26話. 戦闘火焔魔法の神髄を知ると奇跡が起こる…… かも?
万策尽きた。
しかもあろうことか、怪我までしてしまった。
今の青色火球を放ったことで、巨大ワニは攻撃を警戒し、堅強なまでに口元を閉ざしている。もはや次の攻撃チャンスはないだろう。
それでも巨大ワニはお構いなしに攻撃を緩める気配はない。
何を血迷ったのか。
思わず俺は、ついこの間買ったばかりの長鋼形片手剣を抜いた。
そして巨大ワニに向けて構える。
剣を抜いても何にもならないというのに。
あぁ、この剣もろとも俺はここで消えてしまうのだろうか。
実にあっけない最期だったな。
うん、剣か!?
もしや。
俺はギルド登録試験の時の試験官、ガルダールの言葉を思い出した。
そして反芻する。
ずっと頭の片隅に引っかかっていた一節。
あの時ガルダールは、「戦闘火焔の中でも自身の得意な魔法を的に向かって1発放て」と言っていた。
いや、確かにそう言い放っていた。
ということは、だ。
もしかして、戦闘火焔魔法はファイアー・ボール以外にも種類があるのかもしれない。
剣だ。
ブレードに炎を乗せるイメージ。
即興だけどやるしかない。
右手に剣を持ちながら、炎を具体的に想像する。
でたっ。
俺の剣はオレンジ色の火焔に包まれた。
炎は大きく伸長し、長さ数メートルはあろうかという巨大な炎の剣が出現した。
やった!
予想通り。
次は色だ。
成功した。
すぐさま青い炎が柱状になった大剣に早変わりした。
炎の剣が完成した次の瞬間、俺は身体強化のブーストを駆使してジャンプ。
巨大ワニの胸元に飛び込んだ。
狙うは先ほどの青色ファイアー・ボールで穿った線状の傷。
「ジュー、ジュー」
傷跡に沿うようにファイアー・ブレード(仮称)を当てると、肉が焦げる臭いが周囲に立ち込め始める。
しかし、ファイアー・ブレードで上から押さえつけるように切り付けても、嫌がる巨大ワニは動きを止めないどころか暴れ始める。
このままでは危ない。
「おいっ、待てや!」
左手を前に出すと、手の平から火炎放射器のように大量の炎が噴出して巨大ワニの全身を包み込む。
けっして意識はしていない。
あくまでも無意識状態だったのだが、勝手に魔法が発動したようだった。
丁度いい。
右手のファイアー・ブレードで傷跡をえぐりながら胴体を分断しつつ、左手の火炎放射で全身を焼き尽くす。
まさしく二刀流だ。
左手の炎はオレンジ色の通常タイプだが、無意識に出たので色を変えずにそのままにしておく。
全身を包むイメージに沿った大きな炎なのもその理由だ。
数分後、ジタバタしていた巨大ワニの動きがついに止まった。
どうやら俺たちは勝ったようだった。
ふと正気に返ると、火力が強すぎたせいか、巨大ワニは鱗と骨を残して消滅していた。
もしかして、これって、オーバーキル?
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