63話. 旅の目的地はこれで決まりだ
さて、宿に戻り、改めて買ったばかりの地図を眺めてみる。『地図屋』では、ちゃっかりとサンローゼ中心部の地図も購入しており、商店や飲食店など行きそびれた場所があるかどうか確かめたいが、それよりまずは本命の石碑の方だ。
さすがに高価なものだけあって紙質はしっかりしている。
しかし内容は簡単というか大雑把というか。
主要な道と市街地、ちょっとした目印、そして魔法取得のための石碑の場所が示されているだけだ。街や集落のエリアは一様に灰色に塗られている。
本当に主要な建物、例えばギルド会館の位置などを除けば、その他の細かい情報は一切載っていない。
これは……。
人によってはぼったくりと言うだろうな。
かく言う自分もそんな気持ちが無くもないが、とはいえ頼れるものがこれしかないのだから仕方ないのも事実。
さて、この地図をよく見ると、これから行くべき場所が見事なまでに浮き上がってくる。
だがその前に、まず根本的な俺の考えをここで整理しておきたい。
ひとまず俺が目標とするのは単純で明快、ずばり【全魔法の制覇】だ。
この目標は揺るぎない。
これは命の危険を少しでも減らし、安全を確保することに加え、この世界で楽しく過ごすためには必須の条件だと言っていいだろう。
とくに魔物に対しては魔法属性によって相性の良し悪しが大きく作用してくる。
例えば、金属系の魔物には電撃魔法が効果的だったり、フレア・ウルフのような炎系の魔物であれば氷結魔法が効果適性といった具合だ。
魔法には戦闘系魔法の他に日常系魔法があるが、火焔以外をまだ会得していない。
少なくとも汎用性の高い放水魔法くらいは可能な限り早く習得したい。
幸いなことに日常系水魔法は基本中の基本の魔法なので、地図によると習得できる場所はチラホラある。場所によっては戦闘系魔法も同時になんとかなりそうだ。
それとは別に、ノエルの空間収納を見てからすっかり一目惚れしてしまった空間魔法が忘れられない。
これは取得するのが最上位に難しい魔法らしいが、やはり未習得の魔法の中で一番欲しいのはこの空間魔法になるだろう。もちろん日常系と戦闘系の両方とも欲しい。
むろん、必要性というより俺の趣味によるところが大きいかもしれないが、この魔法を大変気にいっている。
これぞ異世界といった魔法だ。
こちらもすぐにでも獲得したい。
以上をまとめると、空間魔法の石碑を目的地として、そこへ向かう途中でサクッと放水魔法を習得してしまうのが無難だろう。
……と、ここまでは良い。
問題は空間魔法の石碑の場所だが、これが予想していたよりもはるかに遠い。
道沿いを順調に進んだとして目算で500キロ弱くらいは離れているのではなかろうか。方角としては、ここサンローゼの街から東へ向かい、その途中のスタナという街で放水魔法を習得してから、目的地のサティアに向かおう。
だが、地図を見て気になることがいくつかある。
以前、たまたまギルド会館で秘密を知ってしまった、例の魔物の異常個体を人工的に作っているらしいサルキアという街がサティアのすぐ近くにある。もっとも、うわさ話レベルなのだが、内容が内容だけに気にならなくもない。
このサルキアだが、もはや街というより、実際にはかなり大き目の都市なのかもしれない。
ただ、よく地図を見ると街道は途切れており、サティアから道沿いにサルキアまで行ける訳ではなさそうだ。
距離は短いのにこれはどういうことなのだろうか?
謎が深まる。
それより気になるのはこれだ。
サルキアの下半分を囲うかのようなよく分からない一本の線。
これは一体何だろうか。
街の境界線か?
そして更にそれに沿う形でサティア側に太目の線が引かれている。これもよく分からない。実際に行けばその辺がはっきりするだろう。残念ながらサルキアの街は一部しか載っておらず、詳細は不明なままだ。
危険要素として魔法実験の疑惑があるサルキアの様子は見ておいた方が良さそうなので、もし元気が余っていればついでにサルキアにも足を踏み入れよう。とりあえず、この方向性で行くか。
これで旅の目的地は決まりだ!
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