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42話. なんで俺が模擬戦を!?

 

「ちょっとお手洗いを借りてもいいですか?」


 冷静さを装い、まず俺が向かったのは怪しまれず一人きりになれる場所。


 そう、トイレだ。


 実はこっそりと胸ポケットに回復ポーションを忍ばせていたのだ。

 まぁ、元の世界では『ドーピング』と言ったか。


 しかし、ここで正々堂々と勝負という訳にはいかない。


 なにしろ、わざわざ苦労してこんな山あいの集落まで来たのは、その家宝の石板を見るためだからだ。それを見れないとなると、これまでの苦労が水の泡になってしまう。ありとあらゆる、どんな手を使ってでもその目的は達成したい。


 それに、我々がここに着いたのはつい先ほどのこと。

 まったく運動していないラートと同じ土俵に立たされるのは公平ではない。


 さすがに疲労を回復する位は許してほしいものだ。

 これでこそハンディキャップが縮まるというもの。


 こうしてHPだけでなく、ちゃっかりMPも全回復した俺は外に出た。


 皆に案内されて向かったのは家々の間にあった空き地だった。


 よく見ると大きな円が地面に描かれてある。

 そうか、これは土俵なのか。


「サイさんとラートはこの円の中で戦ってもらおうかの。使うのはこの木剣じゃ」


 オオババ様の側近と思しき方が手渡してくれたのが、刃渡り50センチほどの木製の剣。刃はそれなりに厚みがあり、ある程度の衝撃までなら耐えられそうな作りになっている。


「さて、二人とも。準備しなされ」


「サイさん、頑張って!」


「頑張れ~」


 ノエルとユエはそう小声で応援してくれる。


 ここは冷静になろう。

 何しろ初めてのまともな対人戦なのだ。


 実は戦う相手のラートこと弟君については予め鑑定してある。



 --

 名前:ラート

 種族:獣人(猫族)

 職業:冒険者(Cランク)

 HP:916 / 916

 MP:382 / 382

 魔法:日常火焔魔法(中級)、日常放水魔法(初級)、戦闘火焔魔法(中級)

 スキル:魔力覚醒

 特記事項:ノエルとユエの弟。

 --


 さすが自ら勝負を吹っかけてくるだけあって、強い。


 正直なところMPは今一つだが、模擬戦は体術なのでHPがものを言う。


 それがどうだ。

 HPは俺やノエルの倍ほどもある。


 これは手ごわそうだ。

 ちなみに魔法の構成はユエとまったく同じだった。


 とはいえ、いくらHPが倍だからと言っても戦い方はあるだろう。


 とくに俺が持っている身体強化のスキルの効果はHPの数字に反映されないが、使っている際には相当なブースト効果があるのを確認している。おそらく五分五分までの勝負までなら何とか持っていけるに違いない。


 問題はその先、つまり勝ち方だ。


 もちろん確実に勝たなければならない。


 だが、相手に重傷を負わせたり、ましてや殺してしまうのはあり得ない。

 魔法もルールで禁止だ。


 さらに身体強化スキルのブーストを使うにしろ、この人前であまりにも超人離れした動きを見せてしまうのも良くない。あくまでもさりげない動きで勝たなければならないのだ。それも相手に実力を認めさせつつ、同時にご機嫌を損ねないような納得感のある勝ち方で……。


 結論を言えば、縛りが多すぎる一戦と言える。さて、どうしたものか。といっても、鑑定の情報だけでは彼の戦闘スタイルを判断できない。


 まぁ、とりあえず実際に戦って様子を見てみて、最初の数分で判断かな。

 そう俺は腹をくくった。


 そんなことを考えながら軽く準備運動を終え、剣を握った。土俵には既に準備万端といった具合でラートが立っている。開始場所の小さな線が描いてある位置で合図を待つ。ラートとの距離は大体6メートルといったところだろうか。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや別に、隠れてポーション使う必要なくね? 山歩きで疲れていると言えば、 模擬戦の前に使っても誰も文句言わないだろ それともここの連中は、ハンデありで戦わせるような、 卑怯者の集団なの…
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