1話
それはとある村での話だった。
国のとある都市を壊滅させた古代の龍王、それを討伐した二人の英雄がいる。
一人は聖なる剣を召喚する、剣技と魔法の名手勇者シリウス。
彼は白銀の髪が目立つクールな美形。
もう一人はそのお供で回復魔法とは違う完璧に治す聖なる光を宿す女性聖女レイシア。
彼女はこの国の王族でもあり、黄金の髪をしていた。
二人は学園時代からの同級生でお互い好きあっている。
本来は止められる二人の交際だが、聖女の父である国王がある条件を出す。
それは聖剣の一族最高と呼ばれるシリウスに対して、世界の害悪と呼ばれる魔龍王の討伐だった。
魔龍王とは世界の天災級と呼ばれる強大な魔物の一体で、五龍王と呼ばれる一体でその祖先である古代龍そのものだ。
聖剣の一族は代々魔龍王を狩るために研鑽してきた。
そしていよいよ魔龍王が破壊を起こし始めたので、彼に討伐を命を与えて、交際を否定するつもりだった。
だが歴代最高と呼ばれる自分の娘がまさか彼について行き、魔龍王を討伐するなんて思っても見なかった。
そして王女レイシアの強い押しもあり婚約すら認めなければいけなかった。
それだけ二人の行いは偉業で英雄と言える。
そして、彼らはやることやって妊娠してしまった。
だが国王には危険視する理由があった。
実は国王の一族は全てを観る者という賢者の一族だ。
そして聖剣の勇者の一族と光の聖女の一族は原初の3人である女神の使徒が魔神討伐のために力をもらい、そして代々子孫を残すことで力を維持してきた。
だが、ある時子孫同士で婚姻することもあったが、なんと勇者の一族と婚姻した他一族の女性はもれなく出産に耐えきれず死んだ。
もちろん赤子も死産であった。
だからこそ英雄の一族同士の婚姻は御法度だったのだ。
だがしかし、賢者の一族である国王はたまたま結ばれた女性が聖女の一族だったのだ。
なんとか癒しの光ごり押しで子供は生まれたが、長男のアルバルトとは別に側室である彼女の間に生まれたレイシア。
レイシアは無事だったが、その相手だった女性は亡くなった。
悲しみに暮れたが、王妃の支えもあり立ち直った。
だが、自分の娘もそんな目に遭うなんて自分には許容できない。
だが恋仲である二人に、しかも邪竜殺しの大英雄。
周りの声もあるため、彼らには忠告だけはして仕方なく認めた。
大切な人が失う悲しみは非常だが、まあ最近は長男の子供が生まれて辛うじてプラスだった。
だが、
ある時国で抱える占命術の老婆がある予言をした。
もうすぐ魔神は復活して、英雄の子が救世主となり世界を救う、と。
その英雄とはもしかしなくてもレイシアとシリウスのこと。
そしてその子が救世主となると、さすがに諦めるしかない。
それは太古の昔世界を混乱に陥れた魔神の復活は、現実味ないけれど。
だけど邪竜すら従えた魔神だからこれ以上は破滅があるかもしれない。
だが救世主を狙うものもいる。
それは魔神を信仰する一派だ。
そして確かな情報筋を元に、生まれてくる孫が狙われていると知った。
王城すら安心できない。
そこで国のハズレで聖域と呼ばれる魔物が出ない森の近くにある村で出産させることにした。
だが後から聞いたが、そこでも刺客に狙われたとか。
だが無事に元気な女の子が生まれて、二人に似た金と銀の髪を持ち、まるで神から授かったような赤子だったと思う。
だけど、この時はまだ知らなかったのだ。
この赤子は偽物であって、自分の本当の孫が今まさに奴隷のような扱いを受けていることに。
人は善性で動かないことは知っていたが、これがのちに世界を破滅に導く、魔人の誕生だったとはこの時はまだ思わなかった。
***
あれから6年経つ。
聖域付近の村である少年がいた。
その子は白金色の髪をしており、中性だがくっきりした目鼻立ち。
