第2話 階級
「さて…学園に来たはいいんだけど…」
ギュルルル…
「お腹減った〜…叶音〜食べ物無い〜?」
僕は朝っぱらからそんな事を言う。
今日はとてもお腹が減っている。
だから何か持ってないか叶音に聞いたんだけど…
「今日のお昼ご飯しか持ってないんだけど!?」
何も…無かった…。
「ちゃんとご飯食べたの?」と叶音に聞かれた。
もちろん答えはノーだ。
でなけきゃ学校来た時点でお腹減ったなんて言わない。
頼む。どうにか12時45分まで耐えてくれ僕の腹。
いや…いっその事早弁…いやダメだ。午後死ぬ。
とにかく今から僕は空腹と戦いながら午前中を
過ごさなくてはならないようだ。別にそれは構わない。
問題はこっちだ。
「あ〜…退屈…」
空腹の時はとにかく退屈。
3分が30分に見えてしまう。
キーンコーンカーンコーン…
時計が8時45分を示した。
1限目は学活。どうやら先生が
改めて自己紹介をするらしい。
担任になったアグネス先生が話し始める。
「おはよう諸君?
昨日は軽く話すだけで終わってしまったが、
今日ははっきり自己紹介しようと思う。
私はアグネス。化学の担当だ。趣味はもちろん研究さ。
君達にはこれから、私の優秀なラッ…ゴホッゲホッ…
…生徒として日常生活を送って貰う。
よろしく頼むよ。何か質問はあるかい?」
今、ラットって言おうとしたよな絶対。
俺達は実験材料か?
まぁ聞かなかった事にしようそうしよう。
とりあえず適当に質問してみようと挙手する。
「では新城くん。」
「はい。先生の好きな動物はなんですか?」
何の変哲もない、オーソドックスな質問だ。
特に意味は無い。
「私が好きなのはモルモットさ。
小さくて可愛いからねぇ。」
不敵な笑みを浮かべてそう言うアグネス先生。
…それ絶対建前だよね!?
本音は絶対「いい実験材料になるから」だよね!?
みんなはそれに共感したりしているが、
あまり深堀しないでおこう。
自分が研究対象になるのはゴメンだ。
「他に質問はあるかい?」
「はい。」
「では安城くん。」
「先生の好きな飲み物はなんですか?」
次は叶音が質問した。
「飲み物はそうだねぇ…紅茶かな。
ちなみに苦手なのはコーヒーさ。
苦い物は苦手でねぇ。」
紅茶か。これは予想外だった。
ダンディーな先生かと思ったら全然違った。
とまぁ、こんな感じで楽しい1限目が過ぎていったので
僕の空腹はしばらく大丈夫そうだ。
2〜3限目も学活…
というか今日はオール学活で終わるようだ。
「では諸君。2限目と3限目は、階級付けだ。
これはみんなの成績の基準となるからねぇ。
きっちり見極めさせてもらうよ。」
ここに来て緊張してきた。階級付け?
そんなの聞いてないぞ。
いや、正確には聞いていなかったのだが。
「方法は至って簡単さ、みんなの能力を見て、
性能や汎用性から見極めさせてもらう。
階級は上からY、S、A、B、C、D、E、F。
その中にプラスマイナスがついて
さらに細かく分けられる。
これは成果があれば自ずと上がっていく。
皆の中からA-以上が出ることはそう多くないねぇ。
YやSなんかが出たとなればそれはもう神に恵まれた
逸材としか言いようがないさ。」
へ〜。こんなシステムがあるのか…
みんなの能力も知りたい所だし、面白そうだ。
…待てよ?
「よーし!良い結果出せるように頑張ろう!
ね?新城くん!」
「君は頑張らなくていいから!ホントに!」
隣で叶音が意気込んでいるが、
頼むからあの技だけは使うなよ?
あの技なんか使っちゃったら
このクラスの全員どころかこの学園の生徒全員が
校舎ごと消し飛んじゃうから!
