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85話. 谷底で後始末をしなければ

 

 これから俺が向かう先はドンキル大渓谷の巨大な谷底。


 言わずもがな、俺が崩落させた斜面から転げ落ちたスマート・ウルフの群れ一万頭がどうなったのかを知るためだ。言うなれば実地調査となる。


 先日の『予行演習』で使った【空飛ぶじゅうたん】のような空間魔法で底へと降りていく。


 そうだな、この魔法は『フローティング・ディメンションβ(ベータ)』と名付けよう。


 さすがにきちんと使うのが二回目とあって、かなり慣れてきた。


 ある程度の深さまで降りてからは、崩落現場の方向へと舵を取る。わざわざそうしているのは、むろん目撃者がいては困るからだ。視界が暗くて見えにくくなるまで潜るまでは、うかつな行為をつつしむべきだろう。


 現場に近づくにつれ、音が聞こえる。とは言っても、スマート・ウルフのものではない。ガラガラと小石が落ちてくるような音ばかりだ。


 ついに現場に到着した。


 う~む。


 自ら【大崩落】をやっておいて何だが、なかなかにひどい惨状だ。

 大きな岩や石が山のように積もっている。


 そして、あちこちにスマート・ウルフの死骸が転がっている。

 幸いにもすべて死んでいるようだ。


 これだけの高さがある訳だから、そうでないと困る訳だが、とりあえず一安心。


 この谷底だが、水の流れが無いというのが重要だ。もし川があれば魔物が流されてしまうが、そういったことは起こらない。


 さて、実のところ俺の仕事はこれからだ。

 あまり大きな声では言えないが、今からちょっと派手なことをする。

 もちろん、崖上から底の方はよく見えないからこそ出来る訳だが……。


 もったいぶらずに言うと、ずばり『魔石の回収』を目的に俺はここへ来ている。


 これまでの経緯を踏まえれば、突然あり得ないほどの魔物が自然発生することは常識的に考えにくい。しかも街に向けて一直線に侵攻してくるという非常に統率の取れたやり方で。いかに魔物の知能が高かろうが、さすがにこれは不自然極まりない。


 だから、スマート・ウルフがサルキアの仕組んだ【異常種】かどうかを判定する必要がある。


「ファイアー・ブレード!」


 剣に炎を乗せて伸長させた俺の完全オリジナルな戦闘火焔魔法。

 これを振りかざしていく。


 何しろ火力が強すぎると魔石までダメになってしまうので、焼き過ぎないように。ただし、魔石を簡単に回収できる位の強火で死骸を焼いて回る。こうして皮と肉を灰に変えていく。


 うん、やっぱりそうだ。


 体内から出てきた魔石は、やはり通常の丸みを帯びたものでなかった。どう見ても、以前に倒した『シルバーメタル・アリゲーター』のように角ばっている。


 これはサンローゼのギルドで副地区長をやっているノーレンが言っていた特徴に合致する。間違いない。こいつらは異常種で確定だ。


 これで疑問が晴れてスッキリ……、とはいかなかった。

 どうしても下心が出てくる。


 ついつい、魔石を【余分に】回収するミッションに移行する。

 いや、これは『今後の研究』に必要なんだから仕方ないよね!


 数百ほどの魔石を急いで回収し、使いこなせるようになった空間収納に入れ、大急ぎでその場を後にする。


 だが……、思うところがあって急遽、踵を返して引き返す。

 何だか嫌な予感がする。一応、現場の【隠蔽】をしておこう。

 年には念のためだ。


 万が一にも調査隊が編成されないとも限らない。


 まず、火焔魔法で燃やした死骸のエリアを空間魔法で土砂もろともごっそりと消し去る。さすがに灰が残っているのはまずい。ただ、これでは平坦な地面が生まれ、逆に不自然になってしまう。


 そこで崖に放水魔法を打ち込み、軽く崩落をさせつつ、土砂を底へと落としていく。こうすることで、元々あった土砂の山に近い状態まで復元できたところで、今度こそ現場を後にした。


 きちんと痕跡も消えたようだし、これで問題が起きないことを祈ろう。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


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