初見の人が言うなら絶世の美形ってやつだろう。
だがその子の目は青く透き通る目なのにどこか濁っていた。
(つらたん……)
みなさんこんにちは、僕はとある村の暫定奴隷こと、名前がありません。
僕はかれこれ物心つく時から「あれ」や「これ」もしくは「お前」って呼ばれます。
僕はどうやら捨て子のようでして、村の納屋である家畜が飼育されている中で、僕もまた家畜同然に扱われます。
まあ普通の人と違うところといえば、前世の記憶があるってとこですね。
前世といっても、高卒で引きこもりのどうしようもないクズだったことは覚えています。
前世の記憶が戻って自分の置かれている現状に気づき絶望しました。
例えばご飯が出るとしたら、わけわかんないクズ肉やカビかけのパンなど。
とてもじゃないですが人らしい生活はしてません。
それどころか、たまにくる村の女どもの捌け口にされます。
まだ精通すらしてないのに、すでに童貞じゃないとは。
相手が女優クラスの美女ならよかったですが、あいにくクラスにいそうなインキャ女子ばかりです。
はい、ブスです。
もう人らしい暮らしさせてもらえないのでこの世界の人々が憎くて仕方ありません。
朝起きれば村全体の水を井戸から汲まされて、掃除洗濯全てをこなします。
村の子たちは勉強など教えてもらってますが、あいにく僕はよそ者なのでほったらかしです。
それで気に食わないと殴る蹴るが当たり前でした。
もうこんな生活嫌です。
現代のような親からお小遣いもらって、宅配で飯持って来てもらう生活が楽園でした。
今になり労働の辛さが身に染みてます。
僕の家は別に裕福じゃありませんでしたし、父は蒸発。
後は介護士やってた母の収入で暮らしてました。
クズな息子ですみません。
さて、この奴隷同然の生活で僕は賃金をもらえるのか?
いいえ全くもらえません。
女性の相手もさせられてコミュ力つくかと思えば、逆に人間不審でした。
実は数年前に途方に暮れていた旅人の女性を騙してこの村で性奴隷にしていたそうです。
その女性は耳が尖っていて人工的な美しさを持ち神秘的だったとか。
だけどこの村の奴らはその女性の舌とアキレス腱を切り逃げ出せないようにしていたそうです。
今僕の暮らすこの部屋もそのその奴隷さんのヤリ部屋だったとか。
その方は最後亡くなったそうですが、そんな事故物件に住まわせないでもらいたい。
非常にガクブルしてます。
さて、いつも傷だらけな僕ですけどある秘密がありました。
それは手から出る謎の紫の光を傷口に当てると瞬時に治るのです。
そして病気になった時もそれを使うと一瞬で治るました。
この力が村人にバレてしまえば後は悲惨な目に遭うことは明確なので、村で重症者が出ても知らんぷりでした。
さて、
僕はいつものように女性陣との情事が終わるとコンコンと、壁が叩かれる音が。
こっそり覗くと、そこにはいつも僕に優しくしてくれるリリナちゃんがいました。
「ナナシ君!
今暇?」
僕は別にナナシって名前じゃないですが、彼女から安直にそう呼ばれていました。
「うん!
ちょうど今時間あったよ!」
「じゃあ今そっちいくね!」
僕の納屋は今は見張りがありません。
当時は僕は逃げ出さないように監視がありました。
ですが完全に牙を折ったと思った村人たちはこんな奴隷に時間を割きたくないと今では誰もいません。
だからこそ、村の女は誰も見ていない瞬間を見計らい僕を襲いにきます。
マジでブスの股を舐めさせられるのが拷問です。
だって風呂だって基本入らないんですよ?
勾配きちいですわ。
さて、
「ねえ見て、白狐のブレスレットだよ!」
リリナちゃんは手に持ったもふもふのブレスレット。
それを自慢げに僕に見せました。
「これは?」
「これはね、お隣のダリット領で見つかった白狐の尻尾を加工した腕輪なんだって!
