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72話. いざ行かん、スタナの街へ

 

 さて、こうして無事に『ブラッド・ベアー』を討伐し、あまつさえドラゴンの魔石まで手に入れてしまった俺だが、このカディナの街を一刻でも早く立ち去りたい状況になっている。


 というのも、予想外に派手な討伐劇の一部始終をかなり多くの冒険者の面前で演じてしまったからだ。こうなる予定ではなかったのだが……。


 それにしても、あまりにも注目を集めすぎていて、ギルド会館から宿に戻るだけでも一苦労だった。


 それどころか、ギルドの一階に降りたところで黒山の人だかりになる始末。やっとの思いで魔石を死守しながら宿にたどり着いたのだが、もうコリゴリである。


 あともうしばらく1日、2日ほどカディナに滞在して観光しても良かったのだが、その計画は現刻をもって中止とする。


 あまりにも疲れていたため、軽く横になって仮眠した後、大急ぎで身支度を整えていく。


 といっても、ほとんど荷物をバラしていなかったのが幸いし、思いの外すぐに準備は終わった。


 あとはゆっくりと休んで、早朝に出立だ。

 といってもそれほど休めるほど時間的な余裕がないが……。




 朝になった。


 厳密にはまだ夜更け前だが、人気のない内にすぐに宿を立ち、一路、スタナへと進路を取る。目指すは放水魔法を習得できるという遺跡の石碑だ。


 ここカディナからスタナの街まではきちんとした道がある。といってもスタナ自体はそれほど大きい街ではなく、地図屋で買った地図を見る限りではおそらく集落程度の規模とみておくべきか。


 さすがにサンローゼからカディナをつなぐ街道よりも道幅こそ細いが路面の状態は非常によい。やはりこれでも主要な道だから整備はきちんとしているのだろう。


 当然ながら馬車は使わず、身体強化スキルで駆け抜けるのみだ。ソロなので進むペースは他人に遠慮する必要がない。フルスロットルで道を突き進んでいく。


 それから1時間後。


 休憩しようと立ち止まった矢先、重大な問題に気が付いてしまった。ずばり、水が無いのだ。厳密には、水筒の中身が何も入っていない。これはうっかりしていた。完全に自分のミスである。まぁ、とにかく水筒は俺の必須アイテムなのだ。


 そもそもこの世界で冒険者はほぼ例外なく日常系放水魔法が使える。だから、いちいち水を持ち歩く必要がなく、その場その場で簡単にのどの渇きをいやすことができるのだ。


 しかし俺は数少ない例外。

 何しろ『放水魔法』がまったく使えないのだから。


 それが理由で、こうしてわざわざ長旅をしてまで放水魔法を習得しようとしているほどだ。

 それだけ放水魔法の優先順位は高かった訳だが、それを習得する前に水トラブルとは恐れ入ってしまう。


 昨晩は騒動の疲れでゴタゴタしていたのと、急遽決めた早朝出発の都合でいつもより荷造りがあまかったのが敗因だろう。


 まさかの飲料水がないとは……。


 さて、理由はともかく、これは困った。

 大変困った。


 正直なところ、川があったとしても川水を直接飲むのは危険だと思っていて、これまでそういった行為はできる限り避けてきた。


 言わずもがな、変な寄生虫やらが体内に入り込んだら困る。とはいえ、容器が無いから火焔魔法で煮沸するのも難しい。


 どうしたものか。


 とりあえず沢が見つかるまで前に進むことに決めた。


 それからさらに1時間ほど。


 いい加減、のどが渇いてえらいことになってきた。


 さすがにちょっとヤバい。

 間違いない。


 今、この世界に来てから過去最大にのどが渇いている。

 そろそろ腹をくくらなければならない。


 身体強化スキルはさすがに負担が大きく、ペースを緩めて前へ前へと一歩ずつ進んでいく。さらに悪いことに徐々に路面の状態が悪くなってきた。道幅は変わらないが、あちこちに穴があるし、デコボコや水たまりなどもある。当然、それらを気にしながら進まなければならない。


 そうしてさらに30分後。


 不意に道の先を歩いている二人組が目に入った。


 これは助かった!! ……かも?



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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