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186話. こっそりと水中散策


 唐突にノエルがこう切り出した。

 「サイ、これからどうする?」


 「それなんだが、ちょっと『妙案』を思い付いたばかりだ」


 「サイの言う妙案は何か起こりそうな気がするのよね」


 「もしかしたら、そうかもしれない。まぁ、ひとまず外に出よう。散歩だ」


 「散歩はさっきしたよー?」


 「でも途中で引き返してきただろ?」


 「確かに!」


 さてと、サクサクと早足で歩き、改めて周囲に人影がないことを確認してから、二人にこう切り出した。


 「二人とも、水中散策をしてみないか?」


 「「水中散策!?」」


 「えっ、ちょっと何を言っているのか分からないわ。水の中って、まさかあの湖を?」


 「そう、そのまさかだ。面白そうだろう?」


 「そんなことができるの?」


 「出来る、と言いたいところだが、正直やってみないと分からない。だから実験だ」


 「私もユエも泳ぎは得意だけど……」


 「あの湖は塩湖だから体はプカプカ浮かぶと思うぞ。むしろ潜るのが難しいはずだ」


 「じゃあ、どうやって?」


 「とりあえず湖畔に移動だな。既に『キリング・シャーク』の陸揚げは終わって、今は集落で解体作業をしている頃合いだろう」


 だから人目になりにくいが、念のためだ。隠蔽スキルを発動させる。


 「いつも通りだ。行くぞ!」


 そう言って、空間魔法と隠蔽スキルを発動させる。ひとまず湖畔に移動する。もちろん湖畔といっても集落側とは違う場所だ。




 さて、我々三人は岸辺にいる。湖の中にポツリと浮かぶ平島が良く見える位置。


 まだ隠蔽スキルを解除しておらず、我々の姿は見えていないはずだ。


 このトンレカップ湖はかなり塩分が濃い特殊な湖だから、潜るのが大変なのだ。そのため湖底の調査はこれまでほとんどされてこなかったとみる。


 「実は……、あの湖の底が気になっているんだ」


 「底? あぁ、もしかして遺物のことかしら」


 「ノエルの言う通りだ。あの湖の底から回収された遺物を見ただろう? となると、おそらく遺跡、もしくは関連する何かしらがあるはずだ」


 「確かに、そう考えるのが自然よね。例の『キリング・シャーク』は倒したばかりだから安全だし、その点は問題ないわね。でも、どうやって潜るの?」


 「俺の空間魔法である空間をそっくりそのまま切り出せることを知っているだろう。例えば、『燃える沼』で太古の魔物の頭を回収した時に使った魔法だ」


 「あれね!」


 「それを応用できればいいのだが。つまり、俺たちごと空間魔法で囲ってしまい、それを移動させれば理論上は水中を移動できるはずだ」


 「確かに……。筋は通っているわね」


 「やってみようよ、サイさん!」



 「おう。それじゃあ、早速やってみるぞ」


 我々をすっぽり取り囲むような立方体をイメージする。


 「よし。いい感じだ。これで第一段階はクリアされたな。問題は次だ」


 その通り。問題はこれが我々を閉じ込めたまま移動するかどうか、そしてそれが水中でも可能なのかという点だ。


 まずは水平移動。


 できた!


 「いよいよ水中に入るぞ。念のため、息を溜めておいてくれ」


 「分かったわ」

 「分かった~」


 少しずつ、ゆっくりと立体を水中に沈めていく。


 水は立体の外にある。

どうやら成功のようだ。


 「どうやら空気は問題ないみたいだな。もっと深度を下げるぞ」


 ぐんぐんと下へと潜っていく。


 「暗いな……」


 潜れば潜るほど辺りは暗くなる。

当たり前といえばそうだが、暗くて様子が分からない。


 かと言って、酸素が貴重なこの狭い空間で『トーチ・ファイヤー』を使うのはダメだ。


 「ノエル、ユエ。灯ろう石を準備してくれ」


 こういう時のための『灯ろう石』。

 これ以上ない絶好の使いどころだ。


 「明るくなったわ!」


 暗くなってから『灯ろう石』を使ったため、おそらく地上からは水中の灯かりは見えていないとは思うが……。


 「う~ん。思ったよりも不気味で怖いな。水深が思ったよりも深いぞ」


 「本当にそう。私、何だか怖いわ」


 「私も……」


 「そうだな。安全のこともあるし、ひとまず潜るのはこの辺までにしておいて平島の方へ移動してみるか」


 今度は垂直方向ではなく水平方向へと移動を開始する。


 「ねぇ。あれって!?」


 ノエルが何か見つけたようだ。

もしかして遺物だろうか?



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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