真白な狐で、尻尾が九尾あったらしいよ!」
「へえ……」
僕はそれをまじまじと見ました。
それはまさに白い毛皮の輪。
だけどなんだろうか?
見てるとすごい苦しくなるような、なんか恨みのこもった見ただけでわかるやばいやつ。
「リリナちゃん、これ明らかにやばいやつだよね?
それにその狐ってどうなったの?」
「あー、ナナシ君にもわかるかぁ。
リリナね、このブレスレットつけようとしたらすごい疲れたの。
他の村の人もつけたらすごい疲れたって。
だからナナシ君にあげてこいって言われたの!」
いや俺はゴミ処理ですか?
だけどこの腕輪、なんか効果がありそうな気がする。
「じゃあもらうよ!」
そしてリリナからはいと渡されると、だがリリナは明らかに追い打ちかける言葉を言って俺を恐怖させる。
「あのね?実は白狐って剣聖様が対峙してくれたんだけど、噂だとこれを持ってる人は白狐の祟りに遭うんだって!
ナナくん気をつけてね?」
「は!?」
そう言って俺に預けたリリナはそそくさと納屋を後にする。
見てみると明らかにやばいやつ……
とりあえず、紫の光さえあれば解呪できるはず。
だから俺は光を準備した上で手首にはめた。
ドクン。
なんかつけたら脈うつような。
そしてその鼓動は胸をドンドン締め付けていく。
ドクン、ドクン、ドクン……
「光!」
俺は慌てて光を胸に当てる。
すると、スーッと胸や体の苦しみが消えた。
だが、このブレスレットが紫色に変色してしまう。
「なんだったんだ?」
ブレスレットを光に当てて透かしてみる。
特に何も起きないし、手でスリスリ擦って触り心地を確かめると……
俺は光を浴びて……
なんか変わったか?
「あ、そうだ仕事あった!」
洗濯の取り込みがあったので慌てて納屋を出る。
俺は村をスタスタ歩いて村長宅を向かった。
ここの村長はよく深くて人と人だと思わない。
たまにくる冒険者たちを性的な目で見て、たまに女性パーティが来ると眠らせて犯して舌とかを切ったら山賊に売ってしまうらしい。
こんな人とも思えないクズどもに従うのは癪だがまあ、仕方ない。
俺はいつも通り物置から籠を取ると麻の服を取り込んでいく。
そして畳んで村長にペコペコしながら渡すのだが。
「お、お前は誰だ!」
なんか俺を見たおっさんが指刺して叫んでる。
「どうかされました?」
「お、お前どこのよそ者だ!」
「え?」
話がどうやら噛み合わない。
だが俺は村長宅にある窓を見てそこに写った光景に驚いた。
「え……?」
そこに写っていたのは、黒髪で目つきの悪い悪人面のガキ。
そう前世の俺。
「は!?」
だが俺はおっさんが剣を持って襲ってきたので慌てて村の外へ行く。
村のはずれをとぼとぼ歩いた。
多分これは人生で初めての村の外だ。
だがなぜかこの村の奴らは俺を出そうとしなかったしなぁ。
そして歩くけど、あまり遠くへいかないように。
だけどなぜか、俺はこっちの方へ導かれている気がした。
変化といえばこの腕輪ぐらい。
聖域と呼ばれるところは迷って遭難することが大半なので、別の森の方へ目指す。
するとブレスレットからドクン、ドクンとまた脈が波打つ感覚が胸に襲う。
そしてそれはそれに近づくほど脈が激しくなった。
呼吸が苦しい。
辛うじて治癒の光で改善させる程度。
するとだった。
俺のような人族でもわかるような鉄のような臭い。
そう血の臭いだ。
さらに途切れながらだが、血の痕がわずかにある。
俺は不用心ながらも血の痕の先にある草むらへ足を運んだ。