「え?なんか僕危ない?」
「危ないよ!」
「あ〜。
君もしかして『サンシャイン・ストライク』の事
心配してるでしょ。大丈夫。
今回はちゃんと大きさと火力調整するから。」
「本当かなぁ…」
ニッコリしているけどほんと頼むよ?
下手したらこの学校終わりかねないから!
「では諸君。
個別でいいから闘技場に移動してくれたまえ。
場所は昨日の探索である程度理解しているだろう?」
アグネス先生に指示され、僕達は闘技場に移動した。
闘技場はコロッセオに近い形状の建物。
校舎の尖塔の次に目立つ建物だ。
前に来た時は高等部の先輩達が模擬戦をしていたが、
今回はダミー人形のようなものが5体程置いてある。
「では話そう。
これから諸君には、私の後ろにあるロボットと
戦ってもらう。ロボットは剣とビームを
装備しているから、遠距離戦にも短距離戦にも
対応可能。蓄積されたデータで自由自在に動き回るぞ。
強さはF+程度。制限時間は10分。
その間は好きに戦ってもらって構わない。
思う存分戦ってくれたまえ。
では、始めよう。出席番号順に
リングごとに5列に別れてくれ。」
先生の指示を聞き、言われた通りに並ぶ。
「では、先頭の者は前に出て
審査員に名前と番号を言いたまえ。」
「1番!!安城叶音です!!お願いします!!」
叶音が一際デカイ声でそう言い、
それに続いて他の人も自分の名前を言う。
「…では…開始!」
その合図でそれぞれの戦闘が始まる。
「『炎』。」
叶音が一言そう呟くと同時に彼の左手には
燃える刀が握られていた。
「…行きます!!」
その言葉と同時に両者ともに動き出す。
激しく刀がぶつかり合う音。
ゴォゴォと炎が燃える音。
「炎舞!!」
叶音がそう叫ぶと共にロボットの周りで
無数の閃光が走る。次の瞬間にはロボットに
無数の傷跡と火傷跡が出来ていた。
狼狽えるも刀を縦に
振り下ろすロボット。
「『晴天朱雀』。」
そう言いながら左、日射の方向に飛び上がる叶音。
手に握られているのは今は刀ではなく、燃える弓。
「日本晴。」
次の瞬間、ロボットの胸部には三本の燃える矢。
その矢は尚も燃え続け、ロボットを焼いていく。
そしてそこにとどめを刺すかのように
「はぁっ!!」
着地した叶音が火球を投げ込んだ。
ロボットはそれを刀で受け止めようとしたが、
それは大きな間違いだった。
ボォォォンッ!!
刀に火球が触れた瞬間に爆発音と共にロボットの体が
後方斜め上に吹っ飛んだ。数秒してから
ゴシャッ!!
という鈍い音。その音の方を見ると、
ロボットが首をゴキッと曲げて逆さに
地面に突っ込んで体を仰け反らせていた。
人間だったら脊髄損傷ぐらいのレベルだろうか。
どうやら首にあった頭部のAIと可動部を繋ぐ
配線が逝ったらしく、これ以上の戦闘は難しいだろう。
「リングA!!ロボット、戦闘不能!!」
「経過時間は7分半か…上出来と言っていいだろうが、 今後の成長を期待してみようかねぇ。安城叶音、C+。」
「ありがとうございました!」
いきなりの高得点。
今年の1年の中ではダントツの1番ではなかろうか。
これは僕も頑張らなくては…
20分が経ち、今度は僕の番だ。
「新城くんガンバ!」
叶音も応援してくれている。
…頑張ら…ないと…
「じゅ…11番…新城勝守です…」
やや緊張した声になってしまった…
いや違う…武者震いってやつだ!!きっとそうだ!!
うん!!そういうことにしよう!!
なんて自分を誤魔化しているうちに
戦闘は始まってしまった…
「では、開始!!」
仕方ない…やるしかないか…
「…金剛石…『作成』!!」
まずは『創作』。
ダイヤモンドを生成して武器を作成する。
え?なんでダイヤモンドかって?
ダイヤモンドの硬さをご存知ない?
某サバイバルゲームでも
2番目ぐらいの強さだっただろ?
