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189話. 知らない間に大事件が起こっていた件について。


 「よし、二人とも、出発するぞ!」


 威勢よく掛け声をしてから、いよいよ集落を発つ。


 「ありがとうーー!!」

 「またね~!」


 集落の皆さんが手を振って見送ってくれる。これはありがたい。リトも改めてお礼を言ってくれた。こちらこそ手料理の感謝を手短に述べる。


 さてと、出発だ。

最初は軽く身体強化を使い、徐々に速度を上げていく。


 ふと脇を見ると湖が美しい姿を見せていた。

もうこの雄大な景色とも見納めか。


 そうしているうちに、ついに峠を越えた。

あとは来た道をひたすら下っていくだけだ。


 もはや目撃者は誰もいない。


 「ノエル、ユエ。空間魔法を使うぞ!」


 「いいわよ。それにしてもあの湖とはお別れね。何だかもう寂しいわ」


 「本当に。ユエ、もう少し泊まりたかったなぁ。お料理も美味しかったし」


 「まぁ、それは仕方ない。また来ればいいさ。それよりもわざわざ早馬を寄こすくらいだ。おそらく重大な用件なのだろうが、それを使いの者が知っていなかったのが不気味だ。早いところギルドに行って、何が起きているのか真相を知りたいところだな」


 「そうね。早いところ安心したいわね」


 手早く空間魔法のじゅうたんを作成し、乗り込む。

 続いて隠蔽スキルを発動させる。


 これで宙に浮いている我々が目撃されることはない。


 例の修復したトンネルも通らず、高度を上げて山を無視し、最短ルートでラティアスへと舵を取る。




 かなりスピードを出したお陰で予想よりも早くラティアスの街に戻ってきた。それにしても早かった。


 さて、来て早々だがギルドに行って事情を聞きだすぞ。


 ギルド会館に入るとすぐにケインに取り次いでもらえた。我々はラティアスでは有名人なのだ。


 上階の部屋で待機していると、いそいそとギルド長のケインが入ってきた。やはりトップが直々に出てくるとは何かありそうな予感がする。そして入れ替わりに秘書が部屋を出ていく。う~む、これは。


 「まずは突然呼び出してしまってすまない。ひとまずお詫びしたい」


 開口一番、ケインは頭を下げた。


 「いや、我々は大丈夫だ。頭を上げてくれ。それよりもわざわざ早馬を寄こすくらいだ。何か重要な話があるんだろう?」


 「うむ。それなんだが、今から話すことは他言無用だ。最上級レベルの機密だと思ってもらいたい。まぁ、君たちは既に例の取引を結んでいるがな」


 「確かにそうだな。それで用件は例の取引や池とは関係あるのだろうか?」


 「そうだな。早いところ本題に入るとしよう。結論から言えば、あの池とはまったく関係が無いことだ。しかし事は急を要する。すぐにでも対応する必要がある。しかも、他でもない君にだ、サイ君!」


 「それは俺じゃないとダメなのか?」


 「あぁ、君を指名できている」


 「それはどういう……?」


 「実はな。君がギルド証を取ったサンローゼという街があるだろう。それに関係する話だ」



 「ほう。サンローゼとは、もう何だか懐かしい響きだな。それで?」


 「うむ。実はな、そこのギルドの地区長が誘拐されてしまったんだ」


 「「「誘拐!?」」」


 「そうだ。問題はその先だ。その誘拐犯と思しき連中は要求を突き付けてきた。その要求は不思議なことにお金や遺物ではなく、周辺地域一帯での強い冒険者を集めるという内容だった」


 「変な要求だな」


 口ではそう言ってもおおよその見当はつく。


ほぼ間違いなく、魔族、もとい、宗教組織『ゴメラシオン』の差し金だろう。これまで俺が散々彼らの企みの邪魔をしたのに業を煮やして、この機会に関係ありそうな冒険者を一度に抹殺する。大方、そんなところに違いない。


 「それでSランクはもちろん、Aランクの冒険者も駆り出されそうだというのが現状だ」


 「なるほどな。状況が飲み込めてきた。つまりはそのリストに俺の名前も含まれている、そういうことだな?」


 「その通りだ。だがな、君の実力は認めるが、この街でCランクに上がったばかりだろう。なぜ君の名前が挙がっているのか、俺には皆目見当もつかない」


 「まぁ、俺がサンローゼに拠点を置いて魔物討伐などで功績を上げたからだろう。それはそうと、俺はどうすればいい?」


 「そうだったな。言った通り時間が無い。我々は昨晩になって知らされたばかりだが、君には明日、ここから北方へ20キロ進んだ場所にあるスローン大平原へと向かってもらう」


 「スローン大平原」


 「そうだ。午後2時にそこの中央部にある『キング・セコイア』の巨木まで来いとの指示だ」


 「私たちは?」


 我慢できなくなったのか、ノエルが口を挟む。


 だが、それは俺も気になっていた。

どうやら指名されているのは俺だけのようだが……。


 「その点については問題ない。君たちも同伴して大丈夫だ。向こうからの指示で、『本件の伝達時に組んでいたパーティーメンバー3名までの同伴を認める』、とある」


 「なるほど。なら、大丈夫そうだな」


 「だが、言わずもがな、付いていくのはかなりの危険が伴うぞ。使いにもあくまでもサイ殿に用があると念押ししていたはずだが……」


 「まぁ、俺たちは同じパーティーだからな。情報を共有してから決定するべきだと判断したんだ」


 とはいえ、これは面倒なことになったな。

 いつどこで俺の話を聞いたのか知らないが、自分の正体が割れていないことを祈るしかない。


 おそらく『シルバーメタル・アリゲーター』の噂を聞きつけてのことだと思うが……。


 ということで、ひとまず情報の共有が済んだところで一旦お開きとなった。我々は武器の新調と明日の準備をすることにした。


 「それにしても、大変なことになっちゃったわね、サイ?」


 「本当にそうだよ。今度は誘拐事件だなんて、危険じゃないよね?」


 「正直に告白すると、今回ばかりはかなり危険を伴う気がする。だから、本来ならばスローン大平原に行くべきではないと思う」


 「やっぱりそうなのね」

 「そうなの……」


 「だが、知っているだろう? 数々の異常種の出現を。ユエを瀕死にした例の『シルバーメタル・アリゲーター』だけじゃない。いくつもの異常種が出現しているんだ。おそらく誘拐犯はそいつらを生み出したのと同一だろう」


 「何か思い当たる節があるのね」


 「実はそうだ。敵に何となく見当が付いているからこそ、ノエルとユエには俺についてくるか慎重に決めて欲しい」



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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