草は俺の腰ほどあり、森だからか手入れがされていないのがよくわかる。
俺はそっと草をかき分ける。
すると、そこには真っ白とはいえないが白い毛並みの狐がいる。
残念なことに泥や血で汚れているようで少し小麦色だった。
それでも普通の狐に比べれば白いことは明白である。
「アルビノってやつか?」
俺はそっと狐によると、それに気づいた狐が俺に対して威嚇した。
「ガルルル!」
だが狐は立ち上がることもできず、しかも前足が一本切断されたようで、よくみると尾の方も切られて血肉が瘡蓋になって膿になっていた。
「痛むか?」
聞かなくてもわかることだが、だがこの狐は果たして善性なのか?それが唯一気になるところ。
すると俺のブレスレットと目の前の狐がまるで共鳴するかのように目の前で輝く。
輝きと言っても、紫で禍々しい。
するとだった。
俺の頭に記憶が流れる感じがする。
それは、普通の狐の間に生まれた白い狐について。
彼(彼女)は普通の狐の間に生まれたただの狐だった。
だが他と違うところと言えば、尾が九本で白い毛並み。
当初の狐は本当に真っ白だったみたいだった。
だが、親や群れから迫害され。
なんとか生き延びて辿りついた先では見せ物として捕獲され、挙句には貴族が目をつけて尾を切断したのだ。
それに怒り狂った狐は怒りで覚醒する。
そして天災とも言える災害を起こしたが、運悪く。
今代最高の剣士である剣聖に退治された。
その際に足を奪われ、命からがら生き延びたらしい。
俺の中で渦巻く村人たちへの憎しみ。
それが共鳴するかのように、狐を紫に染める。
俺はほっとけなかった。
普段は無償で助けるなんてごめんだが、こんな不幸にあったやつを無碍にするなんて俺にはできなかった。
俺はこいつの傷が深そうだが手から光を出す。
前より紫が濃くなった気がするけど、こいつを治すのにはちょうど良いと思える。
俺が光を当てた先から、足が修復され、綺麗に尾が生えそろう。
それに喜んだのか狐は俺にするよってきた。
「ははは、くすぐったいよ」
だけど俺にこんな好意を持ってくれるやつに出会って、なんだから心が救われている気がしていた。
すると、俺の手の内にある紋章が光を放つ。
実は村人にも黙っていたが、俺の手には謎の紋章があった。
すると、俺の目の前にシンプルな短剣が現れる。
それは特に飾りがないけれど、なんだか禍々しいオーラを放っていた。
剣を素振りしてみる。
だが俺は剣なんて振ったことないし、村でも煙たがるように触らせてくれなかった。
だがこうして男のロマンに触れるとちょっと嬉しい。
この剣は軽くて、刃先が見えないけれど売ればいい値段いくかもしれない。
そんな欲深いことを考えている中、狐が「グルルルル!」とうなり始めた。
「なんだ?」
俺は警戒して辺りを見回す。
だが見たことを後悔すべきか、それともやったと褒めるべきか。
そこには、毒々しい黄色と黒の縞模様の、大きな蜘蛛がいた。
「あ、ああああ……
ぽ、ポイズンスパイダー!?」
こいつは中級冒険者たちがパーティ組んでようやく倒せる魔物。
厄介なのが、蜘蛛だから糸を使うと思いきや、毒を使いその鋭利な前足で切り裂いてくる。
「わ、わわわ……」
俺は咄嗟で声も出ず、足がすくむ。
「ガルルル!」
だが狐は勇敢に俺の前に立つと、蜘蛛に威嚇した。
「だ、だめだ!」
すると狐は九本の尾を立たせると、その集まった尻尾の先から黒い禍々しい球体を出す。
それを高速で放つと、蜘蛛の前足を一本消し飛ばした。
(いまだ!)
