23話. 二匹目のドジョウを狙って成功するのは難しいのか?
初っ端からキノコ採取の常設依頼に味をしめた俺は、迷うことなく2回目のキノコ採取に出かけた…… のだが、結果は散々だった。
やはり前回のスクナミタケは単純にビギナーズラックだったようだ。
まず、鑑定スキルを試す以前にキノコが全くといっていいほど生えていない。それもそのはず、今は雨が極端に少ない時期で、キノコを探す季節ではそもそも無かった。
あぁ、無情。こればかりは他力本願。自分ではどうしようもない。
だが、それでも根性で500クランを稼いだ。
ちんけな小銭でしかないが、無いよりもマシだ。
それでも性懲りもせず、何日かキノコ探しを続けた。
もはやギャンブルに近い。
しつこく定期的にスクナミタケを見つけたポイントを回り、ごく少数ながら採取に成功したりしなかったりした。
しかし、そこもすぐダメになった。
純粋に同じ場所で獲りすぎてしまったのだ。
もしかすると時期的な問題も出てきたのかもしれない。
事件はいつもより遠出をしてキノコを探している時に起こった。
既に夕方になり、辺りは日が落ちかけていた。
いわゆる黄昏時である。
森の中なので日が暮れるのも早い。
そろそろ潮時かと思って帰り支度を始めていると、はるか遠くからもの凄い音が聞こえてきた。
そして悲鳴も。
見覚えのある、絶望と悲哀が入り混じった光景が目に浮かぶ。
あの時と同じだ。
そう、この世界に来た初っ端に相対したギガ・マンティスとの戦闘が脳裏によぎった。
このまま逃げるか。
それが安全だ。
その選択肢以外あり得ない。
Fランク冒険者風情の俺が行ったところで何とかならないだろう。運よくそうなればいいが、何とかならなかった場合は死が待っている。
本物の死だ。
なにせ、ここは現実。
俺の置かれている状況が分からないが、この世界で死んだ場合の補償など元から存在しないのだ。
はっきり言えば、永久に現代日本に戻れなくなる公算が大きい。
そうでなくとも、俺はこの中世さながらの生活が気に入りだしてきたところ。こんな所でおいそれと死ぬわけにはいかない。
しかし……。
やはり気になる。
先ほどから木々をなぎ倒す轟音が響いている。
何か分からないが、魔物だとしたら、相当の相手だろう。
さっき聞こえてきた音は紛れもなく悲鳴。
ということは、人がいるということ。
しかも複数人。
そして、おそらく置かれている状況はすこぶる悪い。
ここは俺が生まれ育った世界ではない。
何の義理も所縁もない土地だ。
いや、縁は既にあるか。
ここでの記憶は短くても俺の一部。
それらは血となり骨となり、精神的支柱になりつつある。
よし、行こう。
この世界のためというより、自分のためだ。
何もできなかった俺がヒーローになれる機会がせっかく巡ってきたのだ。
それに、ここで踵を返して街に戻ったところで後味が悪い。
何しろ妙なところだけやたらと記憶力があるので、これから何年もこの一件が尾を引くのだけは勘弁だ。
俺は音のする方向に全速力で向かった。
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