第19話 追跡、そして帰宅
「…逃げんじゃねぇよコラ!!」
「ちょ!姉ちゃん!!」
どうする?追うに決まってんだろ!!そんな感じで後先考えずに飛び降りる。もちろんそのまま急降下したら桃の役目を終わらせちまう。死の間際ギリギリだからか知らねぇが、景色がゆっくりと動いていく。
「…あそこだな」
霊感と視覚でヤツを探す。透明化してるようだが、目を凝らしで見ると、小石が時折何かに蹴っ飛ばされたかのようにひとりでに転がる。僅かに霊感もある。それを視認すると同時に、俺は体勢を変えてビルに足をつけ、ズザザザッと降りながら足に電気と力を込める。
「行くぜ…!!オラァ!!」
「あっ!!ちょ!!姉ちゃん!!」
そして思いっきり、その壁面を蹴っ飛ばす!!
電磁砲のようなスピードでヤツへ追いつく!!それしかねぇ!!
が…やっぱり視認出来ねぇってのは厳しいな。
待てよ…?
「…」
「ゼェ…ハァ…待っ…てよ…」
…なるほどな。分かった。
息切れしてる桃には悪いがまだ走ってもらうぞ。
「そこだな…!!バレバレだわアホたぁけぇ!!」
「まだ走るの!?」
オレは一直線に見えねぇヤツの方へ向かっていく。何で察知したって?餃子食った事はあるか?会社員は特に、餃子食った後はニンニクの臭いを気にするだろ?それと同じだ。人を食った後には、独特の血なまぐささが残る!!
「チッ…」バッ
「待てやコラァ!!」
「姉ちゃん!!深追いはやめた方が!!」
オレは追い回すぜ?絶対刈り取る!!
とまぁ、そんな感じで借金取りの如く追い回した訳なんだが…
「…!!」
ヤツの先にはもう飛び移れるビルなんて無ぇ…
「追いかけっこは終いだ。」
「だっ…断罪を受けなさい!!ゼェ…ハァ…」
やっと追い詰めた。桃はめっちゃ息切れしてるな…。走らせて悪かった。が、コレでチェックメイト。刑事ドラマでありがちなシーンだ。あとは分かるな?
「ま…待て…わ…分かったき。消滅はさせんでくれんがか…こっちにも事情があるき。」
手を挙げて降参するヤツ。まぁ、抵抗されて街ぶっ壊されるのは困る。とりあえず抑えとくか…
「そのまま膝まづけ。」
「武器とか危険物はこっちに。」
と、警官の手を挙げろ感覚でそういう。
「さすがにそれはちっくと…」
まぁ、嫌っていうだろうな。見るからにサムライっぽい格好だし、大切な刀なんだろ。
「じゃあ武器横に置くだけでいいから。一応サムライの作法でしょ?」
「人斬りじゃがな。」
まぁ、これでいいか。抵抗する気はなさげだし。
「それで、なんで人を殺ってまで食料得ようとしたんだ?」
「生前からちょくちょく…」
と言った感じで事情聴取(?)。…って待て、生前からやってたって事はコイツ死んだ理由って切腹か首取られて川に晒されたかのどっちかだよな?
「まぁ、人斬りだったからね。」
「それ、反省してねぇって事じゃね?」
まぁ、納得はする。が、同時に反省しろやという感じだ。
「は…反省しちょる…」
「目ぇ見て話せやコラ。」
「その顔、反省してないね?」
若干高圧力かけながらそう言う。絶対ウソだろ。目が泳いでるぞ(人は嘘の時目が泳ぐのだとか)。
「あー…今回は見逃しとうせ?」
おいおい…命乞いかよ。まぁ、今回はな…
「ったく…」
「今回だけね。」
「「と、言うとでも思った?」」
「お前、再犯して見逃せはないだろ。」
「オマケに人を沢山殺して…」
「「よし。極刑で。」」
見逃すと思ったか?1回断罪食らってるのに再犯で見逃せは救いようないぞ?