俺は狐を抱えると即座に逃げ出した。
蜘蛛は痛みに悶えながら、その複眼で俺らを睨む。
「な、なあもう一発できるか?」
俺は狐に確認する。
だが狐は首を横に振った。
これは一発勝負の必殺技だったようだ。
俺は狐を担ぎ、足が傷めば回復で瞬時に治す。
そうして、足の腱が切れる度に治すことで、気持ちばかりか足が丈夫になってる気がしていた。
この治癒の光は、細胞分裂も活性化させるのか?
そんな疑問がよぎるけど、今は逃げることだけ集中する。
そしてようやく村についた。
だが村がなんだか騒がしい。
隠れて様子をみると、村の戦士団たちが武器を持っている。
そして中心にはリリナがおり、耳を澄ませるとあまりにも衝撃的な言葉を放つ。
「おいリリ、あのゴミに腕輪は渡せたか?」
「うん、おじさんが言った通りナナシに渡したよ?」
「そうか!さすがは俺の姪だ!
あのゴミ虫は今村を出ているはず。
だがそれがあの腕輪が災い狐を惹きつけるから。
それに腕輪の持ち主も狐に引きつけられて、今頃餌になってんじゃねーか?」
今の話を聞くと怒りが湧いてくる。
俺は最初から餌にするためにこの腕輪を渡されたってことか?
と言うより、この腕輪に宿る呪いで死ぬことを前提に渡したってことだ。
「それよりおじさん!
腕輪渡したら私を王都の魔法学校に通わせてくれるんだよね!」
「ああ、もちろんだ!
あの災い狐すら狩ってしまえば国から報奨金が出る!
それさえあれば村の子供みんな学校に行けるぜ!」
とこのゲスどもがゲラゲラ笑い、狐も俺にしがみつく力が強かった。
そうか俺たちは怒ってるんだ。
さて村人たちに復讐をどうするか悩んでいると、
ガサガサと村の弊を薙ぎ倒して現れるやつの登場で、村は大パニックになった。
「そんなバカな!
なぜポイズンスパイダーがいる!
しかもこいつは数100年生きた主クラスだぞ!」
蜘蛛は村で逃げ遅れた女子供をみると、毒を吐いて麻痺させたところ、前足の槍で突き刺してスナック感覚で咀嚼していく。
「ウォー!」
戦士団の一人が戦斧を振るうと、蜘蛛に振り下ろした。
だが、その甲殻の前に無謀だった。
斧がへし折れる。
戦士は、食われていた村女の旦那だった。
しかも子供も食われた。
だが俺はそれを見ても同情が湧かなかった。
戦士は前足で切り裂かれる。
そして戦士たちは、皆を逃すために立ち向かった。
逃げ出す女子供たち。
その中にはもちろんクズな村長の姿もある。
だがその中で、逃げ遅れてる子供がいる。
リリナだ。
リリナは足がすくんで、尿を漏らし恐怖のあまり震えていた。
「リリナ!」
俺は慌てて彼女の元へ駆ける。
彼女を介抱しようと、背筋をさすった時。
「いや!」
それは拒絶だった。
「リリナ?」
「ば、化け物!」
俺は彼女にこの世のものとは思えない顔で絶叫されると、手足を使い四つん這いながらも慌てて逃げていった。
「何があったんだ?」
俺は気づかなかった。
すると、俺の足が引っ張られる。
狐だった。
『あるじ〜』
「え?喋った!?」
狐が喋った。
まあ耳に聞こえるってよりは頭に響く感覚だけど。
「お前喋れるのか?」
『念話なの』
伝承では龍王クラスの魔物たちが意思疎通できると聞いたことがあったが、まさ目の前のこいつがそんな高位存在だったとは。
「それでどうしたんだ?」
『あるじはね〜怒った時にうちと共鳴して、魔の気が溢れてみたいなの〜』
「そうなのか?
まあそれは後でいいけど、今はこの蜘蛛をなんとかしないと!」
すると狐は尻尾をフリフリ呑気である。
『あるじ〜うちに剣見せてみるの!』
「剣ってこれか?」
俺は紋章から剣を召喚する。
『これにね〜うちの妖気とあるじの魔の気を込めるの!』
「気を込めるってどうするんだ?」
『あるじの手から出るぽわぽわかけるだけなの!』
「あー」と俺は手から治癒の光を出す。
だがその光はどこか黒い禍々しい感じを醸し出している。
『あ〜だいぶ魔の気篭ってるの!
