表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

191/196

191話. 衝撃的な真実を知る。やはりそうだったのか!!

 

「時間だ。これから交渉を始める」


 誘拐犯の男は高々にそう言い放った。

 どうやら指定時刻になったようだ。


 ふむ。

 とりあえず、いきなり弾の撃ち合いにはならないらしい。安心した。


 誘拐犯の一味はほとんど男だが、女と思しき姿もチラホラ見受けられる。


 そして真ん中に縛られた女が一人。そうか、あれがサンローゼの地区長なのか。俺は一度たりとも見たことが無かったが、よもやこんな形でご対面とは。


 しかし以前世話になった副地区長『ノーラン』の姿は見えない。


 やはり危険な現場だからここには来れないか。



 それでは誰が交渉を、と思っていたら、エカテリーナが声を発した。確かにサンローゼのギルドが主導権を握るのは当然だ。なにしろギルド長が誘拐されているのだからな。


 よく見るとギルディアスの姿もある。そうか、彼らはAランク冒険者だから招集された訳だな。


「我々はギルド地区長スレイヤの解放を要求する。これは正当な要求だ」


 確かに……。彼女の言う内容は正論だが、誘拐犯相手にずいぶんと強気だな。相手の方が多勢だぞ。しかも人質がいるのに。


 エカテリーナは長々と金の話を切り出し、何とか無傷でその場を収めようとしている。もちろん誘拐されているスレイヤとの交換条件を提示して。


 だが、先方は当然ながら折れない。まぁ、言うまでもなく金が目的ならば最初から言ってくるだろう。そうではないということは、その手の譲歩案をいくら出したところで意味がない。



 そんな交渉の最中、近くにいた冒険者の会話が漏れ聞こえてきた。


「しっかし、スレイヤ様も災難だよな」


「それだよ。今回で2回目だろ」



 ん? それは一体どういうことだ?


「前回は両方の耳を切り取られながらも脱出に成功、だもんな」


「しかし、その件のせいで余計に引きこもりがちになられたとも聞くぞ」


「それは仕方ないだろ。仕事はできるからそれで文句を言えるはずがない」


 なるほど。事情が見えてきた。


 つまりスレイヤは過去に捕まったことがある。今の話はウソかもしれないが、少なくともそういう『設定』がある訳か。


 そう言えば、誘拐犯のグループにすっかり気を取られてしまい、まだ肝心のスレイヤ本人を鑑定していなかった。


 『鑑定』



 --

 名前:スレイヤ

 種族:魔族

 職業:サンローゼ地区ギルド長

 HP:2851 / 2851

 MP:4207 / 4207

 特記事項:宗教団体『ゴメラシオン』(反社会的勢力)幹部。

 --



 ははぁ、やっぱりか!


 というか、これはひどいな。


 俺のこれまでの疑念の数々が見事なまでに繋がった、いや、むしろきちんと裏付けられた訳だ。


 サンローゼのギルドでは理不尽な目にあわされることばかりだった。そして不可解なことも目立っていた。


 とくに昇級に関することや異常種や魔物討伐についての情報統制は常軌を逸していただろう。これらが頭の片隅にずっと引っかかっていたのだ。


 その中でもやはり強力な魔物の倒し方が厳に秘匿されていたのはまったく理解できなかった。冒険者の命を考えればその判断は明らかに誤っていたのだから。


 しかし、これで納得した。

 自分の中での完全決着だ。


 つまりだ、……


 サンローゼのギルドは最初から『魔族』に乗っ取られていたのだ。


 そうなると、城塞都市サルキアが悪だくみをして云々といった話はすべてウソ。でっち上げ。単純にそちらへと関心を誘導していただけだった。


 真の敵は内部、それも中枢にいた訳だ。しかもその敵は人間ですらなく『魔族』。やはりサルキアがどうのこうのという国同士のいざこざなどでは無かった。


 実は敵が身内だったとは何の冗談だ。笑えないぞ。



 それにしてもギルドの頂点が実は魔族とは……。

 ひどいな。スパイも仰天のビックリ案件に違いない。

 一体どんな手を使って潜り込んだのやら。


 よもやサンローゼのギルドが傀儡政権だったとはな。


 そして漏れ聞こえてきた会話によると、過去の誘拐でスレイヤは両耳を失っているそうだ。


 しかし鑑定結果を見た今では逆に意味深だ。


 というのも、魔族の耳は大きく長い。


 他の誘拐犯が全身黒づくめで頭巾を深々と被っているのもそういうことなのだろう。


 スレイヤの過去を知らないが、おそらく魔族らしさを隠蔽するために故意に耳を切り落としたのだろう。身元を隠すためとはいえ、普通そこまでするのか。



 さてと……、ひとまずこの『事実確認』で俺の方針が定まった。


 このスレイヤという女。


 コイツも一緒に処断してしまおう。


 木の下にいる連中はすべて魔族。


 つまりは人質ごと一人残さず抹殺しても構わないということだ。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