40話. オオババ様にご対面、手土産持参で気分上々??
そんな雑談をユエとのんびり話しているとノエルが小走りで戻ってきた。
「オオババから宿泊の許可が無事、取れたわよ。さすがに里の外に放り出す訳にはいかないから、駄目なら全力で説得するつもりだったけど、すんなりと上手くいったわ。とりあえず、こっちへ」
おっ、それは良かった。ここまではとりあえず予定調和。さすがに客人を外に放り出すことはしないだろうと踏んでいたが、これで一安心だ。これで残す問題は『例の石板』だけ。ただ、これが一番の難題だ。何とかオオババ様の許可が取れることを期待しよう。
「あの建物は倉庫。里の食料なんかが備蓄されているわ」
「あれは物見やぐらね。敵や魔物の監視のためよ。高いでしょう」
「これは寄合所。みんなで集まる共用の場所」
歩きながら一通り案内を受けつつ、里の様子を注意深く観察してみる。
なるほど。
正直、かなり小さく、そしてこじんまりとした集落だ。
おそらくだが、人口は数百人にも満たないだろう。
こうして歩いているだけで住民から好奇な目を向けられてしまうが、それはさておき、みんな猫型の獣人族のようだ。
建物は江戸時代の茅葺屋根の古民家といった雰囲気だが、実際は弥生時代の集落に例えた方がより適切なような気もする。
「着いたわよ」
「ほほぅ」
いかん、つい言葉が出てしまった。さすがに村長(?)のオオババ様の家はそれなりに立派なようだ。
「お邪魔します」
家の中に入ると、既に数人が待っていてくれていた。真ん中におばあちゃんがいる。このご老人がおそらくノエルたちの祖母、通称『オオババ様』なのだろう。
「あっ、皆さま、はじめまして。サイと言います。この度はよろしくお願いします」
そう言って俺は軽く頭を下げた。ここからは普段よりも丁寧な言葉遣いに変更だ。妙なところでへそを曲げられないようにしたい。
おばあちゃんが話し始める。
「頭をお上げなさいな。サイさんと言いなすったか。こちらこそ、礼を言いたい。聞けばこの孫二人の命の恩人だというじゃないか。今日はゆっくりしていってくれ。なぁ、皆の者」
やはり当然のようにこの方がオオババ様その人だった。
その後、ワイワイガヤガヤと一通り話が終わった後、我々が道中に狩ったばかりの『ベリー・フェレット』の肉をノエルがドヤ顔で取り出した。
すると周囲がまた騒然となった。
「えっ! まさか、それはベリー・フェレットじゃないか!?」
「やったー!! ごちそうだ!!!!」
「ノエル、すごいな。よくやった!」
「予想以上の素晴らしいお土産だ。ありがたい。さっそく皆で食べよう」
実はこの魔物、かなり珍しく、そして美味らしい。
「ふふっ。何を隠そう、ここにいる私たち姉妹の恩人【サイ】が狩った獲物よ! どう? すごいでしょう!!」
ノエルがそう付け加えてくれる。
「おおー! サイ殿は狩りもお上手なのか。流石ですな!!」
「こんな珍しい獲物を逃さず狩れるなんてすごいわ」
「たった1回、遠くから石を投げただけで倒しちゃったんだよ。みんなにも狩りの様子を見せたかったなぁ」
ユエもフォローしてくれる。ありがたい。
すぐにこれから調理をしてくれるようだ。また、夕食も作ってくれるとのことで、感謝感激だ。さすがに保存食では味気が無さすぎる。
さて、ひと段落した頃合いを見計らって、俺がわざわざここに来た目的を切り出した。明日でもいいが、断られた場合でも作戦を練りたいので、手っ取り早くまずは様子をみたいのだ。
最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!
もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。