まぁそういう事だ。
さて出来た。青く輝く立派な両手剣だ。
まぁ、これで上手く立ち回れるかな?
「わっ。」
などと思ってたらロボットが斬りかかってきた。
すかさず両手剣を振り回して対応する。
ロボットも少し危ないと察したのか距離をとった。
そして僕が構え直した所で再度向かってきた。
「うおっ!!」
クワァッキィィィンッ!!
思わず目をつぶって両手剣を横に薙ぎ払った。
なんかすごく良い音が聞こえた気がしたが
気のせいだろうか。
「あっぶね〜…死にかけたわ…
…あれ?ロボットは?」
「リングA!!ロボット、場外に飛んで行ったことにより
戦闘の続行不可!!」
え?場外に?いや…え?…あ。
やっと理解した。簡単に言ってしまうと僕は、
『ロボットで人間ホームランを打ってしまった。』
という事だ。さっきのあのいい音は
そういう事だったのか…
「時間は…9分か…うーん。
能力の汎用性は良いんだが、
武器の生成に時間がかかり過ぎだねぇ。
今後はそれをいかに早くするかが課題だねぇ。
ただ能力は悪くなかったよ。新城勝守。D+。」
うーん。そこは僕も気にしてた課題だ。
武器の生成が遅すぎるんだよね。
まぁ位置づけとしては叶音のちょっと下ぐらいか。
まぁ、これから良くしていけばいい。
ちなみに他の人は平均がだいたいE-ぐらい。
…あれ?案外いい線いってる?
そんなこんなでランクを授かり、
少し自信を持てた僕であった…
「あ〜…やっとご飯だ〜…」
「ご愁傷さまだったね。」
「ホントそれだよ…今度から朝飯しっかり食べよ…
ま、とりあえずいただくか!!」
「「いただきますっ!」」
お昼休憩の時間になったので、持参していた弁当を
持ってきて食べ始める。今日はサンドイッチ。
ランチタイムには持ってこいの料理だ。
そういえば、叶音ってどんなお弁当なんだろ…?
「ウグッ!?キャラ弁っ!?」
チラッと叶音の方を見て絶句した。
中に入っていたのは鳥五目の炊き込みご飯の上をベーコンや海苔で飾り付けて作られた、
美味しそうな茶トラ猫のキャラ弁だった。
…叶音…家庭科のセンス良すぎないか?
「うーん…食べるの勿体ないなぁ…」パクッ
本人もこの反応。最初に猫から行くのは
ちょっと残念だと思ったのか周りに飾り付けられた
りんごの木を模したのであろう野菜などを食べている。
栄養バランスまで完璧じゃないか。
逆に苦手な事を教えて欲しいくらいだよ。
「ごちそうさまでした!!」
「はっや!?」
などと話しているウチに叶音はペロッと
食べ切ってしまった。さっきまで食べるの勿体ないとか
言って拒んでたのはなんだったんだ一体。
そんな事を話してた時の事だ。
ピンポンパンポーン♪
「お昼休憩中に失礼する。生徒会担当のルドルフだ。
1年A組の安城くんと新城くんは
帰りのホームルーム後に生徒会室まで来てほしい。
重要な話がある。では、失礼する。」
ピンポンパンポーン♪
生徒会担当のルドルフ先生からそんな放送があった。
「なんか…呼ばれたけど…」
「まぁ、とりあえず行ってみればいいんじゃない?」
「そうだね。そうしようか。」
帰りのホームルーム後、僕達はその話とやらの為に
生徒会室へと歩みを進めていった。
《キャラクター紹介》
名前:新城 勝守
仮名:ナシ
種族:人間
性別:男
所属:夜月学園
能力:創作
木材から金剛石まで、ありとあらゆる物質を生成してそれらを組み合わせて道具を制作する能力。
技:不明
戦闘が増える度にこことは別のキャラ紹介で追加予定。
好物:肉とスナック菓子が好きらしい
特技:ナシ
その他の情報
今年から学園に入学した生徒。同期である叶音と共に過ごすことが多い。実は幽霊が苦手だったりする。




