第1話 全ての始まり
「ここが…学園か…」
そんな事を呟きながら、僕は夜月学園と呼ばれる学園の校門前に立ち、白い尖塔が目立つ校舎を見上げる。
いやデカすぎやしないか?
どう見ても一つの城だろこれ。
おっと。自己紹介を忘れてたよ。
僕は新城勝守。
今日からここに入学する13歳男子。
自己紹介したついでにこの世界の事も説明しよう。
ここは皆が知る世界とはまた違った世界。
俗に平行世界とか言われてる世界。
皆の世界にある物はちゃんとこの世界にもある。
ただ、この世界で決定的に違うのが生物の類い。
種族も沢山あって、人や動物の他にも
獣人とか幽霊とかも居る。
そして、みんなそれぞれ特別な力を持ってるんだ。
この世界じゃ、魔法とか能力とか言われてる。
ここはそんな世界さ。
って待て待て。さっきから誰と話してるんだ僕は。
「イタッ!!…よし、誰も居ないな?」
試しに自分の頬をつねって周りに誰も居ないことを
確認し、それにホッと胸を撫で下ろす。
その時だった。
「おはよっ!!君も新入生?」
「ひぎゃぁっ!?だっ誰!?」
不意に肩をぽんと触られて後ろから元気な声で
そう声を掛けられたので思わず飛び上がる。
ビックリしながら後ろを振り向くと、
赤髪とヘッドホンが特徴的な150cmちょい位の
少年が居た。
「あっ。ごめんねいきなり。同じ新入生かなっとか
思ったから声かけただけだよ。」
「そ、そっか。初日から元気だね。
僕は新城勝守。よろしくね。君の名前は?」
「安城叶音だよ。
これからよろしくね。勝守くん。」
叶音と名乗ったその少年も、どうやら同期らしい。
なんか隣に居たら楽しそうなので
僕は彼について行く事にした。
〜数時間後〜
「さてっ、入学式も終わって、
これからスクールライフスタートだね!」
「そうだね。まさか同じクラスになるとは
思ってなかったけど。」
入学式や始業式を終え、今日は午前中で
下校する事に。叶音とは同じ方角だったので、
一緒に帰る事にした。
まさかドンピシャで同じ1年A組、
しかも隣の席になるとは思っていなかったが、
彼と隣の席に座れたのは幸運だったのかもしれない。
「にしても君凄いね。
入学初日から3回も人助けとかしてたし。」
「まぁ、楽しいもんだよ。人助けっていうのも。」
ちなみにこの数時間の間、教科書の配布等の
作業を行っていたが、叶音が教師達を手伝って
大活躍していた。ホントにビックリだ。
150cmぐらいの身長のどこにその力が収まっているのか
聞きたいぐらい彼が物凄く重い荷物を
運んでいたのだから。
などと話で盛り上がっている最中の事だった。
「なぁなぁそこのボウズ二人。」
後ろから声が聞こえたので振り返ると、
そこにはいかにもチンピラらしい服装をした
真っ黒サングラスに金髪リーゼントの男が居た。
「叶音くん。君は下がってて。僕が相手する。」
「え?うん。わかった。」
僕のその言葉に叶音は、
一瞬動揺しつつ素直に頷き、後ろから見守る。
それを確認したので僕がチンピラに話す。
「僕達に、なんの用ですか?」
「聞いたぜ?オメェら学園に入ったんだろ?」
「そうですけど。何か問題でも?」
「俺ァなぁ、それが気に食わねーんだよ。
だからよォ、入学祝いにオメェらの事。
死なせてやんよ。」
「…!!(対応が遅れたっ…!!)」
そう言ったチンピラがいきなり拳を振り上げた!
手にはナイフ!!こんないきなりでは対応できない!!
僕は死を覚悟し、目を閉じた。
こんなよく分からない理由で僕は死ぬのか…。
そう思うと涙が出てきた。
段々と首元に切っ先が近づいて…近づいて…
…あれ?もう10秒は経ってるぞ。
なんで痛みのひとつもない?
ドガァァァンッ!!
そんなもの凄い音で目を開けた。
その僕の目の前に居たのは、
ついさっきまで一緒に居た、彼だった。
「痛ってぇ!!テメェ何しやがる!!」
「僕の友達を殺そうとした君を、僕は許さないよ?」
その彼の言葉には、マグマのように湧き上がる
怒りが籠っていた。そんな風に見えた。
チンピラが立ち上がってわめく。
頬がめっちゃ赤く腫れているので
恐らく殴られたのだろう。
「お前…この俺が誰だか分かってんのか!?
紗洞幹部の!!ジャデブ・デオーチ様だ…あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?」
聞いたことがある。能力者の中に、
その能力を悪用して窃盗や強盗、テロ等を起こす
不届き者の組織がある事を。恐らくそれが紗洞だろう。
それはさて置き、なんかいかにも瞬殺されそうな名前の
コイツが、いきなり股間を抱えて悶絶した。
…僕は見てたぞ。叶音。
お前が幹部(自称)の自己紹介の最中に
股に膝蹴りぶち込んだ所をな。
「テメェふざけんじゃねぇぞ?
俺様を怒らせた事、後悔して死にな!!
刃の嵐…ン?
ひいっ!?」
「君こそ、友達傷付けた事を後悔しなよ。」
見ると、叶音が火の玉を構えている。
いや、それは火の玉言うにはあまりにも大きすぎた。
ビル一つ分は余裕でありそうなバカでかい火の玉だ。
いやそれはもう火の玉では無い。太陽だ。
「サンシャイン・スト…」
「ヒィッ!!すみません!!すみませんでした!!
