50話. 掲示板を見ながら思索に耽る
さて、俺は例によってギルド会館の掲示板の前にいる。
目の前にあるのは大量の依頼、依頼、そして依頼の張り紙。
俺は目を皿のようにしてそれら依頼の掲示を見続けていた。
理由は簡単。
早くFランクから抜け出したい、ただその一心だ。
まずはレベル上げをしなければならない。
というのも、現状、Fランクが受注できる依頼のほとんどは常設依頼で、それも基本的には薬草やキノコの採取しかない。
当然ながら魔物の討伐依頼など夢のまた夢。
ただし、もちろんこれら以外で受けられる依頼も無くはない。
例えば、清掃、あるいは土木作業などに代表されるような、俗に言う『ヘルパー依頼』だ。これなら安全な街の中で仕事ができる。とはいえ、いずれの仕事も給料は低く、そして過酷な業務が多い。
この世界に迷い込んだ当初なら危険な魔物討伐などもっての外だったが、強力な魔法とスキルを複数得た今では事情が全く違ってくる。
もはや、苦労してちまちまと小銭を稼ぐよりも、楽して弱めの魔物をちょろっと討伐する方が自分に合っているだろう。
早くレベルを上げ、金を手に入れ、情報を収集し、この世界についてもっと知る必要があるのだ。それは生き延びるためでもあるし、俺が楽しむためでもある。元の世界に帰れるかどうかの可能性についても選択肢として、一応、把握しておきたい。
ちなみに、ノエルと一緒に討伐した件の『シルバーメタル・アリゲーター』の経験値があれば、例え3人で一緒に倒したことにしても、ユエと俺のレベルアップが可能なほどだった(ただし、ノエルはB級昇格の試験が必須)。しかし、実際には俺のランクは最下位のFのままだ。
これはどういうことかというと、話は単純。
そもそも我々の中で一番ランクの高いノエルでさえC級冒険者だったことが災いしている。実はCランクになって初めて魔物の討伐依頼を受注できるようになるので、ユエも俺もお呼びではないということだ。しかもCレベルはあくまでも受注ができるようになるだけで、実際の討伐対象はCランク以下の危険性が低い魔物に限定される。
他方でシルバーメタル・アリゲーターはBランク冒険者が数人がかりで倒すような魔物だ。それゆえ、運よく我々が倒せたところで元から正式な依頼を受けていないため、これを特例として功績と認めるかどうかは完全にギルド側の判断になってしまう。
これについて、持ち込んだメタルアリゲーターの鱗は魔石を含めてその場で買い取ってもらえたが、この討伐実績がレベルアップにつながるかどうかはその後も議論の対象となっていた。
だが結局、今回はイレギュラーがあり、ギルドはこれを功績として認めなかったのだ。
もちろん原因は明らかで、そのメタルアリゲーターが【異常種】だったことに他ならない。そのせいで功績どころか、討伐したという事実そのものが公式には抹消されていて、元から何も存在しないことになってしまった。
既に箝口令が敷かれ、我々にも厳に情報を秘匿するよう通達が下っている。
また、里から戻る途中に討伐したジャイアント・ボアだが、あれは俺のミスで素材はおろか魔石ともども残らず灰になってしまった。
そのため、素材が何も取れなかったのだ。
もし何らかの素材があればお金になっていたのだが……。
そうして掲示板をぼんやりと眺めていたところ、唐突に同じ位の背格好の男が話し掛けてきた。
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