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190話. スローン大平原


 「決めたわ。ノエルもユエもサイに付いていく!」


 ついに腹が決まったようだ。

宿の部屋に入り、しばらくしてからノエルがそう切り出した。


 「そうか。その決断はありがたいが、今度ばかりは守り切れないかもしれないぞ」


 「もちろんそれも承知の上よ。ねぇ、ユエ」


 「うん。私もお姉ちゃんに賛成。それにサイさんがいなかったら私はあの場で死んでいたもの」


 ここで言う『あの場』とはもちろん『シルバーメタル・アリゲーター』と戦った現場のことだ。


そう言われて見ると確かに……。


思い返せば、あの時点でユエは瀕死の重傷。そしてノエルはポーション切れという有り様さった。下手をしなくても二人ともあそこで死んでいた可能性は高い。


 とにもかくにも、こうして我々は一人も欠けることなく、陰謀の影がチラつくスローン大平原へと向かうことになった。


 「今日はもう休むぞ。明日は大決戦だ。何が起こるかまったく分からないからな」


 「そうね。ゆっくり休みましょう」




 翌日、早々と起床した我々はギルドへと向かう。


 というのも、俺たちは誰一人として目的の『キング・セコイア』の場所を知らないのだ。


 そこで、途中までの道案内の係をギルドが用意してくれるという。これはありがたい申し出だ。なにせ道に迷って遅れましたとか、たどりつけませんでした、というのはあまりにも恰好がつかない。


 あくまでも『途中まで』という条件付きだ。もし案内役のせいで誘拐事件がこじれたとしたら、それはそれで後味が悪い。


 「二人はよく眠れたか?」


 「実は、あまり眠れなかったの……」


 「私もそうね。やっぱり考えちゃうもの」


 「俺もそうだな」


 「でも、横になっていたから疲れはそれなりに取れているわ」


 「今日はどんな日になるんだろうな?」


 ギルドでは一人のおじさんが案内役を買って出てくれた。グスタフという見るからに強面(こわもて)で屈強な男だ。


 「今日はよろしく頼む」


 「いやいや、こちらこそ。これは仕事だからな」


 「まだ時間があるが、念のためだ。馬を飛ばすぞ」


 ギルド裏手の馬小屋からスローン大平原へと向けて狭い道を駆け抜ける。


 ここからスローン大平原まではおおよそ20キロほどだが、その先の『キング・セコイア』まではさらに5キロも距離があるという。しめて30キロ弱の旅だ。


 しかし馬があるのでそれほど時間がかからない。


 もし万が一のことが起これば、このグスタフという男に空間魔法の存在がバレてでも14時までに目的地まで到着せねば。


 急に森が開けて一面の草原が目の前に広がった。おそらくここがスローン大平原なのだろう。


 背丈はかなり低く、芝のような歩きやすそうな地面で助かる。これなら馬での移動もまったく問題ない。


 しばらくすると案内の役割は終わったと見えて、

 「俺が案内できるのはここまでだ。あそこに高い木が見えるだろう。あれがそれだ。健闘を祈るぞ、諸君!」

 ……と言い残し、グスタフの馬は去っていた。



 う~む。

巨木に近づくにつれ、何となく状況が見えてきた。


 まず目的の『キング・セコイア』だが、高さは50メートルほどだ。


確かに巨大だが、超巨大という訳ではない。しかし周囲はだだっ広い大平原。なぜ1本だけポツンと巨木があるのかはよく分からない。かなり特別感のある目印だ。


 そしてその木の脇に人が20人ほど固まっている。全身黒々とした服装から誘拐犯どもか。


 それらの手前に冒険者と思われる集団がいるが、数はやや少なく10人にも満たないくらいだろうか。


 「着いたわね」


 かなり手前で馬を降り、尻を叩いて馬を解放する。

 もしかすると戦場になるかもしれないから、これはわずかながらの慈悲だ。


 馬は頭がよいのでもと来た方向へと向けて駆けていく。


 我々がゆっくりと冒険者の集団に近づいていくと、チラホラと見知った顔が目に入ってきた。


 「サイ君じゃないか! やはり君も呼ばれていたか」


 ブロドリオがそこにいた。静かな声だが、少し驚いたといった表情をしている。


 「誰? サイの知り合いなの?」


 ノエルが小声でささやく。


 「ブロドリオ様だよ。S級冒険者で上級貴族の」


 「えぇーー! 何でそんな人とお知り合いなわけ!?」


 「しー、静かに! それには長い長~い訳があってだな」


 そんなことをしていると、『キング・セコイア』の下にいた誘拐犯の1人が声を発した。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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