あるじの怒りが最上まで来ちゃったんだね〜
さあ込めるの!』
狐は俺の剣に暗黒のオーラを込める。
そして俺は漆黒の光を剣に込めた。
するとだった。
俺の剣がかろうじて銀色だったのが、はっきり真っ黒になる。
さらに狐もどこか紫がかった黒の毛並みになる。
『むふふ……
これでうちは立派な妖魔獣になったの〜
今のうちなら剣聖だってフルボッコ……』
なんだか一人盛り上がってるが、だがこの変化した魔剣と呼ぶが、この剣の使い方がなんとなくわかる気がする。
血……血……。
この剣から新鮮な血が欲しいと訴えられる。
そこで既に死体だが、名も知らない戦士の腹に剣を突き刺した。
ドクン、ドクンと血を吸っていくのがわかる。
すると、死体は干からびて消滅して、他にも落ちている鋼の剣に突きつける。
すると鋼の剣を吸い込んでいくようで、俺の魔剣が輝いた。
【筋力の剛剣(小)】
剣に名称が表示される。
効果は子供の俺に大人ほどの筋力を付与する能力。
これなら蜘蛛に挑めるか?と思うが、これでは他の戦士レベルになっただけなので意味がない。
だからもっと死体を。
俺は死体に剣を突き刺して吸血していく。
これは死者への冒涜だが、今勝つためには仕方なかった。
「何をしてる!」
蜘蛛と戦っていたリリナの叔父が俺に気づいて罵声を浴びせる。
だが、そこで隙をつかれて蜘蛛の腹を突き刺され、風穴が空く。
そして、最後の戦士が死んだ。
俺はもれなく吸血した。
するとまた剣が輝く。
【筋力の剛剣(中】どうやら剣が進化したようだ。
能力も大型モンスターレベルの筋力を手に入れる。
体が軽い。
ポイズンスパイダーと俺は向かい合う。
俺は我流だが魔剣を構える。
一方ポイズンスパイダーの方は前足が一本なく、片方だけが武器。
そしてたまに吐ける毒が切り札ってとこだろう。
俺は駆けた。
剣を振りかぶる。
そして振り下ろすも、ポイズンスパイダーも反応してかわして毒を吐く。
俺は肩に毒を食らって溶けたけれど、すぐさま光で治療する。
そして後ろ足に振り下ろす。
だが、構えが悪いのか足した傷にならない。
さすが素人ってとこだ。
だが力はポイズンスパイダーを上回るので俺は質がだめなら数で応戦する。
何度も打ちつけて、しがみついては剣を振るう。
すると、ポイズンスパイダーの外殻にヒビが入り、そこに狙って剣を刺した。
そう吸血である。
俺の剣に血を吸われるスパイダーは大暴れする。
それでも俺はしがみつき、必死に剣を抉る。
そしてスパイダーは暴れていたが、力尽きたようで、ばたりとひれ伏せた。
【蜘蛛の毒剣(中)】
剛剣とはまた別の剣を手に入れた。
能力は麻痺やアルカリ性の毒を出す。
特に経験値って概念はないけれど、俺は人生で最初にモンスターを討伐した。
そして一見落着としたいとこだが、村人たちは帰ってきた。
そして蜘蛛の死体と剣を持つ俺。
英雄か?と称える雰囲気になったけれど、それをぶち壊すかのように、隠れていた戦士の一人が俺に罵声を浴びせる。
「この、ひとでなし!
アリザックにレイモンド、イジルにデミン!
お前はみんなの死体を食ったんだ!
