194話. 見渡す限り敵だらけ、って一体どういうコトなの!?
俺の持つ二つのスキル。
すなわち『魔力感知』、そして『状況把握』。
これらを複合し、かなり索敵範囲を広げた時に真実を悟った。
みるみるうちに疑問が氷解していく。
【なぜ敵はサンローゼから遠く離れたここスローン大平原に来るよう指示してきたのか?】
それだけじゃない。
【どうして強い冒険者をわざわざ呼び出したのか?】
言わずもがな、普通は相手にするのであれば弱い方が好都合なはず。命の危険を顧みずにS級冒険者まで呼びつけたのは元から変な話だったのだ。
……となると、何か裏があるのかもしれないと考えていたのが大当たり。
その答えが今、明らかになった。
頭の中に映し出された同心円状の図、そして白黒の背景。その周囲が大きな円形に光りだしたのだ。
間違いない。
これは魔族の集団だ!
肝心の数は数十、数百どころじゃない。
どうみても千、いや、あるいはそれ以上か。
我々は敵の術中に見事なまでにハマってしまっている。
最悪な状況だ。
もはや逃げるのが不可能と言えるほど完全に包囲されている。
しかも相手は多勢に無勢。
ヤバいな。どうみても数が多すぎる。何が絶滅だ。
これはひょっとすると総力戦で来襲してきたな。
いくら強い冒険者が集まっているとはいえ、たかが十数人やそこらで相手にできるレベルではない。
確かにこれだけの人数なら相手がS級冒険者だろうが目じゃない。
しかも、この『キング・セコイア』が良くも悪くも目印になっているのだ。それを見越してここを指定した訳か……。なるほどな。連中はさすがにバカではない。
そうしている内にも明るく表示されている円がどんどん小さくなってくる。奴らは空を飛んできているから速度もある。
どうやら魔族の大規模な集団は円形の陣形を保ちつつ、それこそ一直線に我々を目指している。時間はさほど残されていない。
そろそろ目視できるはずだ。
ヤバい。本気でヤバい。
これはどうしたらいいのか。
「おい! あれを見ろ!!!!」
ついに戦っていた冒険者の一人が遠くの空を指さした。
「なんだ……、なんだアレは……」
「もしかして増援なのか。しかもあんなにたくさん……」
「終わった。もうダメだ。」
黒々とした点々が空を埋め尽くしている。
ついに来たか……。
「そんな……。私のスキルでは探知できなかった……」
ガックリと肩を落とすブロドリオ。
なるほど。
ブロドリオは俺と同じ『魔力感知』のスキルを持っている。というか、向こうのスキルを盗んだ訳だから当たり前の話だが。
そんな彼でも魔族の魔力反応は感知できなかったようだ。同じスキルでも魔法と同じく、人によって効果が変わってくるのかもしれないな。
いや、そんなことを考えている場合じゃない。
こいつらをまとめて倒す。
まだ会敵していないが、混戦状態に持ち込まれたらそれで終了だ。
しかし逆に考えればこれはむしろチャンスだ。
総力を挙げてやって来たということは、この集団を一掃してしまえばもう異常種がどうのという魔族絡みの問題はもう起きないかもしれない。
それにしても、ようやく誘拐犯の一味が全滅というタイミングでこれか。
ここで隠蔽スキルを一時的に解除する。
「ノエル、ユエ!」
「どうしたの!?」
「俺はあの集団を倒す。二人は土石魔法と火焔魔法を使って壁を作ってくれ。背丈の半分くらいで弾避けになりそうな」
「わかった~」
「了解よ。任せておきなさい!」
「もし俺が倒されたら皆を守ってくれ。あとは頼むぞ!!」
言い終わった次の瞬間には空間魔法を発動させ、そして再度、スキル『隠蔽』。
「き、消えた。それに今のはまさか空間魔法!?」
そんな冒険者の声が聞こえるが無視だ。
ひとまず『キング・セコイア』の上まで飛んで移動する。
さてと。
こいつらをどうやって “調理” してしまおうか。
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