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98話. 魔力回復の革命

 

 閃いた。

 圧倒的な閃き。


 そうだ!

 壁の下にトンネルを掘ればいいんだ。



 ◇


 日が暮れてから俺は再び壁際までやって来た。

 準備は万端。


 さてと。


 どうやら俺の空間魔法では【カット機能】が使えることが分かっている。例えば川の水をそっくり切りだすことができるのだが、今回はそれを活かして壁を通り抜ける。


 まず、壁の下の地面を直方体の形状でそのまま文字通り『カット』して取り除く。

 もうこれだけでトンネル自体は完成だ。


 しかし、いざトンネルを作るとなると、それはそれで気になる点がある。


 ずばり完成した穴そのものだ。


 このままではトンネルがむき出しのままになり、かなり目立ってしまう。何とかこれを隠蔽したい。どう考えても警備員に見つかると大問題になる。


 もし日常土石魔法が使えれば埋め戻せるのだが、あいにく俺はその魔法を持ち合わせていないのだ。


 いや待てよ。

 あっ、そうか!


 またもや閃いた。


 先ほどは壁の下の土砂を文字通り【カット】した。じゃあ、今度はそれを【ペースト】すればいいんじゃないか?


「ペースト!」


 やっぱりだ。

 俺が通り抜けたトンネルは完全に元通りになった。


 これは便利だな。


 そうか、『カット・アンド・ペースト』が使えるのか。

 覚えておこう。


 ただ、単純に『カット』というのではあまりにも味気ない。


 三次元空間を切除するスキル。

 そうだな……。


 代わりに『次元切断』、カッコ良くして【ディメンション・カット】という技名にしよう。対するペーストの方は『次元復元』、すなわち【ディメンション・レストア】とここに命名する。


 そのまま大渓谷の際まで草陰に隠れるようにするため、かがみこんで姿勢を低くしながら移動する。


 そこからは、いよいよ空間魔法『フローティング・ディメンションα』を使って谷に降りた。さらにそのまま空間魔法で谷底を移動し、元来た道の近くまで進んだところで再び浮上する。もちろん検問所の付近ではない。


 結局、見つかるリスクを考慮してかなり大回りしてしまった。何はともあれ、これでようやく目的地のサンローゼへと舵を切れる。


 幸いにも月明かりがあるので何とか周囲の様子がわかる。そして振り返るとサルキアの街灯かりが上空まで広がっているのが見える。


 さあ、急げ、俺。

 早くサンローゼまで戻るんだ!


 飛行の高度は樹幹を少し超えた辺りを維持して、なるべく速度を出していく。途中から元来た道の近くまで来たので合流し、道と平行するような形で飛翔する。


 ここまでは順調だった。

 そう、ここまでは。



 ◇


 ガクガクッ。


「あっ、ヤバい!」


 飛び始めて1時間半ほど経った頃だろうか。

 突如として、俺が乗っていた空間魔法で作ったじゅうたんの挙動がおかしくなったのだ。


 すぐに着陸して原因を探る。


「ステータス・オープン」


 ああ、なるほど。


 そういうことね。


 すぐに原因が分かった。

 これは仕方ない。


 結論から言えば、残念ながら魔力切れだ。


 まさに恐れていたことが現実になってしまった。


 取り急ぎ、手持ちのポーションを最高級のものを除いてすべて飲み干す。

 だが、魔力が全然回復しない。


 う~む。


 やはりポーションの追加が必要だ。

 そこで、今日買ったばかりの3本も追加で慌てて飲んでみる。


 えっ、これはヤバい。


 まったくMP量が戻らないぞ。

 サルキア製のポーション、全然ダメじゃんか。


 というより、そもそもMPが底を尽きかけていること自体がおかしいのだ。


 何しろ、俺のMPは『スマート・ウルフ』の大群を倒したことで、驚愕の【105.8K】まで跳ね上がっていた。ちょっとやそっとで減るようなものではない。よもや枯渇するとは思わなんだ。


 あぁ、そうか。


 今更ながら、気づく。どうやら空間魔法で飛翔するのは魔力消費量がきわめて大きいのかもしれない。これまで問題にならなかったのは、どうやら低速で飛んでいたからだろう。おそらく加速度的に魔力の消費量が上がっていくと見た方が良さそうだ。これは失敗した。


 俺は飛行についての理解が足りていなかったのだ。


 さてと……。


 今のMPはポーションをすべて飲み干し、ようやく1割が戻ったところ。


 現状、飛ぶのは無理だが、走るだけなら何とか大丈夫かもしれないが……。


 困ったな。


 これでは飛行してサンローゼまで戻れない。


 かといって、何しろ危険な夜道だ。

 さすがに身体強化スキルを使って疾走するのもどうかと思う。

 スピードを考えるとやはり飛びたいところ。


 だが、残りの行程から推測すると、お話にならないほどの残存MP量。


 詰んだな……。


 クソッ!


 魔石なら腐るほど持っているというのに。

 潜在的に魔力があっても、使えなければ意味がないじゃないか!


 あれっ!?


 いや、ちょっと待った。

 もしや……。


 早速試してみるか。


 俺は空間収納からドンキル大渓谷で倒したスマート・ウルフの魔石を取り出した。


 それを手で包み込む。

 そしてイメージする。


 魔力を吸い取るような、優しい心で。


「おぉ!! うぉおおおーーー。来る、来るぞ。魔力がみなぎってくる!!」


 だが、次の瞬間……、

「パキッ!」


 あっ、魔石が砕けちまった。

 全然ダメだ。


 いや、むしろ逆か!

 これは使えるぞ。


 やはり魔石1個だけでは魔力量が少なかったか。

 今のでMP残存量が2パーセントほど増えただけだ。


 だが、これではっきりした。


 俺は()()()()()()()()()()()できる。


 やっべーぞ、これ。

 背筋がゾクゾクする。


 まさしく世紀の大発見だ。おそらく俺にしか使えないだろうけど。



 現状、手持ちのスマート・ウルフの魔石はゆうに数百個を超える。


 持てるだけ魔石を取り出し、魔力を取り出す。

 すると、みるみるうちに俺のMPゲージが魔力で満たされていく。

 魔石が魔力を吐き出し砕けるたびに新しい魔石から魔力を吸い出す。


 これをひたすら繰り返していく。


 しばらくするとMPは上限まで回復した。


 これは革命だ。

 まさに【魔力革命】といって差し支えないだろう。


 おそらく俺にしか使えない芸当なんだろうが、とりあえず自分が使えるという事実が大きい。


 これで飛べる。飛べるぞ~!


 改めて、いざ、サンローゼへGO!!



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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