第17話 奇妙な事件
真夜中、とあるタワマンの一室にて…
チャムチャムチャムチャム…
と何かを食べる音が響き渡る。その部屋は血塗れでリビングであろう部屋の空間に一人の古風な男…の幽霊が正座している。男の前には言葉では言いあらせないほど無惨になった女性の内蔵や、胎児だろうか。産まれる前であったであろう子供がアチコチに転がっていた。
「こじゃんと美味かったき。」
土佐弁のような言葉で男はそう呟くと、その肉の塊を窓の外へ投げ捨て、自分も窓から飛び降りて闇の中へと消えていった…
翌日の昼…
「次のニュースです。昨晩、夜月市にある50階建てのタワーマンションから、妊婦の遺体が落ちてくる事件が起こりました。警察によりますと、遺体には刃物で切られたような切り跡の他、背中に厚底の靴で踏みつけられたようなアザがあったとの事です。また、奇妙な事に妊婦の解剖をした結果、お腹の中の胎児が綺麗に無くなっていたとの事。ネットでは「新手の殺人鬼?」「こわっ。でもなんで胎児?」「最近物騒だったけどこの事件は前代未聞だな。」と騒がれています。未だに犯人は見つかっておらず、警察も警戒を強めて捜索しています…」
という恐ろしげなニュースで、学園は大騒ぎとなった。
「へぇ…奇妙な出来事もあるもんだね。」
「これ、そのうち全ての女性がやられるんじゃ?」
中庭で過ごしていた僕はスマホに流れたそれを見てそう呟き、叶音も頷く。
「怖ぇもんだぜ…全く…」
「パッ(そうだね。)」
桃花台先輩達も頷く。ってちょっと待て。一番可能性のある二人がなんで他人事なの!?
「先輩達も危ないですって!!他人事ひとごとではありませんよ!?」
「んぁ?まぁ大丈夫だろ。そう簡単に狙われねぇって。そもそもオレら未婚だし。」
「あ。」
ああ、そっか。被害者が妊婦中心の事件だから学生には関係ないのか。…あるけどね!
「まぁ、気をつけてくださいよ?」
「心配すんなって。大丈夫だ。」
「まぁ、僕や桃がついてるからね。」
「…そっちの方が(犯人が)心配だ。」
ニッコニコで叶音がそう言ってるが、間違えてもアレは使わないでよ?核兵器みたいなもんだから。
そんな事を話してると、先輩がスマホを見始めた。
「悪ぃ。今日は途中から別々になりそうだ。」
「姉ちゃんまさか…」
「ああ。」
スマホを見たあとに、先輩は叶音を見てそう話す。
なんだろう。見えてないのに桃の方からアワワという感じが伝わってくる。
「先輩…?」
「今日はGIだ。見逃せねぇよ。」
「GI…?」
「パッ(説明するね〜。結論から言うと、姉ちゃん競馬好きで賭博癖。競馬にはGI、GII、GIIIって感じで格付けがされててね。GIはその最上位のレース。今日やるレースは夜開催だから途中でバイバイってこと。」
「…え?」
長々と説明が書いてあったけどとんでもない事書いてあったぞ?賭博癖?ああ…どうやら僕はとんでもない先輩と関わりを持ってしまったようだ…
「賭けるお金はあるの?」
「十分だ。」
「…いつもお仕事頑張ってくれてるし、今日ぐらいはね?ただ、9時までには帰ってきてよ?」
「あいよ。」
おい待て。なんで了承してるんだ。…さてはアレだな?先輩と仲良くなった経緯に競馬入ってるな?
まぁ、ルールは守って…ないけどね!!こういうのはアレだ。「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」ってヤツだな。そういう事にしておこう!!うん!!
「ま、そういう事だ。…そろそろ戻れよ?遅れるぞ?」
「あっ!!やばっ!叶音行くよ!」
「やばーっ。」
先輩にそう指摘され、教室へ戻る先輩を見送りつつ、僕達は授業に戻っていった。…なんだろう、先輩の感じなんか変わったな…前はもっとミステリアスな感じだったのに…
「いや〜今日もガッポリだ。」
「それはいいけどさぁ…この時間で大丈夫なの?」
夜8時。ナイトレースで大勝利してガッツリ稼いだオレ達は帰路についていた。一応電車1本見逃しても間に合う時間だ。問題は無い。…アレがなければな。
「そういや、この辺だったよな?殺人事件の場所。」
「あ〜昼の?…もしかしてビビってるの?」
「んな訳ねぇだろ。」
そんな話をしていた時の事だった。
ドサッ!!
「ヒギャァァァァァ!?死体ィィィィィ!!」
桃がそんな声を上げた。それも当然だ。なんせ…
昼にニュースで見た出来事がそのまま起こったんだからな。
「即死か…」
「どうしよどうしよ!?」
「一旦落ち着け…どうもこうも…やるしかねぇだろ。
この上だな…」
と言いながらトントンとジャンプする小牧。本気と書いてマジと読む。そんな顔をしている小牧を見て桃も覚悟を決める。
「行くぞ!!」
スパークを散らしながら一気にビルの階段を駆け上がっていく。エレベーター使えばいいのにとも思うだろうが、これには理由がある。
「…だんだん強くなって来やがった…
…!!ここだ!」
と、30階ぐらいまで登った所で、小牧は急ブレーキをかけて階段から廊下(?)へ出る。
すぐに駆け出してとある部屋の前で止まり。
「…(ここだな)」
「(ゼェ…ゼェ…気をつけて…敵がいるかも…)」
「(分かってる。さっきからビリビリと感じてるからな…異様な霊気を。)」
二人の脳内で話しながら、小牧はドアにそっと手をかけて開ける。桃は息切れしているようだ。
「…!!(こりゃ酷い…生ゴミみてぇな臭いだ…)」
「…!!(誰かいる。)」
鼻がひん曲がりそうな血生臭さを感じつつ、二人はそこに居る男の背に目をやる。
チャムチャムチャムチャム…
「…(なんか嫌な予感がするなァ…)」
「…(アワワワワ)」
部屋には何かを食べる音が響いている。
その音を聞いて二人は相当やばい事だというのを理解した。
次の瞬間…
チャムチャム…クルッ
「あ。」
「あ。」
その男が振り向き、二人の方を見た。
二人は今、凶悪犯の姿を目にした。




