第12話 事情聴取
生徒会室にて、会長の帝信名は、チラと時計を見つつ、近衛に声をかける。
「よし…竹千代が居ないが始めるぞ。」
「了解です。起立!!気をつけ!!礼!!」
『お願いします!!』
「着席!!」
副会長、誠先輩による号令が響き、それに合わせて挨拶。いつもの生徒会室の風景だ。
「では本題に〜…」
「失礼します!!」ドガン!!
『!?』
そんなピリつくような場を、聞き覚えのあるバカでかい声と壊れそうなくらいドアが勢いよく開く音がブチ破る。
「竹千代、ドアは丁寧に扱いなさい。」
「あ…すみません…」
入ってきたのは竹千代先輩。なんか緊迫した感じだったけど信名会長に注意されて落ち着いたようだ。
「えっと?竹千代さんは今日、風紀委員の仕事があったはずでは?どうしてここに?」
「あっ!その事なんすけどね。
すみませ〜ん入ってきて欲しいッス。」
「…失礼します。」
そう言われて入ってきたのは、僕らと同い年ぐらいの少女。顔立ちなどからして欧米人っぽい。修道士っぽい服を着てるけどなんかボロボロだ。
「この子が校門付近で倒れてまして。訳ありっぽかったから連れてきたってことです。」
「なるほど…君、名前は?」
「モメント・ペルフェクト・メモリーズ…です。長すぎるのでペルと呼んでください。」
少女は静かにそう話した。なにかに怯えているように。きっとここに来るまでに何かあったのだろう。
「ならそう呼ばせてもらおう。ペルさん。ここに来るまでに何があったのか、教えてもらえるかな?」
私、モメントは今、生徒会室というとてもピリピリしている場所にいる。まぁ、学園の最高組織だからだろう。目の前に居る女性は、優しげながらもキリッとした雰囲気を出している。この人達なら任せられる…
「私は…ドイツ人の両親の間に生まれました。私には完全記憶能力なる物があり、幼少期からの思い出もずっと残っています…ですがそれが発端で、両親は放火で殺害され、私は追われる身になりました。怪しい人達に追いかけられながら、やっと辿り着いたのが、ココという事です。」
そう。私には完全記憶能力というものがあった。一度見聞したことはなんでも覚える能力…それが、私が追われる身となった理由。
「フム…なるほどな。…ルドルフ先生。この子を保護してやりたいのですが…可能ですか?」
「いいとも。そうしてこの学園に来た者など山ほどいる。彼女もその一人さ。」
「ありがとうございます。…という訳だ。彼女を保護してやりたいんだが…あいにく寮と言うものがない。」
「え…?」
信名さんは私を保護すると約束してくれたけど…私はどこに住めばいいの…?だけど、問題はなかったみたい。
「あの、会長。一つ提案が。」
「どうした皇。」
「以前、ひょんな事から安城クンの家にお邪魔させて貰ったんだけど…結構広々としていてね。」
「僕の家…ですか?」
皇と呼ばれた先輩がそう提案すると共に、赤毛でヘッドホンをした私と同じくらいの男の子がそう言う。
「確かに、あそこは過ごしやすかったわね…軽い宴会ぐらいは余裕で出来そうだったわ。」
続けて2つ隣に座っていた水色ロングヘアの女性もそう言う。名札には女城と書いてある。
「フム…。安城、君の家はそんなに広いのか?」
「はい。神社の社務所をお借りしてる形にはなりますが、確かに広いです。」
「そうか。…安城、君にもう一つ仕事を頼もう。ペルのSPをやってくれ。頼めるか?」
と言った具合に話が進んでいく。信名さんの話を聞いた後、安城さんはコチラを見て
「クレイジーな先輩と幽霊の姉妹が一緒だけど良い?」
と聞いてきた。何故か竹千代さんは滝のような汗を流している。
「保護してもらえるだけありがたいものよ。大丈夫だわ。」
保護して貰っといて文句なんて言えない。私はOKした。
「成立だな。コチラでもやれる限りを尽くそう。
では安城。ペルさんとの件で色々あるだろうから、今日は帰ってくれて構わない。」
「じゃあ、お言葉に甘えます。ペルさん。行きますよ。」
「…」コクリ
私は安城さんについて行って、生徒会室を後にした。
「僕は安城叶音だよ。改めてよろしく。」
「モメント・ペルフェクト・メモリーズです。気軽にペルと呼んでください。」
「ハハハ。そんなピシッとしなくてもいいよ。これから一緒に生活してくわけだし。」
「…そうね。」
学園の校門から出た頃には雨はやんでおり、叶音さんは気の抜けたようにそう話した。おそらく、あのピシッとした感じは生徒会室だけなのだろう。案外接しやすい。
そう話しながら歩いていると、先程も通った鳴川駅に着いた。
「君、財布はある?」
「いえ?」
「そっか。じゃあ今日の電車賃は僕が。」
「あ、ありがとう。」
どうやらここからは電車移動らしく、叶音さんはそう聞いたあと、私の分の切符も買ってくれた。すぐに改札を通って跨線橋を渡り、1、2番線に出る。2番線には二両編成の真っ赤っかな普通電車が止まっているが、叶音さんは1番線に向かった。
「まもなく、1番線に電車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください。東山岬方面の、急行、豊坂行きです。左右、智流、新安砦、東山岬の順に停車します。電車は6両です。乗車位置は丸印の、2番から7番です。」
ヒュゥゥゥゥゥ…ヒュルルルルルオーーーン…
そんなアナウンスと共に銀の車体に赤い帯を巻いた電車が変わった音を立てて停車する。後方の2両はまた別の車両らしい。叶音さんはその急行に乗ったので私もそれに乗る。
プシー…ッシュゥゥゥゥ…
ヒュゥゥゥゥゥ…ヒュワィィィィィ…
私たちを乗せた急行はすぐに走り出した。
「ご乗車ありがとうございます。次は、左右、左右です。」
「この後はどこに?」
「次で降りるよ。」
ガダン!!カタンカタン…ガダン!!カタンカタン…
そういう規則正しくもうるさい音の響く車内で私はそう聞く。叶音さんによると、次の駅で降りて歩くらしい。
今からの事を思うとワクワクしてくる。夕焼けに染まる住宅街の真ん中を急行は駆け抜けていった。