この吸血鬼が!」
そして周囲がざわついた。
確かに周りには戦士の死体がない。
だけど外殻だけで中身がない蜘蛛と、死体でまた消えていないものは数体あり、俺の非道を決定つけるのには申し分なかった。
「申開きはあるか?クズよ」
誰にものを言ってるかこのクズ村長は。
だけど圧倒的に俺は不利なのはみて当然だった。
「化け物!」
村人が俺に石を投げる。
本来の俺ならまあ笑って済ませた。
だけど、石の一つは額に当たったことでついに俺の堪忍袋が切れた。
「毒剣よ」
俺は蜘蛛の毒剣で毒を生成してばら撒く。
すると数人に当たったようで、体が麻痺して動けない。
そして俺は罵声を浴びせた村人どもの足を剛剣で切り裂いた。
「ぎゃー」
村人たちは痛みで悶える。
「そういえばよ?
この村に奴隷がいたらしいな?」
「そ、それがなんだってんだ!
ぎゃー!」
「まあ俺が聞きたいのはよ……
その奴隷が妊娠して最後子供産んで死んだらしな?」
そう俺は俺に手を出す女衆より村にいた性奴隷について情報を得ていた。
「その奴隷ってのがもしかしたら俺の母親か?」
そう単純な疑問だ。
俺はよそ者と言われる所以。
それは俺の親が奴隷だったこと。
そして俺を産んだ際に死んだから母はいない。
だから奴隷の子だから俺は奴隷……
こいつらが憎い。
だからか、俺は手を緩めず拷問していった。
例え死にかけても治療すればいい。
そして一通り気が晴れるまで拷問を続けていたのだが、俺は母の復讐を成し遂げたと歓喜していたところ。
それを台無しにするように村長が口を開く。
「ふひ、お前の言う通り確かにこの村には性奴隷がいた。
だがな?
そいつはお前の親じゃない!
いひひひ!」
村長は拷問でおかしくなっているのもあったが、だけど俺が辿り着いた真実を真っ向から否定する。
「そんなわけあるか?
第一!
俺はよそ者だって言ってただろう!
俺はその奴隷の子じゃないなら一体誰の子だ!」
まあこの村では冒険者を罠にかけて犯す風習がある。
だからきっと俺の親もその奴隷落ちした冒険者の一人なのかもしれない。
「いひひひひ、残念だったなぁ?
お前の両親は今も健在だよ!
それが誰かは墓まで持っていくけどよ……
残念だったなぁ……」
その言葉を最後に村長は呼途切れた。
俺の両親が健在?
一体どこへ?
とりあえず、拷問を続けて村人から聞き出すことに。
だが、結局真相を知るものは蜘蛛との戦いで死んでいた。
そして拷問を半日ほど続けると、村人たちは涎を垂らし意識が朦朧している。
もう既にこいつらは廃人なのだ。
「リリナ?」
「ひぃ!」
俺は打算的だったとしても仲良くしてくれたリリナだけは拷問しなかった。
「ば、化け物!」
だがもう既にそこには絶対的な拒絶しか存在しておらず、俺は本当の意味で孤独になった。
だが俺のスボンの裾を引っ張るものが。
「狐……」
『あるじ〜』
思わず俺はこいつを抱きしめた。
涙が溢れた。
あれだけ復讐したいって思った奴らでも殺すってことに何も躊躇いもなかった俺が怖かった。
ドス黒い感情に支配されたけど、俺の親はなんで俺を捨てたんだ。
これなら死んでいた方がまだマシだ。
『あるじ〜名前ちょうだい?』
「う?ん……」
そんな俺を励ますんだか、空気読めないんだが。
だけどこいつの能天気さになんか救われた気がした。
「お前はタマモだ」
それは前世の狐の大妖怪に関する名前。
『うん!タマモなの〜!』
タマモは俺の腕の中で大喜びだ。
「タマモ、一緒に来るか?」
『いく〜!』
俺は生まれ育った憎きこの村を出ることにする。
そして俺の本当の親を探して、そしてなぜ俺を捨てたのか?
一発殴ってやるつもりだが、俺はようやく前を踏めたような気がした。