さようなら!!」
叶音がそのバカでかい火の玉を投げようとしていたが、
その恐ろしさに、チンピラはしっぽ巻いて
逃げていったようだ。
まぁ、これで多少は懲りただろう。よし。一件落着。
って待てよ?もし叶音がアレぶん投げてたら
ヤバい事になってたんじゃ…?
「ふぅ〜。とりあえず一件落着だね。
にしても良かったよ。相手が物分かり良い人で。
これ放ってたら多分この辺りが綺麗に消し飛んで
焼け野原になってた思うよ。」
などと彼はニコニコ笑って恐ろしい事を言っている。
あの〜叶音くん?それ使うのは程々にね?
関係の無い人まで巻き込んじゃうから。
僕はこの時思った。
あ、この子怒らせたらとんでもない事になるヤツだ。
と。
「そ、そうなんだ。にしても凄いね。
炎を操る能力者なんだ。」
「まぁ僕はそんな所だよ。
そういえば、勝守くんはどんな能力なの?」
「僕?僕は色々な素材を生成して
それを加工する能力。『創作』だよ。
こんな感じ。」
そう言うと、鉄を生成して、
そこから剣を作るまでを実演してみせる。
結構色々な物を作れるので自分でも気に入っている。
「ワオ、凄いね。
みんなから頼りにされそう。」
「そう言われると照れるな…」
そんな事を言われたのは初めてで。
思わず頬を赤らめて照れてしまった。
ただ、悪い気はしない。それだけいい能力という事だ。
また誰かに使って見せようと思う。
しばらく歩いていると、前方左手に石で出来た鳥居が
見えてきた。
「それじゃ、僕はここで。」
周りは森と崖と神社しかないところで
叶音がそんなことを言ったので困惑する。
訳が分からないので本人に聞いてみる。
「え?この辺りに家なんて無いけど。」
「ここにあるじゃん。」
そう言って指を指したのは、鳥居の奥。
…まさか神社に住んでるとでも言う気か!?
「えっと〜…君の家って神社だったの?」
「うん。そうだよ?結構立派な神社でね。
とても住みやすくて快適だよ。」
「よく罰当たらないな…」
「まあ、落ち葉掃除くらいはしてるし
お供え物もしてるから神様も納得してるんじゃない?
良かったら寄ってく?お菓子とお茶なら出せるけど。」
「…じゃあお言葉に甘えて。」
一瞬迷ったが、ちょっと気になったので
お邪魔させてもらう事にした。
ジョボジョボ…
シャカシャカシャカ…
静かな境内に、そんな音が響き渡る。
「どうぞ。」
「いただきます…」
そして出されたお茶を一口飲み、お団子を頂く…
…どう見てもこれ茶道だよね!?
もっとコーラとスナック菓子みたいな現代風かと
思ったらワビサビ感じる和風だったんですけど!?
そんなことにびっくりしたが、
出されたお抹茶はとても美味しい。
「とても美味しいね。何処のお茶?」
「でしょ?これ自家栽培でね。
種類としては西尾産のに近いかも。」
「自家栽培っ!?」
「ほら、目の前に生えてるでしょ?
生け垣よりちょっと大きいくらいの木が。」
そう言われてそっちの方向に目をやると、
確かにお茶の葉を沢山付けた木が生えている。
あの木でこんな美味なお茶を育てているのか…
ふとここで気になった事がある。
「そういえば、君はいつもどんな生活をしてるの?
親御さんは?」
そう。どうやって生活しているかだ。
大抵の人は育て親が居るのだが、
そんな雰囲気は一切感じられない。
なので思いきって聞いてみた。
「両親はもう居ないよ。
僕がまだ小学校の頃に火事で死んじゃった。
今は一人暮らし。お金は自分で稼いでるよ。」
「…なんか、ごめん。」
「いいよいいよ。全然気にしてない。
過去ばっかり見てても進めないからさ。」
なんか、悪い事してしまった感じがする。
だが彼は前向きだった。辛かっただろうに…
「自分で稼いでるって…何をして?」
「それは…」
叶音がそれを言おうとした時だった。
ジリリリリリリンッ!!ジリリリリリリンッ!!
電話の音がした。叶音が行って受話器を取る。
「もしもし。はいっ。はいっ!!花火の依頼ですね?
時間と場所をお聞きしてもよろしいですか?
…5時に朝日川の河川敷ですね?承りました!!
では。失礼いたします。」
ガチャンッ
「今の…聞いてた?」
「うん。聞いてたよ。なんでも花火がどうとか…」
「そうそう。今日の仕事は花火のお手伝いか〜。
頑張ろっ!あ、僕の仕事はこれ。便利屋だよ。」
「ワオ、凄いね。」
そんな事を叶音が言った。
自立した生活に思わず脱帽してしまう。
結構収入はあるらしく、食材買うのにも
十分なのだとか。今日は打ち上げ花火の手伝いらしい。
炎を操るこの能力が役に立ちそうだ。
これから準備があるだろうから、
僕はこれでおいとましよう。
「じゃあ僕はそろそろ行くよ。
花火の仕事頑張ってね!」
「うん!じゃあまた明日!!」
「また明日!!」
手を振りながら階段を降り、
僕は神社を後にした。
〜その日の晩〜
「いや〜初登校日楽しかったな〜。
早速友達もできたし。」
そんな事を呟きながら僕は学生寮のベランダから
住宅街の景色を眺める。
しばらくして、遠くの方に色とりどりに咲き誇る
光の花が見えた。きっと、叶音の言っていた
朝日川の花火大会だろう。今日はよく寝れそうだ。
布団に戻り毛布を被って僕はゆっくり目を閉じた。