「は?!ま、待っとうせ!!消滅だけは嫌じゃ!!さ、最近恋人もできたばかりで消えとうないきにっ!!」
ヤツは腕を振ってそう言ってきた。まぁ、気持ちは分からんでもない。…まぁ、何かやらかすって事はそれを背負う覚悟があるって事だとオレは思っている。
「…ハァ…オレらもそこまで鬼じゃぁねぇ。じゃあそれに報いる事をなんかしらやってみろ。」
「そしたら許す。」
とりあえずそうとだけ言っておく。
…なんでコイツこんなに汗かいてるんだ?運動したとはいえここまでは出ねぇぞ?
「むくっ…?!………。」
報いる事をやってみろ。ワシ、鬼塚於慕露は今までにそんな事をした事がない。生前も、今も。それに生前など、学習面であまり頭が回らなかったワシにはそんな事を言われても「戦う」、「逃げる」、「報いる事をなんかする」しか頭に思い浮かばない。しかし、逃げてもコイツらは追ってくる。体力的にはまだまだ行けるが…ワシもここまでか…
「…チッ」
舌打ちをしながらワシは鞭打ちや火炙りを受けるつもりで腕を前に出した。が、それは見事に裏切られる。
「簡単な事でいいのさ。重荷を運ぶのを手伝うだけでも十分な貢献だぞ?」
「さ、立った立った。」
二人は笑いながらそう手を差し伸べて来よった。
思わずズッコケてしまった。
「ん?どうした?急にズッコケて。」
「まさかむち打ちの刑とかそっち系を…。」
「あぁ…」
急にズッコケたヤツを見てオレたちはそう話す。普通に何か人助けとかしろって意味だったんだが?
「…」プルプル
ヤツは震えている。泣いているのかなんなのか…とりあえず恐ろしい事覚悟してたんだろうな…
「いや、俺らや他の人の役に立つ事をしてみろって意味だったんだg…」
そう話していた時だった。
「ワシがなぁぁぁぁぁ?!決死の覚悟でなぁぁぁぁぁ?!」
「オウッ…オウッ」
ヤツがなんかキレてオレの事めっちゃ揺さぶってきた。オエッ…吐きそう。そんなオレを見て桃が
「そんなに拷問がよかった?」
と絶対違うって事を聞いてくる。もちろん…
「違うわッ!!」バッ
だろうな。自ら拷問を選ぶヤツなんて相当なMしかいねぇ。何はともあれやっと離れられた。
「オフッ…オレらも拷問を想定してるとは思ってなかったんだよ…」
となんか謝る。その間もヤツは激おこプンプン丸だ。
「お前可愛いな。」
思わずそう言ってしまう。なんて言うか…可愛いって言うか…怒った幼稚園児見たいって言うか…すごく可愛い。
そんな感じがした。
「おぉん!?」
やべ、さらに怒らしちまった。
「まぁ、とりあえずなんかやってみろ。」
そうとだけ言っておく。とにかくトライが大事だ。
「チッ…家に送っちゃるき。」
「お。じゃあ頼むわ。」
「(もうちょっとだけお話ししてたいし。)」
とまぁ、そんな感じで一緒に帰る事になった。
ヤツと話してたらあっという間に家に着いた。
「ありがとな。」
「ね…姉ちゃん…」
「んぁ?」
ヤツに礼を言っていたら桃がオオカミと対峙した子羊みたいな感じでそう言う。桃が指を指す先に人影。
「2人ともおかえり〜。」
「あ。」
叶音だ…なんかいつにも増してめっちゃニコニコで階段降りてきて
「ご飯は?」
と聞いてくる。
「まだだ…」
と恐る恐るそう言う。
「じゃあお疲れ様!!今晩は飯抜き!!」
「「そんなぁぁぁぁぁっ!!」」
嗚呼、絶望。叶音の飯が食えないは最悪すぎる。
オレたちは膝から崩れ落ちた。




