらうから、とりあえずユーリ?」
「はい!この馬鹿をこの成績一位の私がきっちり教え込みます!」
「……お手柔らかに……」
後日試験を受けた俺は、魔法は残念、剣技は及第点、筆記はギリギリだった。
結局裏口入学で進学することになってしまった。




