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183話. 湖で魔物退治


 翌朝。


 昨晩の残り物を朝食として頂く。残り物といっても非常に美味な料理の数々だからむしろ嬉しい。こんな料理はどこでも食べられる訳ではない。


食器洗いなどをした後はとくに手伝う用事も無くなったので、姉妹と俺は湖畔までやってきた。


 「あれか……」


 そう、とりとめも無くここに来たわけではない。

電撃魔法の戦略を練るにあたって、一つだけ確認したいことがあったのだ。


それが今、我々が目にしている湖に浮かぶ巨大なブイだ。昨日リトに案内してもらった場所から少し離れているので気付かなかったのは不覚だった。


実際のところコイツは釣り具の浮きのようにプカプカ浮いているだけなのだが、重要なのはそこではない。そのブイの上に細長く金属製の棒がアンテナのように伸びている。


リトの話によると、これは雷が落ちることを期待しての願掛けとのことだ。この地域では雨は極端に少ないそうで、落雷もしかり。確かにそうでなければ塩作りは難しい。


だが、このブイは実際にきちんと機能するように作られているらしい。


水中の部分は金属製のひらひらが複数方向に張り巡らされていて、効率的に放電するようになっている。


ただしこれまで一度たりとも雷が落ちたことがなく、これが効果を発揮したことはないという。


ふむ。


こいつは使えそうだ。


 幸いにも今日の天候は曇りで時々雨。久々の雨だ。


 仮にちょっとした雷が落ちたところで、不自然ではないだろう。


 「そうだな。例えばたまたま偶然にもあのブイに運よく雷が落ちたとしたらどうだろう?」


 「出来過ぎた話だけれど、一応、あり得るかしら」


 「うんうん。きっとそうだよ」


 「じゃ、そういうことにしよう。集落の人たちもその瞬間を待ち望んでいる訳だからな」


 ノエルとユエの賛同も得られたところで、俺たちは湖畔を離れ、物陰に隠れた。


 これから雷をあのブイに落とすのだ。

その作業を他人に見られる訳にはいかない。


 「この辺りでいいか」


 俺はいそいそと空間魔法のじゅうたんを発動させ、三人が乗ると同時に隠蔽スキルを利用して姿を消した。


 手を繋いでいれば効果は三人分きちんと発動する。ただし両手が塞がるのを避けるため、今回は左手にノエルとユエの手のひらを合わせている。


 ひとまずこれで見られる心配はない。


 隠蔽スキルを使うと足元の空間魔法も見えなくなるため、十分に気を付けねば。



 湖の真上まで来た我々は慎重に様子を探る。


 言わずもがな、もし誰かしら人がいれば危ないからだ。とはいえ、村人が湖畔にいる可能性は限りなく低い。


 このような天気の悪い日には雷が落ちる可能性を考慮して、湖に近づかないようにしているからだ。こういう細かい情報も事前に収集済みなので心強い。ただ、念には念を入れなければ……。


 「サイさん、あれを見て! えっとね、平島と集落の間くらいの場所」

 ユエの姿は隠蔽の効果で見えないが、とりあえず指示する位置を確認すると10メートルはあろうかという黒い影がゆっくりと移動している。


 ビンゴ!

あれに違いない。


 「どうやら、あれが今回のターゲットのようだな。状況から言えば『キリング・シャーク』で間違いないと思う」


 「じゃ、さっそく電撃魔法を使う訳ね」


 「そうだな。だが、その前にもう少し状況確認が必要だ。ノエルは岸側の様子を確認してくれ。誰か人がいないか注意だ。ユエは岸から少し離れた集落側の様子を見ていてくれないか」


 「大丈夫みたい」


 「こっちも!」


 どうやら安全の確認が取れたようだ。


 こちらはその間、この魔物を目で追っていたが、かなり高度を稼いでいたせいか、まだ我々は気づかれていないようだ。動きは緩慢でこれなら近くに雷を落とすことはさほど難しくない。


 問題はブイの位置だ。


 雷撃を水中に効率よく逃がすよう設計されているから、やはりブイに落とすのがいいだろう。それに何もない水面に雷撃が落ちるのはやや不自然だ。




 『キリング・シャーク』がブイに近づいた。今だ。


 「よし、電撃魔法を使うぞ。威力が大きいから俺の体にしっかりしがみついてくれ」


 二人ともがっちりホールドしてくれたのを見計らい、右手を前に突き出し、かなり強めの雷撃を生み出すイメージをする。


 【ドドーーーン!!!! パァーーン!!】


 巨大な光が俺の手から放たれた。


 雷撃は見事にブイを直撃した。

 あまりにもまぶしくて詳しい様子は分からない。


 だが、ブイが電撃の威力で砕ける様子は見えた。後半の音はブイが破損した際に生じたものだ。まるで竹が裂けるかのような壊れ方だった。


 問題は『キリング・シャーク』の方だが……。


 「あ、あれを見て!」


 まだ隠蔽スキルを使っていてお互いの姿は見えていないのだが、ノエルが俺の左手を動かしてくれたので大体の位置が分かった。


 プカプカと巨大な魚が浮かんでいる。


 よしっ!


 どうやら一撃で倒せたようだ。


 だが、これでめでたしめでたしという訳ではない。これから集落は騒然とするはずだ。まだ午前中だから今日は大変な日になるだろう。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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